【3-7】懲罰人事 下 《第3章 終》
【第3章 登場人物】
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帝国暦383年5月15日、斥候兵の処刑を皮切りに、懲罰人事は次々と断行されていった。
そこでは、査問会での負けを取り戻すかのように、黒狐もといターン=ブリクリウが躍動した。
最終的な攻撃命令を発した副将兼参謀長・エイモン=クルンドフ中将と、彼直属の補佐官たちは、全員が降格のうえ左翼に転属となった。
東征軍副将の後任には、キンピカ少将もといリア=ルーカーが、中将に昇格のうえ着任した。
参謀長の後任には、
先任参謀セラ=レイスとその部下たちは、降格こそ免れたものの、全員が参謀職を
代わりに包帯少佐もといアラン=ニームドが、中佐に昇進のうえ先任参謀へ据えられた。
その下に、眼鏡大尉もといフォウォレ=バロル以下、調査団のメンバー複数も、それぞれ参謀として配置されることになった。
ズフタフ=アトロン老将も、自らの降格と総司令官職の解任を願い出たが、東征軍のオーナーであるアルイル=オーラム上級大将によって却下された。
「……戦闘そのものは大勝利を得たわけであり、これ以上、戦勝に水を差すがごとき責任論は、余が許さん」
ブリクリウ調査団長が読み上げる、オーラム上級大将閣下からのお言葉――東征軍新体制への激励――の末尾は、そのように結ばれていた。
アトロン大将以下、将校たちは軍帽を脇にかかえて頭を垂れ、粛然とそれに聴き入ったのであった。
脂身上級大将のお言葉からは「マグノマン准将は、参謀部の命令に反して独断で動いたことによる自業自得だ」との苛立ちが言外に
ブリクリウとしては、今回の騒動を機に、アトロン派閥を一掃しようと画策していた。
そのため、いつもの無表情を取り繕いながらも、このような主人の訓戒を読み上げていることは、意に染まぬこと甚だしかったことだろう。
狐顔の団長は、そうした事情への腹いせのように、査問官として引き連れてきた部下たちを副将、参謀長、さらに参謀部の後任にそれぞれ据えると、志半ばで東都ダンダアクへ引き揚げていった。
彼の
後日、狐の子飼いの者たちの所領における兵馬も、帝国東岸領各地から出立し、この東征軍へ合流することになるだろう。
さらに、東征軍のなかで、自らの派閥に与する四将軍のうち、リーアム=ブレゴン、エイグン=ビレー両先任少将を中将に昇格させる手はずも、ブリクリウはすみやかに整えたのだった。
「一掃」とは言えないまでも、東征軍内のアトロン総司令の影響力は大いに削がれ、その分、ブリクリウ大将の影響力は増大した。
ここに、帝国軍の懲罰人事は落着したのである。
第3章 完
※第4章に続きます。
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【予 告】
次章からは、ヴァナヘイム国にフェイズが移っていきます。
アルベルト=ミーミルと彼を取り巻く人物の活躍をお楽しみに。
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