第3話 現状確認
目の前でいとも簡単にゴブリンを倒す彼女を見て悠気は思わず声が漏れた。
「つ、つよい…」
ゴブリンを一撃で倒した彼女はゴブリンの亡骸に近づいていき帽子を手にとる。そしてこちらへと向かってきて彼女は帽子を悠気に手渡してこう言った。
「はい、これ。あなたのでしょ」
「え、いや、、、これは俺のじゃ…」
そう言おうとしたが彼女はまたもゴブリンの亡骸のところに行って、ゴブリンを観察しながら独り言をつぶやいている。。
「大型の魔物に仕えているゴブリンかしら」
「それにしては一匹で行動しているとは珍しいわね」
「とにかく早く大型魔物を見つけないと」
なにやらぶつぶつと言いながら考えている彼女の姿を見て悠気は警戒心を強めたが、ゴブリンではない人にようやく会えた嬉しさが勝り悠気は彼女に聞いた。
「あの、ここはどこですか」
彼女はこちらを向いて言った。
「ここはアルトラゴの森。あら、よく見たらあなた怪我してるじゃない」
よく見ると悠気の足からは血が出ていた。ゴブリンに襲われた時に木かなにかで怪我したみたいだ。
「このぐらい大した怪我じゃないです」
そう言ったが意識すると痛みが出てきた。悠気は顔をゆがめる。
痛がっている悠気の姿を見た彼女は言った。
「治療しなくてはいけないわね。メイ!こっちよ。早く来て」
彼女の声に反応したのか遠くから物音が聞こえる。物音は段々と近づいてきて、俺と彼女の前に姿を現した、と同時に現れた人は彼女に詰め寄った。
「ヨシノあんたね!急に走り出したら見失うでしょ。探すのも大変なんだからね」
「ああ、メイ、すまない。しかし助けを求める声が聞こえたからには早く行かねばならない」
姿を現したメイと呼ばれている彼女は俺より少し背が低いだろうか。背中には弓を背負っていて、腰には筒を身につけており、矢が数本入っていた。
メイが言った。
「まったく。それで。この男は?」
「ああ、この男性がゴブリンに襲われていてな」
「ふーん。あの小型のゴブリンにね」
メイは俺のことをじろじろと観察している。
「あなた、どうしてこんな森の奥にいるのよ」
「それが…気づいたら森にいて…」
「気づいたら森に? ゴブリンに襲われて記憶がどうにかなった?」
メイの言葉遣いはどこか荒かった。
悠気は二人について質問した。
「すいません、お二人はいったい…?」
長い髪の女が言った。
「ああ、自己紹介がまだだったね。私はヨシノ。王国騎士だ」
続けてメイが言った。
「私はメイ。ヨシノと同じ王国騎士」
「ヨシノさんにメイさん。あの、助けていただきありがとうございます」
ヨシノは言った。
「いや、王国騎士として民を守るのは当然。そうだメイ、この男性足を怪我しているんだ。治してあげてくれ」
「まったく、しょうがないわね。ほら、足を出しなさい」
悠気はメイに向かって足を出す。
メイは俺の足に手をかざしながら言った。
「『萌黄の波長 ヒール』」
萌黄色の光が俺の足を包み込み、あっという間に傷口はふさがり、痛みもおさまった。
「え、これはいったい…? 何が起きたんだ?」
「ただのヒールじゃない。何驚いてんのよ」
悠気はメイのヒールという言葉に疑問しか浮かばなかったが、さっきヨシノが言っていた森の名前、アルトラゴの森も聞いたことのない名前だったと振り返る。そして極めつけはあのゴブリン。悠気は現実世界で見たことがない生き物だ。つまり答えは一つしかない。
「異世界転移したみたいだ」
異世界に飛ばされたぼくは君を守りたいと願う 色月はじめ @iroduki1
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