つつみくん

カント

本編

 つつみくんは妖怪だ。


 最初の出会いは、僕が彼に包まれたこと。


「はい人間クリア~」


 剽軽な声の主は、浮遊する薄桃色の拳大マシュマロだった。


「いずれは地球を包むのさ」


「凄いや!」


 応援すると、嘯いた彼は朱に変色した。




 彼は度々、僕に会いに来た。


「今日は熊を包んだのさ」


「電波塔を包んだのさ」


 高一の頃、つつみくんは「次は山に挑戦なのさ」と言った。僕は拍手したが、ふと呟いた。


「包んだ国に、領空侵犯とか言われないかな」


 彼は青に変色した。




「そんな訳で、宇宙飛行士になって月に行きます。友達と」


「何言ってんだお前」


 進路指導室で先生が言った。僕は真顔で返した。


「最終目標は木星で」


 二人分の夢は大きいので、と僕は嘯いた。

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つつみくん カント @drawingwriting

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