第17話 涙の残響
「今回のことは、次から気をつけてくれたらいいよ。それに、最終的に口にするって判断をしたのは自分自身なんだ。イリアちゃんだけに責任があるわけじゃない。だから……そんなに落ち込まないで」
「シラナミ、アマネ……っ。ぐすっ……」
「ちょ、な、泣かないでっ……!? 本当、怒ったりとかしてないから。も、全然まったく、気にしてないし。ねっ」
気付けばイリアちゃんの目は、もうウルみにウルみまくってて。今にも雫がこぼれ落ちそう。
「そ、そうだっ! 今度はボクが、地球の美味しいもの食べさせてあげる! 地球の林檎に、地球の苺! きっと美味しいよ!」
「うう、ううううううっ」
ぼろり。決壊した。
フォローのつもりが、イリアちゃんの涙腺にトドメを刺してしまった。
ぽろぽろぽろ、ぽろぽろぽろ。こぼれたそばから、両手で必死に拭うけど。もう涙は気の毒なほどに、溢れて溢れて止まらないみたいだ。
「ヒック、ずび……! ゔん、食べるっ……。食べて、みたいな……! ずずっ。ワダシ、ワダジっ、ジラナミ、アマネに……出会えて、良がっだ……!」
「……うん」
出会えて良かった、か。
ちょっと大袈裟に聞こえる言葉だけれど、きっと本気でそう思ってくれてる。
この子は、本当に……優しくて、素直な子だ。
「ふふっ……よーし! それじゃあ、行こう! イリアちゃ────あぃだだだだだだぁっっっ!?!?!?」
「!? しっ、シラナミアマネっ!?」
「うぎぎぎぎぎっ……! う、動けなぃ……ひいぃ……?」
「っ……! そ、そうか! わかった! それは……その痛みは、『ドーピンガム』が原因だ!」
そういえば……噛んでたガムは味も無くなって、いつの間にやら溶けて消えてた。それって、つまり……?
「地球人には、効きすぎるんだ……! シラナミアマネのそれはおそらく、強すぎる筋力増強の負荷の反動による……重度の筋肉痛だっ! 味が無くなってガムの効果が切れたことで、溜まったダメージが一気に来てしまってるんだ!」
「いぎぃいいい……っ」
これ、筋肉痛……? すごいな、筋肉痛。筋肉を限界までイジメぬくと……こんな風になっちゃうのか……。
泣きそう。
「だめだ、もぉ……立ってられな…………」
「そんな……っ!? しっかりしてくれっ! シラナミ、アマネーーーーっっっっ!?!?」
アマネーっアマネーっアマネーーーっっっ…………(エコー)。
・
・
・
そこからしばらくの間、往来で悶え呻き転がり続けた私。
多分その様子は側から見たら明らかに異常で、いつ救急車とか呼ばれてもおかしくなかったように思う。
痛みがある程度落ち着いて、なんとか歩けるようになったころには……既に陽は、沈み始めてた。
半泣きになりながらも私の体をずっと支え続けてくれたイリアちゃんと、どうにかこうにか帰宅(UFO)して。そこから先は……意識が朦朧としてたから、あんまりよく憶えていない。
精神的にも肉体的にも疲労がピークになっていたのであろう私は、イリアちゃんに案内された一室のベッドに吸い込まれるよう倒れこんで、一瞬で意識を手放した。
──怒涛の様相を呈した、高校一年生最後の日。
それはここで、ようやくやっとの終わりを迎えて。
私の……。
人生を。運命を。大きく変える事になる──
春休みが、始まる。
婚活ウチューじん!! TH @thisanidiot
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