ガラスのお姫様

とん、とん、ととん

コツ、コツ、カラン

夜の街を舞っていく

素敵なワルツを奏でてく

ペイヴの地面が鍵盤で

上で踊っているのが私

ああとっても良い心地

体の中からエネルギーが溢れてくるみたい

店の外灯に照らされて

私の体はキラキラ輝く

生きてるって素晴らしい!


これが昼間は上手くいかない

みんな綺麗っていうけれど

ほんとは私を嫌ってる

何をするにもガラスがかちかち、きんきん、ぐわんぐわん

コンクリートじゃ素敵な音色も出てこない

手を握れば氷みたいに冷たいし

私はただうつむいて、

なるべく光を跳ね返さないようにするしかない

ときどき私を透かして話すから

悲しくなって泣いてしまう

ガラスの心がごろごろ揺れて

いがいがとっても気持ち悪い

いちばん厄介なのは心が丸見えだってこと

ガラスの心の真ん中には七色の宝石が詰まってて

怒った時は燃えるような赤

憂鬱な時は夜空の藍

楽しい時は春風のような橙

澄んだ気持ちは命の緑

いたずらする時は邪悪な紫

冷静な私は大洋の青

幸せな時は太陽の黄色

霧みたいに胸の中にぶわって広がるから

私の心なんて全部見透かされるんだ

ただ思ったことが思ったままに伝わるだけで

どうしてこんなに生きづらいんだろう


あ、だめ。

こんなこと考えていたらガラスが黒くなっていっちゃう

だけど夜は私の時間

誰にも見えない誰も見てない

好きなだけ好きなこと思っていられる

ああでも

誰か

誰かひとりでいいから

眼てくれないかな私のことを

受け入れてくれないかなこんな私を

だってこんなに生き生きと煌めいているんだから

それから

君のひとみは虹の空みたいだって言って

君の澄んだ心が好きだって囁いて

君の小さな破片さえもが愛おしいって抱きしめて

硝子がらすの私を溶かしておくれよ

とん、とん、ととん

コツ、コツ、カラン


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幻の万華鏡 まぼろしや @kaleidoscopicfantasy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ