第38話

 屋上含めて6階分の階段を降りきって下駄箱に到着する頃には、お眠な愛奈も目が覚めて俺の右手を確保しながら隣を歩いていた。



授業が終わってから既に1時間と30分が経過しているので俺たちとすれ違う人は無く、吹奏楽の演奏音や校庭の運動部の掛け声が聞こえるだけだ。

 ゴム材の上履きは普通なら鳴る2人分の足音を綺麗に消し、コンクリートの床と擦れる小さな音だけが響く。





「そういえばさ、今日私たちのクラスに転校生が来たんだよ?寝てたから知らないだろうけど」


 愛奈が唐突にそんな話題を振る。

 今日は午前中は寝てたし午後はサボってたから会う事はなかったようだ。言われてみれば、今日の朝すれ違った出待ち団体(?)から転校生っていうワードは聞こえていたような気がする。


ただ、転校生といっても俺みたいな人間には無縁のイベントだ。

 直接つっかかったりしてこなければ俺は別にどうでもいいかなぁと思っているので、特に反応することなくスルーすることにした。



「あー.......気になったんだけどさ」

「うん?どうしたの?」


 身長差によって愛奈が見上げるように首を傾げてくる。俺はそれを視界の端に捉えながら、愛奈の方を見ないで質問した。



「転校生って.......男?」

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