056「亡き魔女のためのレインガーデン」/湊波さん② ※ネタバレあり※本文引用あり※長文※

https://kakuyomu.jp/works/16817330649785653998


 最初にお断りしておきますが、この感想はネタバレせずに書けないので誠に申し訳ないことでございます。


 はい、本編を読んでいない方でここを開いた方はいらっしゃいませんね!? ね!?

 もしいたら、急いで読んできてください。36万文字。



 魔女になれ。話はそれからだ。



 感想を書くために二回目を読みながら設定と感想をメモしてたのですが(魔女設定についてのまとめは本編第五章4話あたりにあります)、二章の後半から名前を叫んでばっかりで相変わらずの語彙消滅っぷりでした。

 てかさ、湊波さんの作品ってそういうのばっかじゃん? ね? 感情の乱高下がもう、嵐どころか天変地異レベルなわけですよ。読んだ人ならわかると思うけど。

 初回読んだときには読解力が乏しく、魔女の設定の理解が難しかったのですが、二回目読んで理解してからの改めてのエモさが……もうさーーー!! ねえ!! エクスクラメーションマークをいくつ打ったと思う!!? わかんない!!!


 アンナとルーの複雑に絡み合った過去と現在の事情と感情とを、波グラフで現したい。心臓に悪いほどすっごい上下する。基本のストーリーはそんな二人の恋愛模様です。

 第三章第12話の感想メモが「ぐはっ」の一言だったので察してください。そこからの急展開がもう、もうね……。


 脇役たちもまた主役級でしてね。そりゃもう。


 まずティカ! この子はほんとにまったく!!

 初登場時はなんだこいつでしたが(ごめんね)、ストーリーが進むにつれて、エグしんどい中で唯一のオアシスでした。


 ティカとアンナの印象的なシーン。


【以下本文引用(KHM021 / 第二章 銀リスとガラスの讃美曲 第9話 みんなが待ち望んでいるのは、冬ではなく、春だもの より)】


「(前略)そもそも革命さえなければ、私が姉を殺すことなどなかった! 私だけじゃない! この国中の恋人同士が、友人同士が、家族同士が、考え方の違いで殺しあうことなんてなかったんだ! それなのに、お前は争いを選んだ! たくさんの人間を殺して、それなのに、お前は生き残ったんだ!」

「っ、必要な犠牲だ! 誰も死なない戦争なんて、どこにもない!」

「だから仕方ないって!? 革命こそが正義だから!? 違う、そんなのはお前の自己満足だろう! 誰か一人でも死なせたのなら、もう、誰も守れてないんだよ……っ(後略)」


【本文引用終わり】


 エグいなあと思いました。誰も悪くないのか、誰もが悪いのか。後々までアンナの葛藤の根底にあるテーマになっています。記憶を取り戻してからはさらに。

 それでもアンナはティカに手を差し伸べて、ここからティカがアンナに気を許してなんなら好きになっちゃう関係がエモかった。ティカかわいいよティカ。


 そしてレイモンド!

 いけ好かない陰キャだと思っててごめん!! ラストは君がいなかったら成り立たなかった。よくやったよ!!!


【以下本文引用(KHM153 / 第五章 煌華祭 第5話 より)】


「君にとっての大切な人がまだ生きているのなら、できるだけのことはしたほうがいい。まだ声は届くんだから」


【本文引用終わり】


 これ!!! よく言った!!! 泣いたわ。

 後半から終盤にかけての、ティカとレイモンドのコンビが大好きです。

 ティカ最上強火担フラウが同担断固拒否で、レイモンドに極塩対応するまでがセットのトリオもおもしろい。

 レイモンドはこれからの人生、なんだかんだティカのことが忘れられなくて、誰かのことを好きになってもうまくいかず、その原因がティカにあることを認めたくなくて悶々とするのが目に見えるようで不憫だなと思います。一生振り回されるんだわ。一緒にいてもいなくても。

 ティカ罪深い子。


 ディエンについては私の中で一番掴みどころがなくて、真意が測りきれない部分がありました。

 ルーとは違うアンナの過去を知っていて、そういう意味ルーとは対のポジションだったのかなと。

 禿頭強面の傭兵なのに武器がぬいぐるみってそのギャップ。自分で縫っちゃうくらい器用だしね!


 私の中でダグラス叔父様は草◯正雄さんです。


【以下本文引用(KHM060 / 第三章 落星とイコンの楽園歌 第5話 より)】


「そう」ダグラスはにっこりと笑いつつ、両手で何かをひねって千切る動作をした。「こう、いいかんじにね。断っておいたんだ」


【本文引用終わり】


 ↑ここすき!


 このひねって千切られたあいつ、アンナの婚約者だったメレトスは序章で登場してましたが、絵に描いたようなっていうか絵心ない私でも絵に描けそうなほどのクズで、いっそ清々しかったです。

 純粋な完全悪って作中こいつしか出てきてないんじゃないかな。序章以降ちらっと何度か名前しか出てきてないけど。



 アルヴィム。


 初登場時から大変に好きなキャラで、よくある少し離れたポジションから主人公たちをうまく導くちょっと謎めいた飄々お兄さんだったんですよ……だったんですよ……よ……(エコー)


 彼に関しては感想メモそのまま載せます。ネタバレです。


【メモ抜粋コピペ(本文引用含む)】


(三章)

14話

・アルヴィムーーーーー!!!お前だったのかーーー!!!?

・>俺が真実許せないのは一人だけど

・>親友のための薔薇十字ロザリオを手に入れる。そのためだけにアンナ・ビルツは魔女を呼び、殺してきた。


(承前)

8話

・ダグラスお前もかーーーー!!!! ディエーーーン!!

9話

・アルヴィムまたお前ーーーー!! アンナ自殺未遂のこれで記憶喪失→同じく自殺未遂で記憶の復活なのかああ! あああ(言葉にならない)!!

・フラウお前ーーー!?!? ここに来て唯一の良心ティカ……(泣)


(五章)

10話

・アルヴィムーーーーお前ーーーー(泣)(泣)(泣)


【コピペ終わり】


 以上です。(にっこり)


 好きなキャラが悪役だったという、初めての体験だったかもしれない。

 完全で純粋な悪じゃなくてね、複雑でこれがまた切なかったです。しんどい(すき)。


 彼に関してもう少し。

 二回目読み直して気づいた伏線について。


序章7話

>その言葉は親友のリリアにそっくりだった。

 →これさり気なさすぎて。

第三章 魔女の未練初登場時

 →これ序章に出てきた狩人魔女か? アルヴィムが処理しとくって言ってたやつか? って気づいたときは、ほおお! となりました。

>アルヴィムは珍しく難しい顔で黙り込んでいて

 →さりげない伏線だけどすぐ視線をティカへ移動させるニクイ演出。


 もっとあるかもしれないけど、私は二回目読んだときは完全にアルヴィムの物語として読んでました。しんどい(すき)。



 以下、余談。


 私はこの作品をミュージカルで観たいです。アニメでもいいけど。コミカライズでもいいけど。絶対ミュージカル。

 この愛憎劇、感情の振り幅を歌と踊りにしてほしいのです。花の咲き乱れる舞台とゴシックで華やかな衣装で観たい。とても。

 誰か!! どうにかなりませんかね!!?


 ところで湊波さん、TRUMPシリーズご存知ですか? LILIUM(新約でも旧約でも)を何かの機会があったら観ていただきたい。ハッピーエンドではないのですが、私は今作を読んでいる間中ずっと作中歌が脳内リピートしてました。

 もし視聴済みなら、一緒に繭期を拗らせましょう?

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