第2話 文武両道

とある雪の朝、どこからか知らないが聞き覚えのある曲が聴こえてきた。全く音楽に興味のなかった私が知っているのだから、有名な曲だろう。その音は今までに聞いた事の無い楽器だった。その当時、名前を知っていた楽器はまだピアノくらいだったけど……。何故か知らないが私は器用にジャンバーと靴を身につけ、家を出てその音を追っていたらしい。母が言うには「いつの間にか居なくなっていたから怖かった」と言っていた。


私が初めて迷子になったのはその頃のこと。当時は隣町どころか他の国に来てしまったかのように感じた。しかし、移動した距離はせいぜい1キロ弱。人の勘違いは怖いものであると感じた。結局、音の正体には気づけなかったが、あの音だけはずっと忘れられない。まさか、同年代が演奏していたとはこの時は知る由もなかった。


何時でも元気だった私は、この時、音楽の道ではなくスポーツの道を歩んでいる。まさか私が音楽の世界に足を踏み入れるとは思ってない。成績もよく、運動も出来た。まさに文武両道の四字熟語がピッタリである。ただ、その弊害があった。


「ねぇ、わかちゃん一緒にあそぼー!」


「ごめんなさい、この本を読みたいの」


「……そっか。じゃあ、またこんどね!」


もちろん、放課後に遊ぶことも無い。学校が終わればすぐに家に帰り水泳に行ったりしていたので、普段はあまり動かなかった。しかし、動かなかった割には細めの身体をしていたと思う。塾にも行っていたが、母が行かせているという訳ではなく、私が望んで行っていた。正直、今の私から見ても彼女は子供とは思えない。まだ友達が居たという意味では、俗に言うボッチという訳ではないがほぼ同じような感じだった。


人生に楽しみがあったのか、と言われたら楽しくて仕方ない。と答えただろう。しかし、同級生が楽しそうに遊んでいたことが不思議で仕方なかった。私にはそれが出来ないから。


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最後の音 囲会多マッキー @makky20030217

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