ニッポンの素敵なお母さん

ネコ エレクトゥス

第1話

 先日図書館で香淳皇后の画集を見つけたので手に取ってみた。自然と芸術への深い愛情。生まれや育ちからくる洗練は言うまでもないのだが、何よりも愛情そのものといった絵を描く女性だった。僕ら一般人にとっては当然高貴なお方なのだが、現在の上皇であられる平成天皇にとってはまず優しいお母さんであり、現在の天皇陛下にとっては大好きなおばあちゃんだったのではないだろうか。


 昭和20年のあの敗戦によって昭和天皇がその「万世一系の…」としての役割を終えられた時、今まで表だったものが裏になり、裏だったものが表になった。そして香淳皇后のそのお人柄そのものが皇室のカラーになった。例えば僕らが現在の上皇様の特質と考えているあの優しさ。それは香淳皇后からそのまま受け継いでいるものに他ならない。美智子上皇后様がお妃に選ばれになったのも香淳皇后の面影を追われたと言ってもいいのかもしれない。そして美智子上皇后様も皇室を流れている香淳皇后のカラーによくご自分をお合わせになられた。その後香淳皇后のカラーは現在の天皇陛下や秋篠宮殿下、さらには秋篠宮殿下の二人の素敵なプリンセスにまで受け継がれている。勝手な想像なのかもしれないが同じ性質が未来の天皇陛下になられる悠仁様にも伝わっているのだろう。変な言い方かもしれないが香淳皇后のお好きだった自然に例えるなら香淳皇后が現在でも女王蜂の役割を果たしていらっしゃるということになるのだろう。ただ一人お気の毒なのが徹底したヨーロッパ的、アメリカ的な環境と教育でお育ちになったいわゆる現代っ子である現在の皇后雅子様なのだが、皇室が雅子様のカラーに合わせることがあるのだろうか。それとも雅子様が皇室のカラーに吸収されるのだろうか。個人的には香淳皇后のカラーがすぐに消えることはないんじゃないかと思う。


 天皇陛下がヨーロッパ的なキングとしての役目を終えられ象徴としての存在になったと言っても、その存在は言ってみれば見えない倫理規定として機能している。その在り方はメディアなどでの皇室報道などでも見て取れるように僕らの行動規範としての役割を求められているし、振り返って僕らもこのように行動しなけらばならないという一つの生き方の理想形ということになってくる。意外なところであのおばあちゃんが機能しているわけだ。もちろんそれが悪いというんじゃない。個人的には香淳皇后のあの絵は大好きだ。

 皆さんも機会があったら香淳皇后の絵を一度ご覧になっていただきたい。その後で例えば日本の女性が最近描く絵を見た時、いかに「ニッポンの優しいおばあちゃん」のカラーが僕らの世界に浸透しているかがわかると思う。



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ニッポンの素敵なお母さん ネコ エレクトゥス @katsumikun

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