第9話 呑んだくれ

「青カビ病なんて貧乏病にかかる連中が金なんて持ってるわけないだろ。

青カビ病なんてかかる連中はせいぜい貧乏人か、辰人(エルフ)の民ぐらいだ」


「じゃあ、どうしてスライムの製造方法をささっと探んなかったんですか?」


「いやー…そのー…強引かなって思って…」


「出し惜しみしてどうするんですか?」


「だ、大丈夫だろ?どうせあのオンボロ宿屋にいるんじゃないの?」


「それなんですが、子人(フェアリー)に聞いたら、どうやら宿屋にはもういないみたいですよ」


「嘘だー」


「ホントです、探しますか?」


「一応、場所だけな?手出しはするなよ、また腹刺されるから」


「わかりました」




移動は暗い間に行う。

黒髪の少女とともに担架で丑人(オーガ)の少女をせせっと運んでいく。出来るだけ人に見つからないように慎重に運んでいくと、奇妙なバーに着いた。


木製の看板には我らの酒場と書かれている。


俺はすみませんと言ってドアをノックした。


すると、勢いよく飛び出してきたのは申人(ヒューマン)の呑んだくれだった。


酒臭っ!


俺はその鼻を指でねじられるような臭いに悪寒がした。


「んだよ!てめえら!なんかようか?ああん?」


男は顔を赤くし、片手には焼酎の瓶を持っている。きっと今のいままで酒を飲んでいたのだろう。


「ええと、あのう…」


「とにかく上がれや!俺の店だ!後ろの奴らもな!」


と言うと、千鳥歩きで奥に行く。


俺はとてつもなく不安になった。果たしてここでいいのだろうか?店主が不安になっていたのもうなずける。


俺が悩んでいると、後ろから押される。


後ろを向くと、行けよ行けよと言わんばかりのようなむすっとした表情した少女がいた。


「お前、正気か?」


俺が青ざめた表情で尋ねると、


「他に場所があるの?」


とごもっともなことを言われ、押し黙ってしまう。


「おおい!てめええら!何してるんだあ?」


という声を聞いて俺は振り返り、もう一回少女の方を見る。


顎で、行けという指示らしい。


ああもうどうにでもなれ!という思いで俺はホコリだらけの廊下を通って中に入れば、お客さんが誰もいない。


天井を見れば蜘蛛が巣を作っている。


「ほら!ここにすわあれ!」


申人(ヒューマン)の呑んだくれはカウンターの席を叩いている。


その男の後ろの棚を見ると、本来であれば色とりどりの酒、例えばウイスキーやら焼酎やら多種多様なお酒が棚にずらりと並んでいるはずだろうに、スカスカの棚、しかも瓶にはキャップがされていない。


「はい…」


俺は渋々了承して、丑人(オーガ)の少女を担架ごと机の上に載せて俺は席に座ると、少女は立ったままである。


あの潔癖性の少女のことだ。カウンターの下にある蜘蛛の巣を見て幻滅したのだろう。


「なんだあ?おまえ!座らねえのか?」


「うん、座らない」


「すわあれ!これはめいれえいだ!」


少女の眉間にシワがよるのを見て、


「彼女はきれい好きなんですよ!勘弁してあげてください!」というが、


「なんだあ?お前俺の店が汚ええとでもいうのか?」


男は俺の顔に顔を近づけながら言い、ゲップする。


「いや、別にそういうわけじゃ…」


「いいか!俺がルールだ!ここは俺の場所だ!俺が絶対なんだ!だっははは!」


この男はまるで大魔王のようなことを言い始めた。


振り返って少女を見ると、ダガーに手を掛けていた。


「待て待てお前落ち着け!」


「なに」


「なにじゃねえ、馬鹿野郎!お前殺そうとする気満々だろうが」


俺は少女に近づきながら言って出来るだけ声は呑んだくれに気づかれないように小さな声で言った。


「だって面倒くさい」


「いや、やめろおまえ!小石を蹴る感覚で殺そうとするな!俺がなんとかするから!な!」


俺がそう言うと黒髪の少女は束から手を離して、俺は振り返って呑んだくれに話しかけようとしら、ぐーかーと眠っていた。


俺は大きなため息をついて近くの椅子に座り頭を抱えてこれからの生活を心の底から心配した

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エルフの導き手 縁の下 ワタル @wataru56

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