プロローグその② 残像のような物語
この世界では、二つの世界が並行し同時刻に一日が終わる。どちらかが早く又は遅くなることは無い。必ず同時刻に一日が終わる。そして、始まる。
今生きている私たち人類は、この世界のどちらかで生存している。しかし、どちらでも属していない者には【人】という尊厳さえも与えられていない。与えられるのは【紛い】扱いとして統治する政府に駆除されるだけの存在。それらが確認できたのは幾多の研究者が文字通り生死を懸けて調べた結果である。この結果に対して二つの世界の住民は、研究者を称え賞賛した。けれども、すべての結果を鵜吞みするほど馬鹿ではなかった。「特に『悪』に関しては双方に有る。」という報告結果には両方の世界から批判があった。それは、お互いの世界を嫌っているからであり、自分たちの世界を尊重している事にも繋がる。
この世界『通称:表裏世界』の秩序維持のためだけに創設された唯一共通政府機関がある。主に表裏世界単独の警察では対処できない事件や事故ならびに【属性の道】の管理をしている。二つの顔を持つ世界にはすべからく属性が付与される。世界から世界へ渡る際には必ずこの【属性の道】を通過しなければならない。属性の転換をしなければその世界に馴染むことさえできない。ただ、そんな道がなんの障害もなく通過できれば住みやすい世界になっただろう。今だから管理されているが、この世界形態になって間もない頃は被害報告されていないだけで推定でも都会住民全員を丸々犠牲した可能性があった。それだけ危険な所でもある。比較的管理されている所は安全ではあるが、一般市民が興味本位で行っていい場所ではない。仮にそこに行けたとしてもあちらの世界へ確実に行く保障はない。なぜなら、そこには奴らがいるからだ。【属性】を捨てた【紛い】が・・・・。先ほど言った共通政府機関が創設されていなければ、今いる表裏世界の住民は全員殺されていたかもしれない危険があった。
時が満ちる世界-word of world- 久遠文嶺 @akaki-murasaki
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