057「そのハミングは7」/虹乃ノランさん ※本文引用あり※追記あり※

https://kakuyomu.jp/works/16817330669184935083


 はい、課題図書です。


 「真実は人の数だけ(4)」特にここ、全小学校高学年から中高生は読むように。


 カクコンはなんで朝読賞をなくしてしまったのか……。この作品が何らかの形で世に出ますように。



 ハリケーンに巻き込まれた事故の怪我で、盲目になってしまった少年の一人称で語られる物語です。

 です。大事なことなので2回言います。

 視界から入る情報がなく、すべて視界以外の感覚を通して言葉で表現しているのです。これがいかに高度な技術であることか!

 この作品を書くために作者の虹乃さんは、実際に視界を塞いでしばらく生活してみたとのこと。その志の高さ、本当に尊敬します。


 目で見えないからこそ伝わる、言葉の力に目覚める主人公の描写もあり、その難しい表現を書き切る筆力が素晴らしいです。

 メニュー表に並ぶ料理の美味しさを、言葉のみで、正確に、魅力的に伝えるってなかなかできることではないのではないでしょうか。

 しかも、折り鶴の折り方を、言葉だけの説明でやってのける……あの部分は感動しました。思わず一緒に折りたくなりました。手元に折り紙がないのが惜しい。



 トビーのお母さんがいかにもアメリカのママで、私はとても友達になりたい。


【以下本文引用(一九九二年八月 フロリダ(4) より)】


「トビー! 私、決めたわ! 今度の車椅子選手権に出て優勝するわ!」


【(匂いの塊(4) より)】


「まあ! 素敵! それじゃあ早速支度しなくてはね」


【(神様がくれた特権(3) より)】


「ゴメンね! トビー。お母さん心配でついてきちゃった!」


【本文引用終わり】


 ね、おかあさーん! この心の強さ。見倣いたい。否定しないの。まず受け入れるの。愛だわ愛。愛が深い。

 トビーの成長物語ですが、その基礎になる家族愛の物語でもあります。


【以下本文引用(神様がくれた特権(3) より)】


 僕は目が見えないんだ。そんな僕が困っていたら、周りは助けてくれるのが当然のはずなんだ。だから自分でできることは自分でする。それだけだ。甘えた考えは嫌いだ。


【本文引用終わり】


 もどかしいよね。気持ちはわかるけど、筋が通っているようで矛盾してる。

 思い通りにならず駄々をこねる子供のようだったトビーが、ジャンと、サラと、ニネベの人々との触れ合いを通じて、


【以下本文引用(サットン・ロックス・ストリート187(7) より)】


「僕を産んでくれてありがとう」


【本文引用終わり】


 この一言が言えるようになるまで!! の、成長物語です!! 大人になったよ!!!



 私はこの物語を実写映画化してほしいのです。

 トビーのジャンは絶対ジョニー・デップです。「ジャンナ・グッドスピード(3)」の描写とかまんまです。


【以下本文引用(早くよくなれよ、相棒。彼女も待ってるぜ(2) より)】


 そこにいたジャンは、僕のイメージどおりの男だった。

 スパニッシュ系で長髪の黒髪、毛先には癖が出ている。瞳は黒。手入れのされてない生やしっぱなしの髭に、少しこけた頬と高い鼻、長身で骨張っている。白のタンクトップに青いチェックのネルシャツ。カーキのカーゴパンツを履いて、見える素肌からはタトゥーがびっしり。まさにロクデナシのロックンローラー。


【(早くよくなれよ、相棒。彼女も待ってるぜ(3) より)】


「お坊ちゃま、注文はお決まりでしょうか?」って。しかも裏声なんか使ったりして。


【本文引用終わり】

 

 ね?


 このジャン、一体何者なのか。


【以下本文引用(古びた鍵 より)】


 真実はジャン、君が君であること。


【本文引用終わり】


 これです。


 あと新しいわんこの名前がグレースなのもグッと来る。アメージング・グレースのグレースでしょう? あんなに、あんなにトラウマだったのに、トビーがもうすべて受け入れて乗り越えた感が凝縮しているようで……! 私はここで泣きました。ここで泣いたの私だけかもしれないけど。



 以下、余談。


 虹乃ノランさんとは、以前に別の小説投稿サイトで活動していた頃に知り合った方でした。畏れ多くも仲良くしていただいて、いろんなお話をして、当時とても楽しかったです。

 ある時期から虹乃さんは活動を控えられ、私も思うところがあってその投稿サイトは退会し、繋がりが完全に途絶えたと思っていました。時々、お元気かな〜お元気だといいな〜と懐かしく思っていたのです。

 なんとつい最近、カクヨムでまさかの再会を果たしました。

 私は当時から名前も変えてしまっていたのですが、虹乃さんはすぐに気づいてくださって、こうして私はまたこの作品を読むことができるようになって、こうしてまた感想も書けました。

 また会えてよかった!!! カクヨムありがとう!! 虹乃さん、応援してますからね!!!



【2024年6月追記】


 はーい!(にっこり)


https://kakuyomu.jp/contests/kakuyomu_web_novel_009


 というわけでカクヨムで感想を書き始めてから最速の伏線回収を果たしました。

 第9回カクヨムコン特別賞(エンタメ総合部門)受賞おめでとうございます!!!


 ほらねーーーーー!!? やっぱりでしょーーー!!!


 単行本になった姿で、本屋でお会いできるのを楽しみにしています。

 映画化! ジョニデジョニデ!

 実写が難しいならアニメ化してほしいわ。ピ◯サーどうよ!! さあ来い!


 まずは全小中学校の図書室に入れよう! 課題図書だ! 読書感想文書き放題だ〜〜〜!! わっしょーい!(嬉しさのあまり謎のテンション)

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