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「わ、ワシは無実ですじゃ!」

「ほう、そうなのかの……?」


 おじいさんは無実を訴えましたが、大天狗の表情はどこか納得の行かない風です。そこからは特に会話も弾まず、場には気まずい空気が流れるばかりでした。

 こうして大天狗との謁見は終わり、おじいさんはようやく開放されます。


「ふう、緊張したわい」

「お疲れ様でした。この後の事ですが、どうされますか?」

「自分の家に帰らせてくれんかのう」

「分かりました。では……」


 と言う流れで、ここまで連れてきた天狗が今までのお礼も兼ねて、責任を持っておじいさんを地元の村まで連れて行く事となりました。


「では天狗さん、頼みますわいな」

「おじいさん、しっかり捕まってくださいね!」


 おじいさんは天狗に抱きついて空の旅を楽しみます。やがておじいさんの目に見慣れた景色が現れました。故郷に帰ってきたのです。天狗は見つかったら大変だと、村の近くで地上に降り立ちます。


「私が出来るのはここまでです」

「ああ、十分じゃよ。有難う」

「では、お達者で!」


 おじいさんは去っていく天狗に向かって、姿が見えなくなるまで手を振り続けました。やがて何も見えなくなったところで、体の向きをくるりと返します。


「さて、帰るとするかの」


 こうして、おじいさんは長い旅を終え、無事に故郷に戻ったのでした。



https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894221761

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