第16話 あの子との出会い2

 このエピソードの題名ついては正直言って意味が分からない。いや、分かる人には分かるのだろうけれど、ぼくには全く分からない。

 そう、この世の中は分からない事だらけだ。

 分からないまま時は流れ、日に日に経って行く。知らないまま。知らずに、生きて、生きて行く。

 知って後悔する。知らされて惜しがる。知るようになって残念そうにする。知って……損する。

 知って、……得をする。

 要するに、全部が全部知ってても意味が無いし、意味が有る。決まり事ではない。曖昧に不明瞭に有耶無耶な中途半端な程人間は長生きするのだろう。否、鈍感な程長生きするであろう。

 全部が全部知っている人間。

 全部が全部知っていない人間との距離は一体なんだんだ。

 ……それは、生まれてから……揺り籠から、距離の人生が変わって、行く。

 自然と距離が置かれ遠ざかって行く。それを見て行くぼくは何も思わなかった。

 だから、ぼくは敢えて何も言わなかった。見て見ぬ振りをして視界から遠ざけようとした。

 そして、

 ぼくの、

 ストーリーが始まろうとしている。




「時間配分ね――まあ、取り敢えず課せられた分を適度に配布すれば良いか」

 ぼくは右手に鉛筆を持ち白紙に予定表を書く。

 正直言って、自分のことならまだしも他人の予定を作るとは微塵も思わなかった。と言うか、六才の子に中学生が習う数学を教えるとは一体何を考えているんだ。楓さんは。ふん。

 あの子自身、勉強は好きなのだろうか、嫌いなのだろうか、普通の人は大抵勉強が嫌いと答える。――手を挙げるらしい。逆に言えば勉強を好む人は少なからずいないだろう。……ぼくはどちらでも無い。どちらかを選択、取捨選択、二者択一しろと言うのならぼくは《好き》と答えるだろう。

「まあ、良いや。取り敢えずこのぐらいが妥当だろう」

 ぼくはぐぅーと腕を伸ばして席を外す。

 ぼくはさなちゃん達が向かった方へ歩きだす。この家、ぼくの家とさぞ変わらないだろうけれど、でかい……ぼくが言うのもあれなんだが。

 ……何処へ行ったんだろうか。

 さなちゃん達の声が聞こえてきて何で遊んでいるか様子を伺う。なんか悪いことしている気分だな。伺うことを辞めさなちゃん達の前に現れる。とさなちゃん達が気づいたようで声をかけられる。

「――おー、翠くんお疲れ様ー。どう言う感じにしたのかな?」

「うん。適度に配分したよ。まあ、雫ちゃんもまだ、小学生に満たしていない歳だからね。できるだけ遊び優先にしたよ。楓さんや風華さんは何を考えているかはぼくには分からないけれども、取り敢えず課せられた分はやるよ。例え無理だった場合は仕方がない」

「うーん。まあ、私は文句を言える立場じゃないからね。ただのオマケみたいなものだからね。翠くんがそうしたいのなら、私はそれに従うよ」

 ……オマケって。

「さなちゃんはオマケでも何でも無いさ。主人公だよ。雫ちゃんも喜んでいるんだし」

 ぼくは雫ちゃんの方を見るが雫ちゃんはニコニコとさなちゃんの袖を引っ張る。

 雫ちゃんにとってさなちゃんは必要不可欠な存在になったのだろう。女の子同士ってのもあるのだろうけれど、凄い結束だよ。

「ありがとう」

 と言った。

「翠くん」とニコッと微笑むさなちゃん。

「うん」と頷く。

「雫ちゃん楽しい?」

「うんっ!楽しいよっー!さな姉ちゃん優しい」

 またもや、ぼくのお腹に頭をグリグリとする。可愛い……。そして、上目遣いでぼくのほうを見る。

「良かったね。何して遊んでたの?」

「うん?」とキョトンと首を傾げる。

「おままごとだよっ!」

 ……ほう。女の子が好きそうな遊びだな。

「ふうん」

「お兄ちゃんも遊ぼうーよ」と雫ちゃんはぼくの手を握りおままごとをする事になった。


 その後、二時間。

 雫ちゃんとの付き合いにとてもでは無いが疲れた。

「よしっ、昼食を作るか」と言い疲れた体を起こす。

「雫ちゃん。何食べたい?」

「うーん。オムライスが良いっ!!」と両手を広げる。

「分かった。さなちゃんは何がいい?」

「私もオムライスで良いよ」

「分かった」と言いオムライスを作る。

 オムライスを作るのは久しぶりだな。何ヶ月振りだろう。

 彼女らはニコニコと会話をしている。

「よしっ、出来た」

「はい、どうぞ」

 オムライスをさなちゃんと雫ちゃんに渡す。

「おぉ!翠くん。本当に料理を作るの上手だよねっ!……尊敬」

「それ程でも無いさ」と言うとさなちゃんは首を横に振る。

「お兄ちゃんっ!ありがとうっ!」

「うん」

「食べ終わったら勉強するか。雫ちゃん」

「うんっ!」

 右手にスプーンを持ちオムライスをモグモグと食べる。

 ぼくは二人が食事しているところを眺めて、黙り込む。

「ふん」

「何が言っだ?お兄ぢゃん」

 モグモグと食べながら話し掛ける雫ちゃん。

 口の周りにはケチャップが付いている。ぼくは、口の周りに付いているケチャップをタオルで拭く。

「口の中に食べ物が無くなってから喋ろう」

 雫ちゃんはうんと頷く。

「ご馳走様でしたっ!」とパチンっ!と両手を合わせて言う。

「お粗末さま」

 ぼくは雫ちゃんのお皿を取り、お皿を洗う。それに続き、さなちゃんが食べ終わりぼくの隣へ来る。

「翠くん。美味しかったよ」

「ありがとう」

「何か手伝うこと無いかな?」

「雫ちゃんに歯磨きするようにお願い。新しい歯ブラシ置いてあるからそれ使いなよ」

「うん。分かった。随分と詳しいんだね」

「何度か来たから、自然と覚えて行くよ」

「ふうん……」

「うん」

 さなちゃんは雫ちゃんと洗面台へ向かう。

 お皿を二枚とも洗い、手を拭く。

「じゃあ、そろそろ、勉強するか」

「翠くん。歯磨き終わったよ」

「うん」

「お兄ちゃん。雫の歯綺麗でしょー」

 いーっとする雫ちゃん。

「綺麗だよ。よく出来たね」

 頭を撫でると少し照れる雫ちゃんだった。

 その隣でむぅーと頬を膨らませるさなちゃん。

「…………」

「よしっ」両手でパチンッと鳴らす。

「勉強やろうか……」とポケットから着信音が鳴る。なんとタイミングの悪い……。っと、ぼくはポケットからスマホを出し画面を見る。

「――あ」

 見覚えのある電話番号……、楓さんだった。

「はい、ぼくです」

「《やあ、悪いね。もしかして、勉強中だったかい?だったら悪いね》」

「いえ、今から勉強を教えるところでしたよ。楓さん」

「《おう。そうか。そうか。じゃあ、本編へ行くけれどもな、それで、今日、二十一時ぐらいに帰れるさ。それで、キミの判断で構わないのだけれども、佐々昏のお嬢ちゃんは早く家に返しておいた良いぞ。こんな夜遅くに他人の家に居ると両親も心配するからな。それに、《異性》の家に居るなら尚更だ》」

「……含みのあるようなもの言いですね」

「……含みなんか無いさ。じゃあ、雫をよろしくね」

「はい。分かりました」

 プチンと切れ、プー、プー、プー、プー、と音が鳴る。そして、画面を見てポケットの中へとしまう。

 ぼくは雫ちゃんとさなちゃんがいる方へ向かう。

「雫ちゃん。勉強しよっか」

 こちらを振り向く。

「うんっ!」

 そして、時間が経ち、雫ちゃんには色々と勉強を教えたり、遊んだりした。それに、子供相手と遊ぶのは大変と言うことが分かった。分かっていたのだけれど、当時の自分には分からなかった。分かろうとしなかった。否定し否定しまくっていた。体が追いつかないし、追いつけれない。

 この歳になって体に負担を掛けるのはまだ当たり前のことだ。



 そして、その夜、楓さんと風華さんもジャスト二十一時に帰宅してきた。


「ありがとうな。少年。というかかなり疲れているような気がするのだが」

 風華さんは心配そうに言う。

「やっぱ、アレですかね。小さい子の行動にはついては行けれないですね。早いかもしれませんが歳かもしれませんね。日本に来てから運動してませんからね。正直に言って、疲れましたね」

「雫も雫でキミと会うことに相当喜んでたしな。あれ?佐々昏のお嬢ちゃんは何処へ行ったのかね?」

 辺りをキョロキョロする風華さん。

 そして、楓さんは知らず知らずのうちに服を着替えていたことに気づく。

「あぁ、今、雫ちゃんを寝かせていますよ。もう、遅い時間帯ですからね。それに、雫ちゃんも相当疲れていましたからね」

「――そう。本当に佐々昏のお嬢ちゃんにも助けられたね。――全くだ」

 少しばかり、不満そうに聞こえた様な気がするが、それは勘違いと言うことだろう。

「……そうですね。ぼくもさなちゃんに助けられてばっかですからね――本当に」と嘆息をする。

 ぼくたちは雫ちゃんの部屋へ行くことなった。そして、扉を開く。

「さなちゃん。帰ろうか」

 ぼくはさなちゃんに声を掛ける。

 そして、雫ちゃんを見る。雫ちゃんはスヤスヤとさなちゃんの手を握り、気持ち良さそうに寝ていた。

「うんっ」

 さなちゃんはそっと雫ちゃんの手を離し立ち上がる。

「なんか、気持ち良さそうに寝ているよね」

「だよね。子供ってなんか良いよね」

「そうだね。そう、かもしれないね」


「――それじゃあ、失礼します」

「おう。ありがとうな」


 ぼくたちはその後楓さんの家を後にしてさなちゃんを家まで見送ることにした。


 その後、さなちゃんを家まで送ることが終わりぼくは一人になり自分の家へと向かうことにした。



 後日談。

 二日目も一日目と変わらず終わりを迎えた。

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