囚われの私とあなたの事

紅鶴蒼桜

❶ 牢獄の中の私

ここに連れてこられてどれ位たったのだろう。


薄暗い部屋。

湿った空気。

食事は硬いパンの切り身とシチューのみ。

それでも良い方だ。

たまに忘れている時もあった位だ。


私の名前はエルシイ。


街で買い物をしていた時に、

頭から布を被せられて、

連れ去られたのだ。



ふと、窓を見る。


窓はかなり上の方にあるのであたまを上げなければならないが、

このまま薄暗い部屋を見るのよりはずっといい。


窓の外では、鳥達が優雅に舞っていた。


私も鳥になれたならな。

ふと思った。

……。



「食事だ」


声がすると、

扉の下側からトレイを入れてくる。


また、いつもと変わらず。

硬いパンとシチュー。


しかし、お腹が減っていたので、

パクパクと、一生懸命食べる。


食べ終えた後は、

暇を持て余す様に窓の外を見る。

相変わらず鳥達は楽しそうに飛んでいた。


しばらく眺めていると、

部屋の扉が開いた。


コツコツと、誰かが部屋の中に入って来た。


こちら側からは、逆光で、シルエットしか

分からないが、女性だ。


まぁいつも、入って来るのは

同じ人だからだという事もある。


また、この時間かやってきたのか。

私はウンザリとした。



女は何かを唱えている。

私はぶん殴りたい衝動に駆られたが、

鎖で繋がれていて女の場所まで届かない。


女は詠唱が終わったようだ。

私は体を強張らせた。


女が近づいてくる。

そして女の掌が私の身体に触れた直後。


「あばばばば、ばばば、ばばば」


電流を流し込まれたみたいに

私の身体は痙攣をおこした。


それを何度も何度も繰り返す。


ゼェゼェと、息絶え絶えになりながらも

女を睨み付ける。


女は顔色を変えずに、

ただこちらを見ていた。


何回も、何回も、痙攣を起こして

息も絶え絶えになった私を、

鎖に繋いだまま、


直ぐ側の緑色に濁った液体が入っている、

風呂ぐらいの大きさの入れ物に突き落とされた。


これは回復薬らしい。

痛みが引いてゆく。


「ほら、まだまだ始まったばかりだよ」

と、女が、私のかみを掴んで回復風呂から

引きずり出す。


そしてまた、拷問が始まる。


終わったのは夕方頃。

何故分かったかというと、

あの上の窓から、オレンジ色の空が見えたからだ。


「家に帰りたい」

弱々しく呟くが、返ってくるのは何もない。

何とかしないとと思うが、

あるのは、簡易トイレとベッド、回復薬の風呂だけ。

更にいえば、鎖で両腕を繋がれている。


(そういえば、あの回復薬、レオニート製の回復薬の味がしたな)


製薬会社レオニートといえば、薬品系の大手だ。回復薬から毒薬まで様々な薬を作っている。


確か社長は、自分が作っている薬で、年も取らないという噂があった様な…。


あの女がそうか?

もしかしたら本で見る吸血鬼の様に、

若い女性の生き血を吸って若い体を維持しているとか…。


怖くなって身体をブルブルと振って意識を切り替えてる。


殺される前に何とかここから脱出しないと。



何日目かの夜が明けた。

いつも通り、朝ご飯がトレイに乗って

こちら側に入ってきた。


バクバクとガムシャラに食べる。

お腹が減っていたのだ。


小一時間ぐらい経っただろうか。

女が扉を開けて入って来た。


今日も苦痛の始まりだ。



◾️◾️続く◾️◾️

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