第105話 死者の呪詛


「ん……ぁは……にぃさん……っ!」

「あ……ぅん……おにぃさま……!」


 発情している二人だった。豊かな乳房を湯船に浮かべて、悦楽を貪る様に嬌声をあげる。普通に普通なメスブタです。


 湯船には四人。


 俺ことヨハネ。アリス。綾花。ついでに姫子。


「こんな感覚味わったらぁ……」

「どうしても我慢できませぇん」


 息も荒く、性欲で碧と蒼の瞳がギラギラと輝いた。


「却下」


 俺は襲いかかろうとするアリスと姫子を抑えた。事務は終わったので、二人に爆乳に突っ込んでいた手を引き戻す。その手で額を押さえたのだ。


「どうでしたか? わたくしのボインに手を突っ込んだ感想は?」

「柔らかかった」


 他に何を述べろと。


「お姉様以外ではお兄様が特別ですよ?」

「というか普通に死者の呪詛を解決できるのが俺しか居ないワケなんだが……」


 そういうことだ。姫子は一度殺された。俺の慈悲で甦り、結果心臓に呪詛を持つに至った。なのでアリスと同様に俺ことヨハネの治癒の聖術を必要とするのだ。


 ――ていうかやっぱり死んで生き返ると呪詛を持つのが普通なのか?


 ――それとも俺の異能の欠陥か?


 ――あるいは霊地の問題?


 なんともいえない感じですな。


「また厄介なことに」

「兄さん♪」

「お兄様♪」


 ルンと弾む二人のメスブタ。


「えと……その……ここで何某は……」

「するつもりは無いから大丈夫だ綾花」


 俺は額を押さえて掣肘している。


「そもそも姫子は二番手です。まず真っ先に兄さんに抱かれるのは私であるべきです」

「でしたらやはり何時もの様に言っておりますが3――」

「だらっしゃー!」


 ちょっと強めにチョップ。


「綾花も入れたら4――」

「チェストー!」


「「あうう……」」


 馬鹿な発言の代償に頭を押さえる馬鹿二人。


「せ……拙も……?」

「いや、気にしなくて良いから。コイツらの妄言を真に受けていると心を壊すぞ。こういうのは普通にスルーで良いんだよ」


「でもヨハネは……ツッコんだ……」

「検閲だ」


 魔法じゃないが、実質的には救い難い。とはいえ確かに、呪詛の取り除きにあたって性的興奮を覚えられたら、その内ジャガーが現われそうだ。もちろん負ける気はサラサラないが、相手方がコッチの異能の弱点に気付くかが問題……だよなぁ。


 いやまぁどちらも可愛い上に肉体も熟れているとなれば、優良物件ではあれども。


「それで協会の方はどうなった?」

「一応こっちでイニシアチブを……」


「血百合会は?」

「どうにもこうにも」


 規模が小さい分、フットワークが軽いらしい。やはり姫子狙いか。サードヴァンパイアって言ってたもんな。グランド、セカンドに続いて高位のヴァンパイア。


「お姉様ぁ……!」


 まぁその御本人はポンコツに過ぎるんだが。ソコを指摘しても糠に釘なので、ま、やりたいようにやらせよう。


 いや、貞操観念の話ではなく、ハンドフリーという意味で。


 血を吸うのも良いだろう。アリスはブラコン拗らせすぎて近しい人間が居ないから、吸血鬼はいい位置取りだ。


 ――人外ならまた別のコミュニケーションもあるだろうしな。


「血を吸わせてくださいまし」

「御飯食べたでしょう」

「血はまた別腹です」


 その理屈もようとわからんが。


「兄さん助けて」

「お前が何時も俺にやっていることだぞ?」


「私は良いんです」

「理由を聞こうか」


「兄さんと愛で結ばれております由」


 まぁ想像の範疇に収まるね。お前の言論は。光栄と取るところなのかも知れないが、口にも表情にも出してはやらない。


「まぁとにかく血くらい吸わせてやれ」

「流石ですお兄様」


 その発言も危なっかしいな。いや危惧のレベルで言えばアリスと同等値なのは分かっていはするも。


「これで立場はお姉様と一緒ですね」

「兄さんが生き返らせたりしますから……」


 しょうがないだろ。渡世に義理は憑き物だ。


 誤字でないので悪しからず。


「暑いでの服脱いで良いですか?」

「服着てないだろ」


「水着を」

「暑いなら風呂を上がれ」


 俺は引き戸を指差した。


「兄さんは私のおっぱいを見たくはありませんので?」

「精神衛生上な」


 倫理とかモラルと呼ばれるアレだ。もちろん本能に限って云えば超見たいのだが、そこはグッと堪えて我慢。


「お兄様はコレからもわたくしの呪詛を取り除いてくださるので?」

「お前が俺から離れない限りな」


 そこらへんが悩みどころでもあろう。別段何をでもないが。


 死者の呪詛が何をもたらすかは知っているが、それにしてもと述べたところ。


 根本的解決に、どう決着を付けるべきか?


 これがテーゼだろう。


「さてそうなると……」

「えと……」


 綾花に視線を振ると、オドオドし始めた。ぐうかわ。


「わたくしはお姉様のおっぱい見たいです!」

「揉まないでください! お兄様に許された聖域ですよ!」


 むしろお前の性癖だろ。


 ――手の掛かる妹は萌えポイントか否か?


 考えるに、ちょっと結論は性急にも出ない様子で。


「ぐへへ。お姉様~」

「やんのかこらあ」


 シュッシュッとシャドーボクシングをするアリス。一応魔術を使わない辺りで、良心は残っているらしい。姫子としてもソレは福音だろう。


「だからお姉様大好きです」

「兄さんは?」


「好きです」

「ではライバルですね」


「いえいえ、愛の並列化は有り得ます」


 多分有り得ないと思うぞ。口に出して指摘はしないも。


「私は兄さん至上主義者です!」


 偶像よめだしな。


「お姉様もお兄様も平等に愛して差し上げます!」


 ヒュッヒュッとシャドーボクシング。


「ヨハネは……それでいいの……?」


 コテンと首を傾げる綾花。


 サラサラの白髪。ルビーの瞳。なお水着姿は魅力的で、なおこっちに理解がある。


 やばい。惚れそう。その場合アリスと姫子が敵に回るが。


「いいわけあったら既にアリスは処女じゃない」

「えと……ヨハネは……童貞……?」


「うむ」

「そっかぁ……」


 なに納得したお前?

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兄さんは私の嫁 ~ちょっとエッチな妹は引きますか?~ 揚羽常時 @fightmind

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