第231話 『その日、盛大に帰還した』

 『精霊の森』を開放した私は、その日から『女神の法衣』を日常的に着て、街を散歩したりお買い物したり、魔法や薬学を教えたりして街で過ごした。そうして思った事は、私の力が必要な場面は、もうこの国には無さそうという事だ。元々あったやりたい事も、全部達成したわけだし、そろそろ国に戻る事にした。

 なので仲間達やシルヴァちゃんに相談したところ、盛大なお別れ会を開いてもらったわ。その時に、お土産として、沢山の果物や野菜、それから素材を貰った。前のシラユキちゃんなら1年あっても消費しきれないくらいの量だったけど、最近シラユキちゃんはいっぱい食べるから、これくらいなら数か月ももたないかも。


 そうして翌日。エルフの全国民が見守る中、私達は街の中央へとやって来ていた。


「シルヴァちゃん、こんなところを使っちゃって良いのー?」

「勿論じゃ。盟友殿には感謝してもしきれん。其方の為ならこの程度、なんの苦もないのじゃ」


 案内されたのは街のシンボルとも呼べる清浄な空気が流れる広場。その中心の、何もない草地だった。

 こんな良い所に『転移魔法陣』を置かせてくれるなんてね。


 私はマジックバッグから『転移魔法陣』を設置し、魔力を注入する。

 するとあっさりとゲートが出現し、向こうには王城の一室が見えた。


「うん、ばっちりね」


 全ステータスが超向上したおかげか、魔力の最大量も爆上がりした今、この距離のゲート作成ですら余裕があった。うーん私、どれだけ人間辞めてるんだろう?


「シルヴァちゃん。使い方は覚えてるよね?」

「うむ。ここのスイッチを押せば盟友殿がストックしておいた魔力を消費して、ゲートが出現するのじゃったな。効果は3回分。ゲートの開閉時間は10分。その間は何人でも通る事ができると」

「そうそう。ナンバーズとのやり取りだけじゃ、国同士の取り決めなんて難しいからね。落ち着いたらいつでも遊びに来てね」

「うむ、近いうちに必ず。……しかし、こんな奇跡を当然のようにのぅ。流石は、盟友殿じゃ」

「にひ。それじゃ皆、準備は良い?」


 仲間たちは頷いて見せた。ここに来た時と比べて、メンバーが2人ほど増えているが。


「それじゃ、いくよー。エルフの皆、またねー!」

「盟友殿! いつでも遊びに来て良いのじゃ! 其方らなら大歓迎じゃ!」

『シラユキ様、お元気で!!』


 暖かな声援を背に受け、私はアリシアと手を繋いで、ゲートをくぐった。

 さようなら、エルフの王国。絶対にまた、遊びに来るからね。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 ゲートをくぐると、もう彼らの声は聞こえなかった。

 おっかなびっくりと言った様子のミルちゃんが最後に通ったのを確認して、彼女の手を引いていたミーシャがスイッチをオフにしてくれる。


「ここが、エルドマキア王国なのですか?」

「そうよミルちゃん。エイゼル、陛下はどこに?」


 すぐにマップを確認していたエイゼルに聞く。


「謁見の間にいらっしゃるようです」

「先触れよろしく」

「はっ」

「ツヴァイとドライは、皆を呼んできてくれる?」

「「はっ!」」

「それじゃ、行きましょ」


 消えるエイゼルを追うように部屋を出た。廊下では顔見知りの兵士たちや騎士、メイドさんとすれ違い、その度声を掛けられた。うーん、帰って来たって感じがするわ。

 そのまま謁見の間に到着すると、どうやら来客中らしい。けど、まあいいでしょ。


「ただいまー!」


 謁見の間に入ると、陛下の前にはお客さんが来ていた。知らない人だけど、この国の人なのかな?

 でも謁見の間でわざわざ会うってことは、それなりにお行儀よく相手をする必要がある人なのかしら? まあ、そんな場に私は空気を読まずに入っちゃうわけだけど。なんたって最近のシラユキちゃん、無敵の人みたいになってるから、怖くもなんともないわ。


「おお、シラユキよ。よくぞ戻ったな! 今、お主の話をしておったのだ」

「んぅー?」


 なになに? シラユキちゃん、1ヵ月近く離れてたけど、噂されるくらい寂しがってくれてたってこと?


「おお、貴女様はやはり、あの時の女神様……!」

「んんー?? よくわかんないけど、女神反応されるって事は、遠征の最中に立ち寄ったどこかの国の人?」

「うむ。なんでもお主によって国が救われたとかで、我が国からの連絡を受けて、お礼を伝えに来たそうじゃ」

「ああ、スタンピードの国ね。その後も問題ないようで良かったわ」


 なんでも、彼らがこの国に来たのは私へのお礼もそうなのだが、私の像を街の中心に建てたいとのこと。その許可をわざわざ貰いにやってきたらしい。けど陛下も私のいないところで勝手に決めるわけにもいかず困り果てていたとか。

 勿論私としてはオールオッケーだけど、自分の像が建つのならしっかりとした物じゃないと許さないわ。


「アリシア、今の私の姿、1枚写真に撮って」

「承知しました」


 アリシアは即座に紙に印刷してくれたので、私から直接大使の人に手渡した。


「これを参考に、ちゃんとした像を建ててくださいね」

「は、はいっ!! 必ずや、立派な像にしてみせます!! この御姿は、我が国の国宝となるでしょう……!!」


 そう言って大使の人は、歓喜した様子で、何度もこちらに頭を下げて出て行った。

 うん、もうあの人達からしてみれば、この国で一番偉いのは陛下じゃなくて、私になってるみたい。まあいいけど。


「さて、色々と言いたいことはあったが、今のお主を前にすると全て吹き飛んでしまったわい。しかし、これだけは言わせてくれ。良く戻ったな、元気そうで何よりじゃ」

「えへー、ただいまー」

「シラユキちゃんがいない間、この国でも色々とあったが……。まあそれはワシの口からは語るまい。今駆け付けておる、お主の大切な家族に任せよう」

「シラユキ!!」


 謁見の間が勢いよく開け放たれ、そこには息も絶え絶えと言った様子の大切な人たちがいた。


「みんな!」


 ソフィー、アリスちゃん、ココナちゃん、リリちゃん、ママ。それにクラスの皆も。


『おかえり!』

『おかえりなさい!』

「ただいま!!」


 私は、大切な子達の胸に飛び込んだ。


『皆の顔を見るのも久しぶりね。帰ってきたって実感するわ!』

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


今話にて、7章終了となります。またしばらくの休みの後に閑話とまとめ。

それから8章の投稿が出来ると思います。


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異世界でもうちの娘が最強カワイイ! 皇 雪火 @hiyuu10

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