第1部 魔王討伐世界救済編 6章

6章

「一晩銅貨二人で4枚だね。」

とりあえず俺たちは町の一番安いと評判の宿屋に泊まることにした。

「う~ん…、確かに安いからあまり文句は言えないなぁ…」

部屋を見るなりとても殺風景な造りで正面に窓があり、その量端にベッドが2つある感じだ。

それ以外は特に何もない。


「とりあえず俺は先に寝るわ、ジルドお前はどうする?」

「俺は先に飯食うかな? 昨日からまともなもの食べれてないし…。」

「そか、あまり食い過ぎて無駄遣いするなよ。」

ドンガを離れる際、シスタービエラが俺たち二人に餞別として銅貨50枚をくれた。

みんなが俺たち二人にサラを救って欲しいと願いを込めて送ってくれた大切なお金だ、そんな粗末に扱ってしまったらバチが当たってしまう。


ブノールは小さいながらもさすがは町だと思う、ここは俺たちの村ドンガとムシュバルト王国の間に位置し王国の市場などの商品がこのブノールに中継役として栄えているのだ。


「はぁ~、やっぱりドンガとは違って人も多いなぁ…ん?」

町の中を少しばかり散策しているとどこからか空腹には刺激的ないい香りがしてきた、その匂いに誘われるかのように俺は匂いの元へと足を運んだ。


「ここだ……、でもここって…??」

辿り着いたそこは飯酒場と言うにはあまりにも不似合いな占い師の館だった。


「ロジールの占い館って、なんでこんな場所から飯の匂いが…?」

「あぁー、そこにはあんまり関わんないほうがいいよ兄ちゃん、詐欺師の婆さんがいるからよ。」

通りすがりの通行人に注意を受け特に用もあるわけではないので俺もその場を後に立ち去ろうとした瞬間、


ー おいで、今ワシがお前さんを呼んだんだよ…。 ー

「えっ!? 今誰かに…??」

どうやら匂いでかも知れないけど、俺はその詐欺師婆さんに呼び出されてここに来たのかもしれないな。


俺は恐る恐る館の重厚な扉を開き暗く細い廊下の先に見える一点の明かりを目指して歩み始めた。


「あのぉ~…どなたかぁ……、いないかぁ…。」

不安になる足取りを一歩ずつ進んでいくとようやく明るい部屋へ辿り着いた。

部屋の真ん中にはいかにも胡散臭そうな老婆が水晶を乗せた机の前に座っていた。


「おぉ…やっと来おったか…運命に翻弄される若造よ…。」

「なっ、何だよ…急に?」

入ってくるや否やよくわからない言葉で迎えられた。


「お主が来たという事は時が満ちてきたのだな…、娘を救いたいのであろう?」


!? なんでこの婆さん俺たちの目的を知っているんだ!?


「婆さん! 何か知っているのか!?」

「ホッホッホ…、あぁ大切な娘が魔界の呪術で眠らされたのであろう?」

「教えてくれ!! サラはっ…! その娘はどうすれば助けられるんだ!?」

「まぁ待て…それより腹も空かせているのあろう? これでも食べながらゆっくり聞かせてやろう…。」


そう言うと占い師の婆さんは裏方の部屋へと入り何か仕度をして戻ってき。

そこにはまぁなんということか鼻から芳ばしいスパイスの香りを出し肉汁溢れんばかりの鉄板に空腹だった俺にあまりにも豪勢かつ豪快な肉料理を振る舞ってくれた。


「婆さん! これマジで旨いぜ!!! これどうしたらこんな旨い料理作れるんだ!!」

と初対面の人に偉そうに問いかけた。


「ほっほっほ…旨いか。 それは喜ばしいことじゃ…。それは魔獣のテールステーキじゃ。」


………?? 魔獣の…???


「うぇぇ!!! ババアなんてもん食わせんだよ!!」

「ほっほっほ、じゃがお前さんそれはそれは旨そうに食うておったじゃろう?」


「ん? まぁそうだけどよ…。」 もぐもぐ…、

そう言いながら俺はまたフォークを持って食していた。

「…やはりのぉ…。」


ん? 婆さん何か言ったか?


「さて、本題に入るかのぉ…。」

そうこう話してるうちにやっと会話が進んだ。


「まず、娘はこのままだと永遠に目覚めない…。」

!? 「待てよ!! どう言うことだよ!!?」

「まぁ、最後まで聞きなさい…、娘は以前の魔獣の襲撃により心の方に魔界の障気に触れてしまいそのまま呪術に掛かってしまった。」


なんかよく分からん…。


「魔界の呪術を解くにはその根元である主、魔王を討たねばならん…。」

「と言うことは魔王を倒せばサラは元に戻るってことだな!」

「左様…。 それしか方法はない。」


魔王を倒す…、それってまるでおとぎ話の世界じゃねーか…。

「でもよ、婆さん魔王ってどこに行けば会えるんだ? 場所も、それこそ俺らに倒せる自信が無いよ…。」

「王国に向かうと良い…、今魔王が勢力を増しその影響で聖界に潜む魔界の住人が暴走を起こしている。 王国軍がそれを防衛するため行動を始めている。」

「俺らに王国騎士団に入れって事か?」

「それが正解とは言わんが、少しでも道は近くなるぞ…。」


……。

「婆さん、あんがとな。 何をすべきか少しは分かったよ、ご馳走さん。」

「待たれよ…。」

「どうした婆さん? まだなにかあるか??」

「情報料と食事代、合わせて銅貨15枚じゃ…。」


この婆さん、なかなかのやり手だな…。

泣く泣く俺は財布の紐を緩め勝手に飯を出し勝手に喋りだしたこの婆さんに銅貨15枚を渡しその場を後にした。





「遂にここまで来たのだな…。全て動き出す…運命に翻弄される若造よ……。」

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勇者になれない俺は魔王に方向転換して世界を救う!? 白陽麗聞 @rebn283

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