とあるお坊のヘッドホン
草薙 健(タケル)
昔々――ではなく、現代のお話。
あるお寺に、若い修行僧がおりました。
彼は心の底から仏教に帰依しており、人々を救済するために悟りを開きたいと願っています。
しかし、修行は思ったように進みません。いつもいつも住職に雑用を押しつけられて、読経や写経もままなりません。
もっとお釈迦様の声――すなわちお経を聞く時間を確保することができれば、修行がはかどるのではないか。
そう考えた彼は、現代のテクノロジーを導入することにしました。全ての
彼は、朝のお勤め時も境内を掃除するときも四六時中ヘッドホンを装着し、お経を流しました。
若い修行僧は喜びました。
雑音が耳に入らない。お経だけが聞こえてくる。
これで私も悟りが開ける。一人前のお坊さんになって、人々を救済することが出来る。
そう思った矢先、彼は寺の住職から破門――すなわち、解雇を言い渡されたのです。
若い修行僧は問いました。
私は四六時中お経を聞き、お釈迦様の教えを勉強しています。それなのに、なぜ私は破門されなければならないのですか?
住職は答えました。
「わしの言うことが全く聞こえておらん!」
教訓――
とあるお坊のヘッドホン 草薙 健(タケル) @takerukusanagi
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