❷ 水晶の部屋で
「部屋を変えるわよ」
部屋に入った女はそう言うと、此方に近づいた。
念のためだろうか、
手首の辺りをカチリと
手錠をかけられてから、鎖から解き放たれた。
しかし直ぐに手枷を付けられて目隠しもされた。
見えないので、
手を繋がれて、女のなすがまま歩く。
部屋を出て、階段を降りて行く。
女が、ズンズンと早足で進んでいくので、
私は転ばずに歩くのがやっとだ。
どのくらい歩いたのだろうか。
「着いたわよ」
と、扉の開く音がして、私達は中に入った。
◇
部屋の中の少し進んだ所で、
目隠しを外された。
私は部屋を見渡す。
その部屋は、
水晶の玉が部屋の奥と左右に
びっしりと置かれていた。
ふと見ると、
女はコツコツと歩いて、
水晶の一つに手を置いた。
すると、水晶の中からユラユラと、
何かもやの様なものが、女の手のひらに
移って行った。
「さあ、いくわよ」
と、女が手のひらを此方に向けて、向かってきた。
私が身体を捻ってギリギリ躱すと、
「こら、躱すな」
と、無茶な事を言って私の足を払った。
私の身体がドスンと、倒れる。
それを見て女は手を翳しながら近づいてくる。
女の手のひらが私の腕を掴んだ。
ジュウジュウと嫌な音がした。
見ると、掴んだ腕から煙が出ていた。
「いぎゃぁぁぁぁあぁあぁあ!」
強い痛みと、意識が遠くなるを繰り返して、
私は顔を上げた。
女は、真顔でこちらを見下ろしている。
「大丈夫な様ね。次いくわよ」
先程とは別の水晶に手を伸ばした。
するとさっきと同じ様に水晶から何かが女の手のひらに移った。
「今度は避けないでね、手元が狂うと危ないから」
女が近づいてくる。
気のせいか女の手がブレている様に見えた。
その手を避けようとした時、
「ぎがががぁぁぁっっっ!、」
躱した筈なのに肩から大きな傷の裂け目が出来ていて、そこから血が噴水の様にビューッビューッと流れ出ている。
「ひいいぃいいぃぃぃぃっ」
と私は女から距離を取ろうとした。
が、震えながら這いずり回ることしか出来なくて、直ぐに捕まってしまった。
「あああ……」
意識が遠のく。
すると女は、最初に触れた水晶にまた手をかざす。
そして私の、勢いよく血が吹き出している部分に手をあてた。
ジュュュゥゥゥゥ、
「いじじじいいぃぃっっ!!」
熱いのと痛いので意識が飛びそうだ。
しかしそうなったらこの女に何をされるかたまった物じゃ無いと必死で我慢する。
出血が止まっていた。
怖々見ると、傷口が焼かれた様になっていて、それで血が止まった様だった。
女はポツリと、
「出血に対する応急処置をしただけでなんだけどね。まぁ先は長いしもう少しやるわよ」
と呟いた。
……。
…。
そして。
吹雪。
釘。
圧縮。
などなど。
その後も女は色々な水晶に手をかざして、私に様々な拷問を与え続けた。
私の意識は段々と薄れていった。
◇
気が付いたら、いつもの部屋に戻っていた。
「あぶっ、ぶっぶっ、」
回復風呂の中で意識を取り戻した私は、
咳き込みながら水面の上に顔を出して呼吸をする。
「げほっげほげほっ」
喉につっかえた水を何とか吐き出すと、回復風呂から出た。
鎖に両手が又繋がれ直されていた。
身体を見る。
やはりと言うか、あれだけ痛めつけられた傷が無くなっていた。
「……。」
ただ、一筋の光は見えた気がした。
でも、何か対策をしていたらアウトだけれど。
硬いパンを齧りながら、ポツリと思う。
次こそはしっかりしないと。
そう思いながら。
食事を終え、今はただ眠りについた。
◾️◾️続く◾️◾️
囚われの私とあなたの事 紅鶴蒼桜 @MariRube
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