第13話 きーみーがーいた、なーつーはー

「あ、ワッショイ!ワッショイ!あ、ワッショイ!ワッショイ!」


光春くんの今年の目標は、「お祭り男」と呼ばれることらしい。


「ミスターローレンス!今日はどんなお祭りボーイたちに出会えるか、楽しみで仕方がないよ」

「あ、ワッショイ!ワッショイ!あ、ワッショイ!ワッショイ!」


ねじり鉢巻にフンドシ一丁。

エア神輿でイメージトレーニングに励んでいる。


僕はどうしても光春君に伝えとかなければいけないことがあった。


「でも光春くん、口臭いからあまり人と話さない方が良いよ」  


「あぁ、そうだったな。ワッショイ、ワッショイ」

「あ、ミスターローレンス!フンドシをギュット締めてくれ。ギュットだぞ。ギュット。ほらギュット。食い込ませて。ほら。食い込ませて。ほら…く・い・こ・ま・せ・て」


光春くんはお祭りへ出掛けていった。


光春くんが出掛けてすぐに、外が騒がしくなった。


聞き慣れたサイレン音が聞こえ、聞き慣れた叫び声が聞こえてきた。


「やめてください!お祭りに行くだけです!出したんじゃありません!ポロリお祭りハップニングです!100万本のチューリップ祭りに行くだけなんです!」


光春くんはまた、制服を着た国家権力に連れて行かれそうになっていた。


「私は神輿じゃありません!かつがないで!かつがないで!かつがないで~!!」


あ、ワッショイ!ワッショイ!

あ、ワッショイ!ワッショイ!


国家権力と光春くんのかけ声が、いつまでも響いていた。


フンドシをゆるめておいて、本当に、良かった。







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光春くんと僕 @gingingin

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