捨てられた『聖女』を拾ったので、『魔女』は飼うことにした。
池中 織奈
捨てられた『聖女』を拾ったので、『魔女』は飼うことにした。
「あら、珍しいものが落ちてるわ」
私の名は、ファニー。
森に住む『魔女』だ。昔は……国に留まる事もあったけれど、色々あって今はのんびりとした生活を送っている。
私の住む森は、魔物や精霊が多く溢れる。
私はほら、天才的な才能を持つ『魔女』だから悠々と暮らすことが出来るけれど、普通の人だと此処にきたら死んじゃうの。だから死の森とか物騒な名でよばれてる。加えて私は悪い『魔女』認定されてるので、時々討伐隊とかくる。全部あしらうか殺しちゃってるけど。
まぁ、そんな私は見た目は美少女なので『魔女』だと名乗らない状況で街とか行くと街の人たちは結構色々めぐんでくれたりする。まぁ、私の方が凄い年上だけど。見た目は十代だからね。有効活用できるものはなんでも有効活用しないと。
さて、そんな私、精霊に人が倒れてるなんて言われて覗きにいったわけ。
この段階で私はその子の事を助ける気もなく、ただ覗き見しようとしていただけなんだけど。
覗いたらあら不思議、それはこの世界でも重要な『聖女』様だった。
ぶっちゃけ驚いた。
この世界、『聖女』という存在がいる。それは特別な力を持ち、神に愛されているとされている存在だ。
魔物が入ってこないように結解を張ったり、魔物が現れた時に浄化したり、傷ついた人を治したりと大忙しで、それはもう『魔女』である私と違って人々に好かれる存在である。
そんな存在なはずである『聖女』がボロボロで死の森にいるのは明らかにおかしい。しかも胸糞悪いことに、体を暴かれた痕跡がある。……どこの誰が、『聖女』なんて神聖な存在にそんなことをしたのだろうか。
……っていうのも気になるけど、それよりも私は倒れ伏している『聖女』を見てびびっときちゃった。
「なんて可愛いの!!」
『聖女』は確かにボロボロで、服も破かれていて、体を暴かれた跡もあって――だけど、『聖女』はとても綺麗だった。
美しい銀色の髪。乱暴されてボサボサだけど、それでも光り輝いている。
瞳は閉じていて瞳の色は見えないけれど……、どんな色をしているのかしら。
真っ白な肌は傷だらけで殴られた跡さえあるけれど、それでももちもちとしていた。
着ていた『聖女』としての真っ白な服は破られている。胸元がはだけていて、私のものよりも大きな胸が見える。
……綺麗で、可愛い。
まるでお人形さんみたい。
まだ、生きているのを確認する。
私はこの綺麗で可愛いお人形を飼おうと思った。
だって、落ちてたんだもの。そして私が拾ったのだもの。私のものってことでいいわよね?
ふふと思わず口から笑みが零れる。
もし誰かが取り返しに来たとしても帰してあげない。
もし『聖女』が嫌がったとしても無理やり飼ってあげる。
「『魔女』様笑顔が邪悪ー」
「ふふふ、なんとでもいいなさい!! この子は私が飼うのよ」
精霊に邪悪と呼ばれる笑みを浮かべながら私は『聖女』を持ち帰った。
*
「ファニー様、美味しいですか?」
「ええ。とっても美味しいわ」
さて、拾った『聖女』は私の所有物になったということで傷などは全部治しておいた。
私は『魔女』ということで、攻撃的な魔法や物騒な魔法の方が得意と思われがちだが、私はオールマイティなのだ。回復魔法も使いこなせるのだ。えっへん。
ちなみに一部ではそういう魔法は神官とかしか使えないとか言われてるけど、そんなことない。
私も昔、一度『聖女』に祭り上げられそうになったこともある。友人に押し付けて逃げたけど。懐かしいわねーと思いながら目の前の『聖女』を見る。
身なりを整えた『聖女』――オルタンシアはそれはもう美しかった。私のおさがりは胸の大きさから入らなかったのでわざわざ魔法で作成した。私の与えたドレスは良く似合ってる。
やはり、可愛い人形は着飾るに限る。ちなみに目の色は美しい青だった。なんて綺麗なのかしら!! って興奮した。
あとオルタンシアは逃げることも拒否することもなく、私に懐いている。帰ろうとしない所を見るによっぽどの事情があったのだろう。
まぁ、正直言ってどういう事情があろうとどうでもいい。可愛い人形を飼う事が出来るようになった結果だけで私は嬉しくて仕方がないのであとはどうでもいい。
っていうか、人形みたいなのに起きて動いてたらとっても可愛いの!!
例えば、撫でると目を細めて猫みたいに気持ちよさそうにするの。ああ、可愛い!!
「ファニー様……」
うるんだ目で見られると、女の子同士なのになんかきゅんきゅんしちゃうの!! 私の心は可愛いって気持ちでいっぱいになっているわ。
なんていうの、チューとかしちゃっていいのかしら?? 嫌がられるかしら? 可愛い人形に嫌われたらちょっと悲しいわ。なんて『魔女』らしくない思考をしてしまっている私。
「ねぇ、オルタンシア」
「なんですか、ファニー様」
「チューしていい?」
「……え?」
「チューしていい? オルタンシアが可愛いから」
「えっと……ファ、ファニー様になら構いません」
顔を真っ赤にしてそういったオルタンシアが可愛くて私はチューした。
それから私はよくオルタンシアにチューするようになった。額も頬も唇も柔らかいと私は上機嫌になるのだった。
――捨てられた『聖女』を拾ったので、『魔女』は飼うことにした。
(『魔女』は『聖女』を拾って、仲良く過ごす)
捨てられた『聖女』を拾ったので、『魔女』は飼うことにした。 池中 織奈 @orinaikenaka
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