ダンジョンに必要な物は何ですか?

秋風 紅葉

第1歩 かわいさに必要なものは何ですか?

_____それは、巨大な大穴である。


その定義が世界に広まったのは彼女の産まれるずっと前だったらしい。

大穴が空いたのは100年前、突然凄まじい音と衝撃が夜中の山岳地帯に響き、直径5kmもの大穴が空いた。どれだけ深いかは人間の目には分からないが、今まで探検から帰って来た人が書いた本には、『______私が潜れた場所は深さ40km地点だが、更に下層部が存在していた______』と記されていたので、少なくとも40kmはあるが、本当の深さは誰も分からないということだ。

大穴の付近には100年間の間にたくさんの家が建ち並び、研究者のラボもある程。


そして、二人の少女が大穴[ダンジョン]に出発する_______。



・・・・・・・・


[探索記録]

地上から1番近くの第1層は、草原地帯になっており、木々が生い茂っている。生物も地上のような蝶や鳥たちが主だ。



「_______っと、こんな所かな」

一人そう呟いた少女は、ペンを胸ポケットにしまい、ノートをそっと閉じた。

銀と言うより白に赤いラインが少し入ったような髪に、探検家用ヘルメットを被った彼女の名前は[シャルル]。現在探検家見習いが通う学校の昇降試験の真っ最中。


試験の内容は簡単、ダンジョンの第1層の様子を記録してくる_____というものだ。

シャルルがこの試験に合格すれば、ようやく自由にダンジョン第1層に入る権利__[初心者](ルーキー)の称号が手に入るのだ。


履きなれた靴を使ってシャルルはどんどんダンジョンを散策する。

この第1層は比較的安全な層で、探検家見習いの訓練所でもある。

周りは草原と岩山が入り交じり、ここが地下だとは思えないほどだ。このダンジョンは縦に大穴が空いた形になっているので日光が届く。日光が届くのは第5層までが限界なのだが……。


合格基準の[探索記録]をノートに記入して、ここにいる目的がないシャルルは地上へのリフトを探し始めた。

「えっと、今がこの辺りだから1番近いリフトでもちょっと歩かないとなぁ…」

地図を指でなぞりながらダンジョン内のリフト位置を確認して、小さな歩幅で歩いた。


リフトとは、地上とダンジョン内を繋げる滑車のような物で、ダンジョン内に点々とある。

巨大な鳥籠のような物に入って、上に引っ張られる感覚は上級探検家も慣れない程だ。


地上から届く日光で身長ほどの高さまで伸びた草をかき分け進んでいくと、1匹のうさぎ型生物がいた。フォルムは、雪で作ったうさぎのような丸っこい感じ。耳はピンと張られており、その木の実のような赤い目が特徴だ。

「むきゅう?」

「おっ、この子は確か……」

この生物ダンジョンの記録に載ってあったはずだ。

そんなシャルルを置いて、うさぎ型生物は草むらの奥へと進んでいってしまった。

可愛い物に目がないシャルルは無論、それについて行く他ない。

「ちょ、ちょっと待って!」

そう呼びかけるも、うさぎ型生物は止まらない。

手に収まる程の大きさのそれは、手慣れた…いや、進み慣れた足取りでどんどんダンジョンの端へ進んでいく。

ダンジョンは内側に進むのは危険だが、外側に進んでいくのも危険だ。内側には、深さ40kmを超える穴に真っ逆さまというリスクがあり、外側には穴に落ちないよう離れている生物が沢山いる。生物が沢山いる=その階層のいわゆる[ボス]と呼ばれる生物も存在するわけで、それは中級探検家でも第1層のボスに苦戦するほどだ。

「もっきゅ、もっきゅぅ」

岩山が近くなってきた辺りで、突然うさぎ型生物はピタリと止まって、元気よく跳ねた。

「ここに…何かあるの?」

うさぎ型生物 (以下うさぎ) が示す方向には謎の緑色で書かれたサークルしか無かった。

岩山に書かれた不気味なサークルは、何故かシャルルの本能に危険の指示を出させる。

「もきゅ、むぅ!」

「うわぁ!?…あ、」

いつの間にかうさぎ後ろを取られていたシャルルは、うさぎに突進をされて身体が前に押された。そして同時にサークルの中心にあった石板型スイッチも押してしまった。

その途端、地震のような揺れが辺りに広がりシャルルは思わず目を閉じた。


数秒後、恐る恐る目を開けるとそこには


_____ボスの生息地とされる場所へ続く通路が岩山の切れ目から顔を出していた。

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