第5話 王子様に助けられました。

八雲恋史視点



 最悪です。チンピラにナンパされました。


「ね、いいでしょ?」


 チンピラは金髪に髪を染めていてあまり良い気がしません。なので、ここはきっぱり断ります。そうしたらチンピラも諦めてくれるでしょう。


「私は貴方達みたいなチンピラと遊びたくありません。清潔感も無いので嫌です」


「なっ!?」


 ここで行ってくれると有り難いのですがプルプルしていて顔が真っ赤です。今にもキレそうなので、咄嗟に逃げようとしたら……


「きゃっ!」


 チンピラの1人が私の腕を掴みました。本当に最悪です。


「上玉だから優しくして俺の物にしようとしたんだが中々口が悪いから気が変わった」


 最初から自分の物にしたいって言ったら良かったのに。必死に暴れましたが路地裏に連れ込まれました。チンピラ達がねちっこい視線で私を舐めまして来ました。

 本当に最悪です。


「抵抗なんてしなければ優しくしてあげようと思ったのによ!本当にお前は馬鹿だな」


 リーダーっぽいのが言い寄って来ました。これから起こる事は想像したく無いですが嫌でも想像してしまいます。最後まで抵抗しましたがチンピラは男なのでびくともしませんでした。膝が震えてる私にリーダーが触ろうとした時、同じ学校の制服を着てる人が来ました。

 連れ込まれた所を遠くで見ていたのか、少し息切れをしてました。走って来たのでしょう。ですが男の子は他に仲間を連れて来た様子はありません。ダメかと思います。


「チッ、バレたか……だが高校生相手だったら大丈夫だろ。逃さないようにしろ」


「分かった」


 チンピラのリーダーが仲間に指示を出し、男の子に歩いて行きました。そして大きく振りかぶると……


「うっ……!うぇ……」


 何故か男の子がチンピラの男に腹パンしてました。腹パンするまでが速くて見えませんでした。すると仲間の男がやられたのを見てチンピラ2人は一気に男の子に向かって行きました。

 まず1人目が殴りかかりました。それを男の子は両手でしっかりガードをして殴ったチンピラの股を蹴りました。するとチンピラはうずくまりました。仲間が倒れるまでを見たリーダーが驚いてガクブルしてました。そして……


「お、お許し下さい!!」


「へ?」


 土下座をしました。男の子はポカンとした表情でリーダーを見ていました。私も余りの速さで倒してしまったのでポカンとしていました。そこではっと我に帰り男の子にお礼をしようとしました。



「ん?どうなってるんだい?」もしかしてそこに立っている人が犯人?」


「ち!違いますよ!」


 警察がやって来ました。その後軽い事情聴取が終わり今度こそ男の子にお礼をしようとしました。


「あっ、あの!さっきは助けていただいてありがとうございます……」


「ん?あっ、大丈夫ですよ。当たり前の事をやっただけですから」


 少し上擦ってしまいましたがお礼は言えました。しかしお礼をしただけでは恩を返した気になれない。なので恩を返そうと口を開きました。


「あっ、自分そろそろ門限なので帰らせていただきますね」


「あ!ちょっと、待ってください!」


「もう時間が無いので〜〜」


 男の子の方が口を開くのが早かった様で颯爽と帰ってしまいました。


「……」


男の子が帰ってしまったので、私も帰ろうと思いますが今日のご恩は忘れないと思います。お顔も分からずですが、必ず……必ず何処かで恩をお返ししたいと思います。

















 ……惚れたのはここからだったでしょうか。こんな事でホイホイ惚れる様な尻軽女……とは思われたく無いですね。

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陰キャイケメンの高校生活 たんたん溜まり @aiko1192

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