歴史は繰り返す

@HasumiChouji

歴史は繰り返す

「これが我々が開発したAIのプロトタイプです。先程、説明した理論に基いて、今後の科学技術研究のトレンドを予測する機能を持っています。これを使えば、文部科学省が進めている『科学技術研究の選択と集中』をより一層効率的に行う事が可能になります」

 俺は偉い役人達にそう説明した。

「はぁ、では、今、そのAIを我々も使えるのですか?」

 役人の1人がそう言った。

「ええ、AIが動いているのは、ウチの大学のコンピュータですが、現在、インターネット経由で繋っていますので、このノートPCから操作が可能です」

「じゃあ、ちょっと貸して下さい。あ〜、AIさん、今後のAI研究ですが、どんなものに投資すれば効率的ですか?」

『残念ながら、90%以上の確率で2年以内、95%以上の確率で3年半以内に、現在のAIブームは終息すると予想されます。そして、現在のAIブームが終息して以降と云う条件の元では、その後、10年内に、AI関連での技術的な革新が起きる可能性は5%未満です。総合的に判断して、AI関連の研究への投資はオススメ出来ません』

 プレゼンは、あっさり終り、会議室には俺と俺の上司である教授だけが取り残された。

「おい、普通は、動作確認の時に、さっきあの役人がやった質問をやるんじゃねぇのか?」

 前回と前々回の「AIブーム」の後の各10年近い「AI冬の時代」を経験した定年間近の教授は不機嫌そうに、そう言った。

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