【4-1】皮算用 上

【第4章 登場人物】

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【地図】 航跡 ヴァナヘイム国編

https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644

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 ヴァナヘイム国首都に乗り込むのは、ブレゴン派かビレー派か――。


 ブリクリウ大将以下調査団が引き揚げ、懲罰人事の混乱が収束に向かいつつあった帝国東征軍は、再び喧騒に包まれていた。


 騒動の原因は「戦後の論功行賞」にあった。それは、狐面の大将が撤収の際、自らの派閥に属する両将を昇進させたことに端を発する。


【3-7】懲罰人事 下

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 帝国暦383年5月下旬、東征軍はトリルハイム城の手前20キロ――ヴァ国の王都ノーアトゥーンまで70キロ――の距離に迫っていた。


 ひと月前、ヴィムル河において、かつてない規模の重砲一斉投入により、彼らは勝利をもぎ取った。


 その後、副司令官と参謀部を入れ替えるや、200キロを北上したのである。イエリンをはじめ降伏する城塞諸都市を次々と配下に組み入れて。


 しかし、そこまで相手を追い詰めておきながら、帝国軍は一挙に攻勢に出ることはなかった。左右両翼において小規模戦闘は断続的に行われたものの、現在においては全戦線において、矛を収めている。


 にわかな停戦は、老国の臨終に際して、帝国騎士道精神による、惜別せきべつの情が生じたから――では決してない。


 むしろその真逆の事情といえる。


 敵国首都という巨大かつ瀕死の獲物を指呼しこの間に臨み、未踏の臓腑への渇望は、帝国貴族たちの獣心をき出しにさせたのである。


 帝国貴族将軍が作戦に巻き込まれるというはあったものの、先の戦闘によりヴァナヘイム軍は、その総司令官と中央を固めていた1万6,000もの精鋭を失った。


 圧倒的な火力によって粉砕された結果、ヴァ軍を鳥で例えるのであれば、胴体の一部がぽっかりと消滅してしまった状態といえる。


 両翼の残兵をもって、鳥の形を再構成しようとしても、それは薄い線にしかならず、帝国の大軍をもはや受けとめることはできないだろう。



 獣心欲望の筆頭が、ブレゴン新中将、イース少将をはじめとする北部貴族連合と、ビレー新中将、ミレド少将をはじめとする南部貴族連合であった。


 いわゆる四将軍であり、今回の東征では主要な戦闘にすべて従事している。そのため、自軍や麾下の中小貴族の損害も大きく、略奪による補てんの可否は切実な問題であった。

 

 何より、黒狐の息がかかり、昇進したとなっては、その発言力は東征軍内において重みを一層増している。


「やはり、ノーアトゥーンへの一番乗りはブレゴン将軍の部隊が担うべきだと思うのだが」


「それはおかしい。この度の戦いでは、ビレー将軍は、緒戦から戦果を挙げてこられてきた」


 ブレゴン派閥の貴族ユアン=イース少将が、太鼓腹を揺らして提案すると、ビレー派閥の貴族ゲイル=ミレド少将が、前歯をむき出しにしてすぐさま反対の意を唱えた。


 過日、オウェル参謀長を更迭に追い込んだ際は、利害一致のため協力し合った四将軍であったが、ヴァナヘイム国王都を前に真二つに分かれてしまっている。






【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


ヴァナヘイム国の行く末が心配な方、

そうはいっても帝国軍の事情も分からなくはない方、

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【予 告】

次回、「皮算用 下」お楽しみに。


帝国暦383年5月下旬、敵国首都という未踏の臓腑への渇望に、獣心を剥き出しにさせた帝国貴族たちの話し合いが続いている。


あろうことか、ブリクリウ大将が送り込んだ子飼いの将校たちまで、ブレゴン・ビレー両派に別れて仲間割れを助長している始末である――。


足踏みする帝国軍の様子はここまで。

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