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 天狗に連れられて天狗城の中に入ったおじいさんは、そのまま大将である大天狗のいる天守閣までやってきました。急な階段を登り、部屋の前まで来たところで天狗はおじいさんに向かって注意事項を説明します。


「この先に我らが大将、大天狗がいらっしゃいます。どうか失礼のないようにお願いしますね」

「うう……。ワシむっちゃ緊張してきた。大丈夫かの」

「大天狗様は懐の大きなお方。怒らせなければ大丈夫ですよ!」


 天狗はニッコリと満面の笑みを浮かべると、大天狗の鎮座する部屋のふすまを開きます。ここまで来たら覚悟を決めるしかないと、おじいさんはゴクリとつばを飲み込みました。

 その部屋の中にいたのは全長が5メートルはあろうかと言う大天狗。ずうたいも大きければ背中の羽も立派で顔も鮮やかな赤色、特徴である鼻に至ってはものすごく太くて立派なのでした。


「おお、これはまたたまげたわい……」

「さ、大将の前へ。おじいさんの武勇伝を聞かせてあげてください」

「わ、分かった……」


 天狗に背中を押され、おじいさんは大天狗の前まで歩いていき、そのまま深々と頭を下げます。大天狗はそれを見て豪快に笑いました。


「あっはっはっは! そんなにかしこまらんでも良い! 主の話を聞かせい!」

「あ、どうもです。では、僭越せんえつながら……」


 おじいさんは、今までに自身に起こった出来事を見振り手振りを駆使しながら懸命に話します。大天狗はそれを興味深そうに何度もうなずきながら聞くのでした。


「……と言う訳なのでございます」

「中々に面白い話であった。しかしのう、主にも悪いところはあったのではないか?」

「え……っ?」


 まさかそんな返しが来ると思っていなかったおじいさんは困惑しました。この返事次第で運命が決まると直感したおじいさんは、思わず固まってしまします。



 ここは無実を訴えよう

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894179860

 大天狗の機嫌を良くするためにお世辞を言おう

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894180229

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