才能が無いから技術を極めた魔術師は、魔法学園で技術を生徒に教える

まーおん

女王陛下の推薦


  「ふざけないでいただきたいっ!!」




  ここは魔法により、数々の恩智を受けた国、ハンバルト魔法王国である。常識では考えられない超常現象を引き起こす魔法を第一に考え、発展していった。その魔法を教え、学び、さらに発展させ、「賢者」になるために、魔法学園が作られた。




  そしてここ、レニオゲス魔法学園は、ハンバルト魔法王国に、存在する数多くの、魔法学園の最高峰として名高い学園である。軍人や冒険者として有名な人の殆どは、この学園の卒業者である。




  そのレニオゲス魔法学園、学園長室に1つの怒声が響き渡った。怒声の主は顔を真っ赤にして、豪華な革椅子に座っている恰幅のいい男、この学園の学園長カールズ=クルームに詰め寄っていた。




「この、レニオゲス魔法学園は数多くの名高い人物を出してきた誇り高い学園です!!そして、学園の教師になるものは、その誇りを、レニオゲスの名を背よって生徒を教え導くのですっ。」




  怒声の男はここの講師を勤めて名をメルクと言う、片目を黒髪で隠した、如何にも神経質そうな男である。メルクはまるで今、熱弁している、自分こそが至高だと言う様な雰囲気を放ちながら、カールズに詰め寄っていた。




「う、うむ。それは、わかっておる……、しかしのぉ~。」




「わかっているのなら何故!!このような、どこの、馬の骨かもわからない男を、教師にしたのですかっ!調べて見たところ、この男は過去に魔法学園に通ってた経歴すらないのですよ!?それどころか、個人情報の殆どが、削除又は、詐称されていました!こんな怪しさ丸出しの男を、雇うなんて有り得ませんッ!!」




 メルクは、一枚の履歴書の後ろに、何十枚もの紙が紐で括られた束を叩きながら、カールズに説明している。




 カールズは、人の良さそうな顔を困らせて、メルクを宥めるように声を掛けた。




「しかしながらのぉ……、これは女王陛下の推薦。無下にする事は、つまり女王陛下の顔に泥を塗る事になる。それだけは女王陛下に忠誠を誓う身として決っして、してはいけないことなのじゃ。」




「しかし……っ」




「それに……あれじゃ。女王陛下の推薦なら平気じゃろうて。我々が女王陛下に忠誠を誓っておるのは女王陛下が忠誠に値する人格者だからじゃろ?それを疑うのは些かどうかと思うぞ?」




「…………わかりました。とりあえず今は、その男を認めましょう。しかし、もしその男がこの学園に相応しく無いと感じたのなら、私は男の解雇を要求します。」




「うむうむ。それなら問題ないのう。」




 メルクが落ち着いたのを見て、話を変えようと、カールズが別の話を振り始めた。




「それよりメルク君、今回の特有魔質能力適正検査はどうじゃった?珍しい適正や強力な能力の子はおったのか?」




 それを聞いたメルクは苦虫を噛み潰したように表情を歪めながら生徒達の適正検査紙を学長机に置いた。




「これが今年の生徒の適正検査紙です。……正直に言えば異常です」




「ふぅ・・・。またかね?」




「はい。最近生徒の能力の高さには目を見張るものがあります。個人の持つ能力にしては異常な高さです。……もし、間違った道に進んだ時の被害は莫大なものになると思います」




「やはり、その事も視野に入れて会議を何時かやる必要があるみたいじゃのぉ」




 カールズは難しい顔をしながらこれからの事を考えていた。






 ~~~~~~~2時間後~~~~~~~




「……遅い。遅すぎます!!1時間以上の遅刻などレニオゲス魔法学園の講師を勤めるのに相応しい人物とは思いません!」




「人間として1時間以上の遅刻はどうかと思うかのぉー」




 カールズは遠い目をしながら、メルクは顔をしかめながら、腕を組み貧乏ゆすりをしながらイラついて学園長室で新しく来る講師を待っていた。




 バァン!!!




「遅れて申し訳ございませんっ」




 突然一人の女がメルクとカールズに向かって頭を下げながら入ってきた。頭を下げで一向に頭をあげない女を見てカールズとメルクは驚いて硬直するしかない。それもそのはず、その女は初めて見る顔でこの学園の講師や教授じゃないのは明らか、それに今日来ると聞いていた講師は男なので違う。




 カールズとメルクがどういう対応をすれば良いか思い巡らしていると、女は少し顔を上げてカールズとメルクが何も言わないのを見て頭に?を出しているように首を傾げた。




「えーと……?君は一体誰なんじゃ?」




 それを聞いた女はハッと思い出したように顔を上げた。




「初めまして!今日から講師になるクライストス=レイザーのお目付け役、ネルトラ=シャルルと言います。本日は遅れて誠に申し訳ござい―」




「……おい待て、今ネルトラ=シャルルと言ったか?」




「ふぉっふぉっふぉっ……。メルク君らしくないのぉ。……聞き間違えておるぞ、シャルル殿がこんな所に来るはずが無かろう。ネルトラ=シャルルと言えば女性でありながら史上初、女王近衛隊副団長になった帝国トップクラスの魔法騎士だぞ。そのような御方がここにお目付け役としてくるはずなかろう」




 カールズは自分の髭をいじりながら、目を泳がせ乾いた笑みで笑いながら明後日の方向を見ている。




「あ……いや、確かに自分が女王近衛隊副団長ネルトラ=シャルルですが……?」




 シャルルの言葉を聞いたカールズは突然バッと動いてシャルルの前まで移動して深々と頭を下げながら懇願し始めた。




「どうか学園の講師になって頂けないだろうか?」




「え……?しかし私はお目付け役として来ただけで……」




「そこをどうかたのみます!!給料も上がりますので、どうか考えて頂けないだろうか?」




「…………でも、………しかし」




「……え?何もしかして俺って必要ない感じ??」




 ドアの方から突然声が聞こえ見てみると、一人の男が立っていた。その男は金髪を目元を隠すような感じでで髪を切り、育ちの良さそうに見えるが、壁に側頭部をつけながら寄りかかり腕の組んでる姿は育ちの良さそうな雰囲気を台無しにしていて、どこか胡散臭いように感じ取れる男だった。


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