第39話

「転校生って、男なの?」

「.......ん〜?」


 唐突に投げかけられた言葉に愛奈は1度キョトンとしてから熟考する。.......お願いだからしないで。

正面に目を向けて少し考えた後に、何も言わずに俺の横画を眺める、という動作を3回ほど繰り返した後に、愛奈は満面の笑みを浮かべた。


「ねーねー?どうして気になるのかなぁ?」

「言う必要が無いよな。黙秘する。」

「.......ふぅん?私が取られちゃうとか考えなかったんだぁ。.......あいな、悲しい.....な」


 足を止めて、袖の裾を親指と人差し指で摘むようにしながら、俯きこちらを上目遣いで見てくる愛奈。普段こんなことしないためわざとだと言うことは理解出来ているのに、体は勝手に反応する。







 愛奈が自分のことを愛奈と呼ぶのは、もう随分昔の話で今は封印されているはずなのだ。それをわざわざ出したということはそれなりに悲しかったという事に他ならない。






.......訳では無いのだ。

意外と芸達者な愛奈は使い分けが上手い。俺なんかは簡単に騙される。今もこうして、頭では理解しているのに手は愛奈の頭へと吸い寄せられ優しくなでなでをしているのだ。




「 ♪ 」

「……………………………………………」

「お兄ちゃん、心配しなくても転校生のことは平気だよ。私は知らない人なんかよりもお兄ちゃんが好きだからね」



.......明言されてないのが怖いのだ。

比較対象として俺の方が好きなのは確定しているが、それ以上の感情があるのかないのか分からない。


 そんなことを考えてると衝撃の発言が愛奈から下された。







「.......まぁそもそも、転校生は女の子だけどね」


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『少しだけ』仲が良すぎる兄妹がただひたすら【いちゃいちゃ】するだけ Hollow @Hollow2208

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