ラノベのそれっぽいOP
弱腰ペンギン
ボロアパート、二階、四畳半
窓の外から冬の曲が流れている。
繁華街にあるボロアパートの二階は今日も寒い。
窓の外から漏れてくる光がチカチカする。
雪の切なさを歌った曲が終わると、恋人たちの歌に変わった。
もう一度会えたらとか、君の姿を探してしまうとかそんな切ない歌。
いなくなった恋人の影を追って、いろんな街に行って視線をさまよわせる男の悲しさは、よくわかる。
いい加減立たなきゃ。そう思うが力が入らない。
すっかり熱の失われた缶コーヒーを飲む。
飲めもしないブラックなんか買ってきたのを後悔しながらため息をつく。
「いつまでそうしているつもり?」
子供のような幼い声が聞こえた。
「知らんし」
「しょうがないじゃない。死んじゃったんだから」
「それ以上言ったら叩く」
おお怖いと、ピコピコという足音を響かせながら声が遠のいていく。
窓の外ではネオンがうるさく輝いていた。ちょっと腹が立ったから割ってこようかなんて思っていると。
「はい、ジュース。甘党のくせにコーヒーなんて飲んでるんじゃないわよ」
二頭身の猫のぬいぐるみ、キノコがジュースを持ってきてくれた。
「やべぇ。やさしさに泣きそう」
「惚れるんじゃないわよ。あたしはあんたのママにはなれてもワイフにはなれないわ」
「どこの映画のセリフだコノヤロー」
「それだけ言えるようになれば平気ね。さぁ、今日も狩りに行くわよ」
そういうとキノコの体が光に包まれ、大きな鎌に変化した。そう、ちょうど死神のような。
「はい、あんたの仕事の復唱!」
「魂を狩ること。100狩れば人間として転生できる。狩る魂は悪人の魂」
「よくできました」
窓を開けると東京の濁った風が吹いた。くさい。
「行くわよ」
「あいよ」
窓から飛び出すと、腹いせにネオンの一つを壊していく。
高校二年の夏、俺が死んだあの日に転生するまであと90個。先は長そうだ。
ラノベのそれっぽいOP 弱腰ペンギン @kuwentorow
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