『千歳』についての備忘録かつあとがき。
にのまえ あきら
己の脳内を展き、公開するのはこれを見た誰かが未来で傑作を生み出してくれることを期待しているからにほかならない
なればこそ、自虐に陥る自分語りもしてみせよう。
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こんにちは、あるいはおはようございます、またはこんばんは。
にのまえ あきらです。
この『素知らぬ顔して何も言わないけど実は受賞するんじゃねって思ってしまっている千歳に関して綴る備忘録』は2020年4月1日の午前三時十五分頃に書き始めたものです。
そんな名前じゃない気もしますがまあ名前についてはどうだっていいのです。あとがき、備忘録であるということが分かればそれで。
先んじて注意をしておきますが、この備忘録はカクヨム短編コンテスト2019に応募した自作『千歳』について多大なネタバレを含んでいます。
この作品を見ているのは僕の知り合いか、酔狂な人か、暇でしかたない人か、酔狂かつ暇でしかたない僕の知り合いでしょうが、この先も読もうというのであればまず『千歳』を読んできてからにしてください。
『千歳』は僕のユーザーページの作品欄を追っていけばあるはずです。
そして作品について語る前に、少しこの備忘録自体について語らせてください。
作品自体は2月末の23:47くらいに公開したことを覚えているんですが、故あって備忘録の公開が一ヶ月遅れました。
おかげで千歳を書いていた一週間について書こうと思っていたのにあの一週間はもう記憶の彼方です。
覚えていることと言えば書きあがった直後、Discordで楽しく通話していた友人たちの元に突っ込んで「今書き上がったんですけど誤字ないかだけ確かめてくださいませんこと!?(お嬢さま)」って大声で頼み込んだこととその日の夜にたくさんの人に面白いと言ってもらえて嬉しくなったことと夜明けの空を眺めながら散歩して最後にブランコに乗って吐き出される白い息の軌跡をぼんやりと眺めて長編を完成させようと次への決意を固めたことくらいです。
なので『千歳を書くに至るまでの経緯を綴る』備忘録ではなく、『本作を作る際に影響を受けたであろう作品についてのんべんだらりと綴ったもの』に変更します。他にはなにか思いついたことや思ったことなど書いていこうと思います。
まず『千歳』を書こうということになった経緯から。
『千歳』を書く前に、僕はカクヨムコンに『家族になった日』という百合短編を送っていました。
一万文字以内という制限があるにも関わらず一月一日から書き始めて一月二十五日に投稿しました。この圧倒的な筆の遅さは他の追随を許さない。
けれどもなんとか投稿し終わり、速攻でレビューをつけてくださった某草の方に感謝しつつ一息つきながら作品一覧を眺めていたところ、下書き【KAC2】というものが目に留まりました。
ふと「これを終わらせてみるのも面白いかもしれない」と思いました。
というのもKACは4000文字上限のお題に対し、この作品は3800文字で止まっていたのです。
それはお題『二番目』に際して、いつも一番だった少女と彼女の後についてまわった二番目の少年のお話。
ただ一つだけ、彼女が人生を懸けたピアノだけは、彼が一番だった。
コンペティションでは絶対に彼が金賞で、彼女が銀賞。
彼女が賞を取れない時も、彼だけは絶対に金賞だった。
そして彼女が次こそは金賞を取る、と意気込んだ年、彼は不治の病に罹りピアノが引けなくなる運命に。
というようなお話だったと思います。
これを当時の僕はどうやって4000文字でケリつけようとしていたのか甚だ疑問なんですがケリつけられなかったから3800で止まっていたのでしょう。
なので10000文字ならまあケリつけられるだろうし、感情の丈と設定的には悪くないやろと思いその作品を供養とした時、千歳の大筋が思い浮かび、「これはいける、やろう」と書きました。
そうして25日に書き始め、31日に出来上がりました。
『家族になった日』が25日もかかったのに『千歳』が6日でできたというのは何事かと言いますと31日がカクヨムコンの応募締め切りだったからです。
締め切りとは人類に残された最後の切り札である、と強く思います。
そして以下は影響(と自覚している)を受けた作品です。
・飛浩隆『自生の夢』収録作第一篇『海の指』
・同収録作第七篇『はるかなひびき』
・庵野秀明『エヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
・宮崎駿『猫の恩返し』
・めがわるいあきら『メル、愛してる』
・大久保篤『炎炎ノ消防隊』
・月見秋水『世界一可愛い娘が会いに来ましたよ!』
・VTuber『久遠千歳』
・人魚姫、およびsasakure.UK–『深海のリトルクライ』
・Deemo『Oceanus』
・SDVX『I'm so happy(Happy Hoppin Remix )』
特に『自生の夢』の『海の指』。
これは自分なりの『海の指』を書きたい、書こうというところが出発点なので(正しくはピアノが絡む話として真っ先に思いついたのが『海の指』だった)本当にこの作品ありきの『千歳』です。
『自生の夢』は傑作しかないSF短編集なのでみなさんぜひ買って読んでください。同作者の『零號琴』という作品もオススメしておきます。
その他それぞれについて言及していくと、
『はるかなひびき』は読んでいた時の情景、ないし光のレイヤーの感じや僕と彼女の会話の柔らかさ、慈しみが作品を作る上での参考になっています。
『エヴァQ』は見たことある皆さんならご存知カヲルくんとシンジくんのピアノデュオシーン。ただQだったかどうか確証がないのでQじゃねーよハゲって場合は一報ください。泣きながら全部見直します。もうすぐ最新作出るみたいですし。
『猫の恩返し』は主人公が人間の世界へ帰るために登っていった塔が崩れるシーンを参考にしています。
塔が全部崩れた後、残った最上階の部分が僕には真なる姿が出現したように思えて仕方なかったのです。周りに瓦礫が散っている様もまさにそのままです。
『メル、愛してる』は自分で書いた作品です。カクヨムにあります。両方読んでもらえればわかると思いますが、作品の構造は大方同じです。秘密を抱えた相手に対し、自分が寄り添っていき、また相手も応えようとする。けれど間に阻むものがあり、自分はその障壁を超えるべく覚悟を決めて旅に出る。そんな感じ。
言葉を付け足すなら『メル、愛してる』はいい男の話で『千歳』はいい女の話です。
哲学にとても詳しい僕の作品を読んでくださった知り合いさんによると、両作品ともにアニムス、アニマの話であるそうです。(アニマとは世界霊魂である。『メル、愛してる』では浜辺で男はしばしば得難い伴侶を得る、が該当し、『千歳』は千歳がもう世界霊魂そのものであり、アニマ足り得る)
『あなたには真なる物語を描く力がある』と仰ってくださってとても嬉しかったです。
『炎炎ノ消防隊』は悠久式エネルギー生産施設群の概念を久遠式火力発電〈天照〉から参考にしています。天照も真っ白でとても大きな施設です。話もとても面白くアニメの作画すごく良いし一期OPを歌っているミセスグリーンアップルの『Inferno』が名曲of名曲なのでぜひ聞いてみてください。
『せかむす』に関してはどこがどう、というよりこの作品の台詞回しとキャラ付けが上手すぎて自分のキャラ作りにおいて大いに刺激をもらっている、という意味で参考にさせてもらってます。作者の脳みそどうなってんのってくらい上手いセリフの応酬なので読んでない方はぜひ読んでみてください。
『久遠千歳』見た目と名前と雰囲気。以上。彼女はすでに引退してしまっているのでもう追えないのが少し寂しいです。あと、深い意味はないんですがDUSTCELLという方がとても良い声で歌っています。
『人魚姫』はラストシーンの0と1になって消えるシーンですね。最後に泡となって消えてしまうあの結末は子ども心に衝撃を刻まれました。軽くトラウマ。もうリトルマーメイド見てないです。あれは別に消えないけど。泡となって消える情景はあまりに綺麗で、残酷で、綺麗だからこそ残酷で、彼女が千の欠片となって消えるシーンはもうそれしか出てきませんでした。みんなも綺麗で辛い話をもっと摂取していこう。
『Oceanus』はピアノ曲で真っ先に浮かんだのがこれでした。 cosmo暴走P、名曲しか書かない。あの街は潮騒が聞こえるわけではないのですし、彼らが弾いた曲はきっと違うものですが、これも綺麗な曲なのでぜひ聞いてみてください。youtubeに転がってます。
『I'm so happy(Happy Hoppin Remix )』は千歳を書き始めたばかりの時にフォロワーさんとツイッターでお話しして音ゲーの曲をyoutubeで聞いているうちに見つけてすごく未来的な音で聴きながら作品を書いていました。
そして明確には書きませんが、千歳の【音が聞こえない世界】という設定は僕が尊敬していてすごい作品書く知り合いさんと知り合っていなければ絶対に生まれ出ていなかったので、ここに感謝の念を記しておきます。ラブコメ作品待ってます。
『千歳』についてはこんな感じかと思われます。
僕の信じる言葉に『一つの作品から参考にすればそれはただのパクリだが、百の作品から参考にすればそれはどんな作品よりも創造的だ』というものがあります。調べたらそれっぽい言葉出てくるかもしれないし細部が違うので出てこないかもしれない。
自分の中にあるもん吐き出していけば作品は作れるのかなあと思います。行動それ自体が自分の中にあるエネルギーを消費するということなので当たり前っちゃ当たり前なわけですが。
そして行動すれば腹が減るように、アウトプットするだけでは精神が摩耗するので好きな作品見返したりその期のアニメを見たりしましょう。僕はついに最終話までニコニコ動画で異種族レビュアーズを見てしまいました。コメントがなかったら多分見れてない。(後で見返したら4、5、6話見てませんでした訂正します)
題名にもあると思うんですが、これを書いたのはこれを読んだ誰かがすぐではなくとも何年後かあるいは何十年後かに傑作を世に解き放ってくれて巡り巡って僕がそれを読んでホクホクするかもしれないというただそれだけが理由です。だって時間経ちすぎて備忘録の意味を成していないからとかそんなことは言ってはいけない。
作品を作っている方でなくともこいつはこんな風に作品作ってたのかー、とか面白半分に知れる機会になるのでそれはそれで良いと思います。
あとがきにしては長く、備忘録にしては短いですが、こんな感じでゆるく終わろうと思います。
2020 4/1 6:23 ゲームの実況動画流していたらいつの間にか明けていた空を眺めながら
『千歳』についての備忘録かつあとがき。 にのまえ あきら @allforone012
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