第二章 あっちのカズマ
第10話 細くなりたい
あっちの世界、カズマが来る前の世界を女神様は見て知っていた。その世界を見ていた女神アクアは言う。
「どうやら、向こうの物も持って来れる」
一同は、こっそりとその世界に行き問題が無いなら物品を購入してこようと言うことになった。
「だぁーって、女神様であるこの私が苦労をするって信じられないじゃ無い?みんなに笑顔を届けられなくなるって、それって女神不合格で失敗じゃない」
いつもの不平を口にする姿が仲間には目に浮かぶからだ。冒険よりも安全だと認識した彼女達は、変で無い格好を取材してからゆっくりとショッピングを楽しもうと言うことになったのだった、
女三人でのショッピングなんて楽して良い物手に入れてしまえ。と言う訳で建物限定で入ってしまい、お金を準備し、変装用衣服を着て、突入したのだった。
興味はそれぞれ違い、バラバラに入って建物の中で会う事なくバラバラに帰って来た。前段階にそれがある。
予算を持って、誰かが着ていたものと同じ物を着て大体似た感じに仕上げたはずだった。
メンバーは、アクア、ダクネス、めぐみんの三人であり、今目の前で起きている問題はその後日談だ。
あの日以来ひ弱そうにしているダクネスを見かねて遂にアクアが捜査に乗り出した。床に転がっているスキニージーンズを指して言った。
「だからそれだっ!」
「うおっ」
女神の怒号と叱責がダクネスに飛び、どうやら問題が起きたことを示していた。
「遠くが良く見えるために、例えばだけど。メガネを試すのでは無かったの?」
「それでは、決意は揺るがぬっ!」
彼女達は異世界体験の結果、何ともちぐはぐな会話が飛び交っている。
それを見るめぐみんは、五個入りセットのプリンを三個買ってその日の内に食べ切ってしまったその記憶を思い出しながら、もう一度味わっている気分だった。
「いいこと、こう言うのにはプリンが一番いいの」
こう、イライラしたアクアに叱られた後だった。
「異世界から返品ってできるでしょうかー」
その彼女の、この一言から事件捜査は始まった。アクアが指したのは床に転がるスキニージーンズの事で、ダクネスが買って来たものだった。
めぐみんはが冷静にしているのには理由がある。アクアに彼女は言った。
「何があったのよ?なんてよく聞き出しましたね」
「ええまあ当然よ」
アクアは、髪を触りながら答える。
問題を起こしたダクネスがシブシブ自白した内容はこうだった。
食べるのは嫌いでは無い。意識が朦朧として来たが慣れない事をやっているからだ。
「好きにしてっ。いや、これはジャージぐらいだと言っていた」
延々と理想的な状態を描いていると騒動の中心の彼女は言う。
カズマの元いた世界自分はこうだった。
感動的な製品がある。「好きにしてズタボロにして」と本来の字とは別のものに最早読めてしまっている変装姿のダクネスの姿があった。
「ちょっと」
この一言で、普段は慎み深いはずの自分が抑え切れない情動で一杯だった。ダクネスはこの事を感じながら禁断の領域に手を伸ばす。
「スキニージーンズですねー。いいですよー」
女性店員から声を返される。
言ってはならないが脳内はこれで一杯だった。
「好きにしていいっ、!ああっ!麗しのズタボロ」
日頃考えている事がルーチンとして視界に影響し製品を手に取り喜ぶ姿として出てしまった。事情が事情だけに当然だったが、店員は鋭く見逃さなかった。
「着なれると、ジャージみたいなもんですよ?なんなら試して行かれますか?」
自分で目よりも高いくらいの位置に製品を手に取り、持ち上げスキニージーンズを見て瞳を潤ませている様な客を店員は逃すはずもない。
「いや、失敗するとどうなるんでしょうか?」
「サイズが合わないと、動きにくくなるだけで最悪、ウエストさえ合っていれば大丈夫ですよ?」
奇跡的に1サイズ下の細いスキニージーンズのグレーを手に持っていて鎧などの事もありサイズ感には詳しかった。それも有って無事に購入した。その際こう言った。
「このままで、お願いします」
念には念を押してバレない様にした。
早速、帰って来て履いてみたら予定通りウエストが細く、少々苦しい思いをするが拘束具の様に動けない。趣味の領域の通りでこれでは、敵の前で動けない姿を晒すにはいいが、そのままではダメで、敵と戦うところまで歩いて行けない。移動ができないのだ。
剣を振るうには、しっかりと大地を踏みしめる事が大事だ。思ったよりも足が太くなっていた。
自室で着用してみてこのことに気付いた。
少々、男装に近い挑発的行為とも取れる服装は、彼女に断食を決意させた。何がなんでも戦場に着て行き、パーティーに勇気を与えるためだと言えば、趣味である変態的被虐嗜好の欲望を満たすこと以外は通るだろう。
ウエスト部分の上に肉が乗る。不様な鍛えて無い姿をみっともないと晒すのでは無い。しかし、これも嗜好が満たせる感じに酔う大事な部分だった。
動けないものは何もできない。しばらく、実態は大いにその状態を楽しんだが、寝転んだまま何も出来ないのが正直なところだった。
よって、彼女は決意した。
「ダイエットを決行しよう。最速は断食だ」
この責苦はなどと、脳内は妄想とハレンチで一杯だ。
クッションの上に正座するダクネス相手にアクアは言った。
「どうやったら食べるのよー?」
常軌を逸した彼女の食事拒否に女神であるアクアが注意し出したのがそもそもの流れにあり、こんなもん治してやると治癒魔法を構えたが一向に、単なる決意の前には効かないのが目に浮かぶ。
食べない事に慣れると食べる事に拒絶感が出て来て益々、ダイエットは加速する。禁止を言い渡すどころでは無い危険な領域だ。
しかし、あまり考えないアクアはプリンが正解だと思い込んだ。これも目の前にあったものだ。
「いい事?女神の世界にはプリンなんて、そんな物沢山あるの。悪を粉砕するゴッドブローで改心させてもいいんだけど」
「いいや、私はこの独特の苦しみを乗り越えれば皆に挑発的な姿だと罵られる事ができ……」
「いやー、その美味しいですよ」
メテオボルケーノカラメルだとか、超新鮮ホワイトミルクなどの文字が最早空のパッケージに並ぶ。
「は?」
ダクネスは確かに誘惑に負けた気分だった。死ぬほどプリンが食べたいと思った。
「美味しいですよ。プリン」
めぐみんの方を振り向くのに半泣きの姿だった。
「これ何言っても無駄だわ。女神様って、右ストレートがか弱いの。はっきり言って、守ってもらわなきゃ行けないの。そんな異常認めません!ゴッドブロー!」
アクアは、得意の治癒系の魔法を使って彼女を治すのが適切だと思った。
正常な状態になればお腹が空いて詫びるに決まっている。しかし、一発殴ってからでいいだろう。なんかむかつく。
その時、自分の右ストレートが弱いのが助かる。こう考えた。頬に当たったが姿勢が変わる事は無い。
「満足です」
空腹と言うやつは逃げる事も考える事もまともに出来ず、仲間からの心配をもろに受ける形となった。派手な割に火力は弱いゴッドブローが炸裂した。
クッションの上に正座していたダクネスは仲間からの思いを受け取った。
「プリン作ってあげるから」
アクアはダクネスの顔を覗き込み言った。原材料が同じなら、火力の問題でしか調理の問題は基本的には存在しない。
ダクネスは、首を縦に振り頷く。空腹の地獄から解放されるためだ。
アクアは冷却どうしようと思いながら、「冷たくならないから」とは、女神らしく言わなかった。
「私もお願いしますー」
めぐみんがこう言った所で騒動の終わりを迎えた。
修羅場は訪れることはなく、いつものようにのんびりとした状態だ。異世界体験に何を着て行ったかと言う話になる。アクアは、「ハンチングキャップと黒ズボンに厚手の紺のシャツ姿」と答え、「ブラウンのスカートと黒色Tシャツにタグの無い建物の近くで見かけた完全同型暗色のコート」と言い切った。
アクアはダクネスに言った。しっかりと彼女も答える。
「何着て行ったのよ?」
「黒のOL服」
しかし、俺を連れて行け ディージィーアール @DGR
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