田舎に行った話
@azuma123
第1話
ストレスがマッハになると田舎に行くことにしているのですが、先日はいつもと少し違う方法で行ってきました。いつもは自分のボロ車を転がし田舎へ出向くことにしています。今回もそのようにするつもりだったため、最寄りのコンビニでコーヒーを買って駐車場に向かいました。わたしの家は四階建てのボロアパートなので、駐車場はついていません。徒歩五分ほどのところに車を置いているため、車を出そうと思うとそこまで足を運ぶ必要があります。
駐車場に到着すると、車が折り重なって五十台ほど積まれていました。わたしの車は下から五番目ほどにありペタンコになっていましたので、これを引っ張り出すのは非常に大変だぞ、まいったなあと思いましたが仕方ありません。わたしは車でできたタワーを登り、一番上の車から引きずり下ろし始めました。
五台目の車にさしかかったところ、中に小さい猫がいました。猫は自分の腹をハサミで切り開いて、中に詰まっていたおがくずを出していました。「これが」猫は言いました。「これが入っているからつらいんだ、ネズミを捕まえたけれども食べられやしない」
猫のまわりにはネズミの死骸がたくさん転がっている上、半分以上がミイラ化していました。わたしは猫がかわいそうになり頭をひっつかんでブンと振り、腹の中のおがくずを全て出してやりました。猫はパニックを発症したのか暴れまわり、わたしの手からスルリと抜け出し逃げて行ってしまいました。助けてやったのになんだとつまらない気持ちになりましたがあまり考えても意味がありません。わたしはまた、車を引きずり下ろし始めました。
十台目の車にさしかかったところ、中に子どもがいました。人間の子です。おそらく五歳くらいでしょうか。上には九台の車が乗っかっていたため、子どもの乗っている車はあらかた潰れていました。身長三十センチ、幅二メートルくらいに引き伸ばされた子どもを引っ張り出すと、子どもはズルリととろけて下に落ちていってしまいました。もう一度車の中を覗くと、先ほどは存在にすら気付きませんでしたが恐らく母親らしい女性がすごい剣幕でこちらを睨んでいます。そして、「わたしの子どもを殺したな!」と金切り声で叫びました。非常に恐怖を感じましたので、車ごと地面に叩きつけてやりました。
十五台目にさしかかったところ、駐車場の隣に住んでいる山本が様子を見に来ました。「大変そうだな」と声を掛けられましたが、わたしは無言で十五台目を引きずり下ろしました。愛想をふらないわたしにイラついたのか、山本はムッとしながら家に戻りでかいハンマーを持ってもう一度出てきます。そして、わたしの登っている車タワーをぶん殴り始めました。ダルマ落としの要領で、一番下の車からカーン、カーンと抜けていきみるみるうちにわたしは地面まで下りてしまいました。山本はハンマーが届く場所まで下りてきたわたしをぶったたき、わたしははるか遠方、田舎まで飛んでいったというわけです。
田舎に行った話 @azuma123
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