第10話 釣り好きがNTRをよく知らないまま書くとこうなる
※注意※
この作品は、題名にあります通りただの釣り好きが18禁物を書いてみようと突然思い立って、ではNTR物だ、とクレイジーな創作ゴッドが戯れにアイディアをプレゼントした結果になります。多分。いや、ゴッドならもっと面白い話かくわい! と思われた方。深夜テンションでイカレている作者のたわごとですので、ご容赦ください。
話は文字にしたらこれだけ編と解説編の二部作です。ぜひとも両方読んでいただければ幸いです。異論は認めます。批判はやめましょう。作者が凹みます。楽しんでいただけたら幸いです。
【文字にしたらこれだけ編】
彼女と会えなくなって一週間が経過した。電話やメール、SNSで呼びかけてみるも返事がない。一体どうしたというのだろう。警察に相談すべきか。そう考えていたところで、スマートフォンが通知音を鳴らした。画面を見ると、彼女からのメッセージだ。急いで画面を開くと、そこには彼女の感情のこもった言葉ではなく、無機質なURLが添付されているのみだった。彼女が一言もなくこんなURLだけを送ってくるわけがない。一瞬、アカウントの乗っ取りを疑った。そのせいで連絡が取れなかったのだろうか。このURLにアクセスすると、私のアカウントも乗っ取られるのではないか。
そんな私の疑惑を察したわけでもあるまいに、新たなメッセージと写真が送られてきた。そこには白い建物とクルーザーをバックにして、満面の笑みの彼女が写っていた。彼女だけじゃない。その周囲には何人もの屈強で、日に焼けた男たちが笑顔で写っている。ごつく太い指が、馴れ馴れしく彼女の肩に置かれていた。
「ま、まさか・・・」
嫌な予感が胸中で渦巻く。震える指で、私はURLをタップした。アクセス先は動画だった。スマートフォンから最初に聞こえたのは、男の野太い声だった。
『彼氏君、見てる~?』
男が画面に向かって手を振っている。
『今ぁ、彼女さんは俺たちと一緒に遊びに来てま~す。ダメだよぉ? こんな可愛い子を仕事で放置なんて。可哀そうだから、俺たちが君の代わりにリフレッシュに沖縄の海まで連れてきてあげたよ』
沖縄、だと。ガリ、と骨伝導が奥歯をかみしめた音を拾う。嫌な予感が確信へと変わっていく。
『せっかく沖縄まで来たんでぇ、彼女さんにも楽しんでもらいま~す』
男たちに押し出されて、彼女が画面の前に立った。
『ゴメン、鯵郎君。私』
「鯖江!」
聞こえるはずがないのに、思わず彼女の名を呼んだ。
『謝ることないってぇ~。鯖江ちゃんは、自分の気持ちに正直になっただけだよ~。悪いのは君との約束をほったらかしにした彼氏君のせいなんだから~。そんな薄情な彼氏君のことは忘れて、レッツエンジョ~イ!』
画面が切り替わった。編集の仕方が上手い。こいつら、撮り慣れてやがる。画面は一面の大海原を映し出している。さっきのクルーザーで出港したのだろう。そして鯖江たちは空と海しかない場所で、己を解放していた。
『さっさと握れや! 早くしろ!』
『こんな太くて大きいもの、初めてで』
『泣き言言ってんじゃねえぞ! 振れ、しっかり振れ! オラァ! もっと腰落とせよ! 気合い入れろ!』
『もう、無理、無理ですぅ、壊れる、壊れちゃうぅううう』
『何へばってやがる! お楽しみはこれからじゃねえかよ!』
男たちは彼女がフラフラなのも構わず、次々に怒声を浴びせる。
『おら、どうなんだよ! 彼氏君とイった時と、今と! どっちがイイんだよ! 答えろよ!』
『そ、そんなの決められ』
『ああ~? その割にはここはこんなにプルプル喜んでんじゃねえかよぉ。正直に答えろや。今までのと比べて、どっちが凄いんだよ』
『しゅごいのぉ! これが、強いのがイイのォ! 比べ物にならない。今までの快感が全部消えちゃうのォ、あたし、馬鹿になっちゃうぅううう!』
『ひゃっはァ! 本性現れちゃったなぁ鯖江ちゃんよぉ! だそうだぜぇ~彼氏君よ~、これまでの君とイったのと比べ物にならないんだとよぉ!』
私は敗北感と屈辱にまみれていた。だが、画面から目を離すことができない。それを上回る興奮が、私の体を支配していた。私の物より大きく、太く長い物を一所懸命必死になって操る彼女の姿が、ほとばしる汗が、これまで見たことのない表情を見せる彼女が、とても美しかった。私では、こんな彼女を引き出すことはできなかった。
フィニッシュが近づいている。彼女も、相手も、体力の限界は近い。
『もう少しだ! ラストスパート!』
『は、はひぃいい!』
必死の形相の彼女と相手の姿が交互に映る。手に汗を握って私は画面を食い入るように見ていた。そして、ついにその時は訪れた。
『良かったぜぇ鯖江ちゃん』
『は、はいぃぃ、でも、もっとぉ』
鯖江が甘い声を出している。
『クックック。鯖江ちゃんも、すっかり魅了されちまったようだなぁ。もう戻れないぜぇ?』
『戻らなくて良いのぉ。もっと刺激が欲しいの』
『ハハハ! 素質はあると思ってたが、こいつは俺たちと同じ、とんだ変態だぜぇ。いいぜ。連れてってやるよぉ』
男が画面に視線を向けた。
『彼女さんはもう戻れないってさ。残念だったね』
画面はそこで終わった。動画の再生回数は一万を超えている。一万人の人間が、彼女のあの姿を見ていることになる。
【解説編】
彼女と会えなくなって一週間が経過した。電話やメール、SNSで呼びかけてみるも返事がない。一体どうしたというのだろう。警察に相談すべきか。そう考えていたところで、スマートフォンが通知音を鳴らした。画面を見ると、彼女からのメッセージだ。急いで画面を開くと、そこには彼女の感情のこもった言葉ではなく、無機質なURLが添付されているのみだった。彼女が一言もなくこんなURLだけを送ってくるわけがない。一瞬、アカウントの乗っ取りを疑った。そのせいで連絡が取れなかったのだろうか。このURLにアクセスすると、私のアカウントも乗っ取られるのではないか。
そんな私の疑惑を察したわけでもあるまいに、新たなメッセージと写真が送られてきた。そこには白い建物とクルーザーをバックにして、満面の笑みの彼女が写っていた。彼女だけじゃない。その周囲には何人もの屈強で、日に焼けた男たちが笑顔で写っている。ごつく太い指が、馴れ馴れしく彼女の肩に置かれていた。
「ま、まさか・・・」
≪あの建物、見覚えがある。何度も見た。いや、まさか≫
嫌な予感が胸中で渦巻く。震える指で、私はURLをタップした。アクセス先は動画だった。スマートフォンから最初に聞こえたのは、男の野太い声だった。
『彼氏君、見てる~?』
男が画面に向かって手を振っている。
『今ぁ、彼女さんは俺たちと一緒に遊びに来てま~す。ダメだよぉ? こんな可愛い子を仕事で放置なんて。可哀そうだから、俺たちが君の代わりにリフレッシュに沖縄の海まで連れてきてあげたよ』
≪初めまして。私、ガイド船を運営しております者です。本日はお客様の了解を得て動画撮影を行わせていただいております。動画を楽しんでいただければ幸いです≫
沖縄、だと。ガリ、と骨伝導が奥歯をかみしめた音を拾う。嫌な予感が確信へと変わっていく。
≪やはり、あれはGTガイドとその店舗、クルーザーだったのか!≫
『せっかく沖縄まで来たんでぇ、彼女さんにも楽しんでもらいま~す』
≪私たちが、お客様の最高のひと時、最高の魚との出会いのために全力を尽くします≫
男たちに押し出されて、彼女が画面の前に立った。
≪全員、すでに安全のために救命道具を装着している。腰に巻くタイプだ。よくある赤いベストタイプだと、キャストの時当たって投げづらいからな≫
『ゴメン、鯵郎君。私』
≪でも、あなたが悪いのよ。沖縄に行こう、GT釣りに行こうって約束してたのに、仕事で都合がつかないって言うから≫
「鯖江!」
聞こえるはずがないのに、思わず彼女の名を呼んだ。
≪俺じゃない奴と行くのか! GTを、釣りに!≫
『謝ることないってぇ~。鯖江ちゃんは、自分の気持ちに正直になっただけだよ~。悪いのは君との約束をほったらかしにした彼氏君のせいなんだから~。そんな薄情な彼氏君のことは忘れて、レッツエンジョ~イ!』
≪沖縄の素晴らしい海とGTとのスリリングかつパワフルな対決を味わっていただけるよう、スタッフ一同誠心誠意頑張らせていただいております≫
画面が切り替わった。編集の仕方が上手い。こいつら、撮り慣れてやがる。
≪そりゃそうだ。登録者数一万八千五百二十人いるんだから。撮り慣れてるのは当たり前か。あ、撮り慣れてるし、GT獲り慣れてる、ダブルミーニングだ≫
画面は一面の大海原を映し出している。さっきのクルーザーで出港したのだろう。そして鯖江たちは空と海しかない場所で、己を解放していた。
≪滅茶苦茶気持ちよさそう。羨ましい、羨ましすぎるぞ鯖江!≫
『さっさと握れや! 早くしろ!』
≪時合い、しかもナブラが発生しています。このチャンスを逃す手はありません≫
『こんな太くて大きいもの、初めてで』
≪硬さH以上、四百グラムのロッドなんて初めて。リールも一万四千番台って。ライトソルト用の硬さLクラスロッド、二千番台のリールしか使ったことないのに≫
『泣き言言ってんじゃねえぞ! 振れ、しっかり振れ! オラァ! もっと腰落とせよ! 気合い入れろ!』
≪しっかりロッドを振りましょう。船の揺れもあるので、重心を下にして体を安定させ、落ちないようにしてください≫
『もう、無理、無理ですぅ、壊れる、壊れちゃうぅううう』
≪初めての船釣り、こんなに波が荒いなんて、酔い止め飲んだんだけど、吐きそう≫
『何へばってやがる! お楽しみはこれからじゃねえかよ!』
≪頑張ってください。乗り越えた先に、獲物はいます≫
男たちは彼女がフラフラなのも構わず、次々に怒声を浴びせる。
≪頑張れ、鯖江! お前ならできる!≫
『おら、どうなんだよ! 彼氏君とイった時と、今と! どっちがイイんだよ! 答えろよ!』
≪お客様はこれまでメッキなどのライトゲームしかしたことがないと話されていましたね≫
『そ、そんなの決められ』
≪鯵郎君との釣りも楽しかった。のんびりまったりしてて≫
『ああ~? その割にはここはこんなにプルプル喜んでんじゃねえかよぉ。正直に答えろや。今までのと比べて、どっちが凄いんだよ』
≪まずい。筋肉が疲労している。腕も足も乳酸が溜まっている。ギブアップか?≫
『しゅごいのぉ! これが、強いのがイイのォ! 比べ物にならない。今までの快感が全部消えちゃうのォ、あたし、馬鹿になっちゃうぅううう!』
≪メッキとは比べ物にならない強烈な引き! 重さ! 上がってこない! これが、これがGT! すごい! 私いま、感動している!≫
『ひゃっはァ! 本性現れちゃったなぁ鯖江ちゃんよぉ! だそうだぜぇ~彼氏君よ~、これまでの君とイったのと比べ物にならないんだとよぉ!』
≪だが、やはり釣りは自分の力で釣ってこそです。これで諦めないとは、あなたも立派なアングラーだった、ということですね。お客様が諦めないのであれば、スタッフ一同、お仕事で来ることができなかった彼氏様の代わりに、全力でサポートします!≫
私は敗北感と屈辱にまみれていた。
≪私でさえ釣ったことのないGTを、釣り歴一年にも満たない彼女がファイトしている。羨ましすぎる≫
だが、画面から目を離すことができない。それを上回る興奮が、私の体を支配していた。
≪だがその彼女が、大物を釣り上げようとしている≫
私の物より大きく、太く長い物を一所懸命必死になって操る彼女の姿が、ほとばしる汗が、これまで見たことのない表情を見せる彼女が、とても美しかった。私では、こんな彼女を引き出すことはできなかった。
≪すまない。もっとお金を稼いで、君に専用タックルを買ってあげたかったんだ。こんなに楽しみにしていたなんて、本当にすまない≫
フィニッシュが近づいている。彼女も、相手も、体力の限界は近い。
≪頑張れ、魚影が見えた! もう少しだ!≫
『もう少しだ! ラストスパート!』
≪もうすぐランディングできます! 頑張って!≫
『は、はひぃいい!』
≪回れよ腕ぇ! ハンドル回せぇ! 耐えろよ足ぃ! もう少しでいいから! あとで筋肉痛になってもいいから、今だけは耐えろぉおおおお!≫
必死の形相の彼女と相手の姿が交互に映る。手に汗を握って私は画面を食い入るように見ていた。そして、ついにその時は訪れた。
『良かったぜぇ鯖江ちゃん』
≪おめでとうございます! 二十キロの大物です!≫
『は、はいぃぃ、でも、もっとぉ』
≪もっと、大物を釣りたい!≫
鯖江が甘い声を出している。
≪そりゃそうだ。GTの最大は一メートル六十センチ、重量は五十キロを超える。この一回の釣りで、更なる欲が出てもおかしくない≫
『クックック。鯖江ちゃんも、すっかり魅了されちまったようだなぁ。もう戻れないぜぇ?』
≪これで、あなたも釣りバカの仲間入りです。釣りのない生活には戻れませんね≫
『戻らなくて良いのぉ。もっと刺激が欲しいの』
≪GTだけじゃない。世界中の怪魚と戦ってみたい!≫
『ハハハ! 素質はあると思ってたが、こいつは俺たちと同じ、とんだ変態だぜぇ。いいぜ。連れてってやるよぉ』
≪初めてでこんな大物を仕留めるとは。素晴らしい才能、何より運を持っています。彼女なら、あるいは仕留めるかもしれません。アカメ、イトウ、オオニベ、コブダイ、海外はピラルクー、チョウザメなど。ふふ、楽しみで仕方ありませんね≫
男が画面に視線を向けた。
『彼女さんはもう戻れないってさ。残念だったね』
≪彼氏さんへ。釣り好きの彼女を支えてあげてください。そうしたのは貴方です。責任を取ってあげてください。また、ご夫婦でのご来店を心よりお待ち申し上げております≫
画面はそこで終わった。動画の再生回数は一万を超えている。一万人の人間が、彼女のあの姿を見ていることになる。
≪そうだ、私も沖縄に行こう≫
私は一体何を書いているんだろうか・・・? 叶 遼太郎 @20_kano_16
★で称える
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