第50話

 それから二年後――。

 学園を卒業し聖女だったと明かして、リゾール殿下と婚姻したお姉様。私も卒業したらマイステリー様と結婚の予定です。


 お姉様が聖女で本物のヒロインだった。

 私も封印をして国を救ったヒロインだったのでしょうか?


 「ユリーナ」


 声を掛けられ振り向くと、マイステリー様が立っている。


 「君はここが好きだね」


 好きというか、ここから色々始まった気がします。マイステリー様と出会った時とは、少し変わってしまいましたが、思い出の場所の池です。

 ここで、マイステリー様にヒールをしてもらい、そうそうルミージュ嬢が飛び込んだのでしたわね。


 本当にカーリア様の言った通り、魔力の暴走が始まって……私が封印した――らしい。結局、封印の能力はそれっきりなので、真相はわからないままですが、お姉さまが聖女でしたので、ありかもしれませんね。


 そういえば、どうして私にヒールをしてくれたのかしら? 今だになぞですわ。そして、こんな私をどうして好きになってくれたのか……。


 「うん? 何?」


 つい見つめていると、マイステリー様はほほ笑んだ。


 「私をす……好きになったきっかっけってなんでしょうか?」

 「唐突だね?」

 「ヒールしてくれた時にはすでに?」


 だとしたら一目ぼれって事になりますが……私にそんな要素は無いように思うのですが。


 「あの時はまだ、気になる程度かな。でもヒールしちゃうぐらい好きだったのかもね」

 「え……」

 「顔真っ赤……」

 「また、そうやってからかうのですから!」

 「からかってないよ。本当の事。姉さんが有名だったからダメな僕も逆に目立っちゃってね」


 ダメなって。そう見せていたのに……。


 「それなのに君は、僕にそういう目を向けなかった。というか、眼中になかったよね。クラスで男子が二人だけだったというのに」

 「そ、そうでしたわね」


 あの時は、カーリア様が探していたヒロインだとは知らず、昨年入学していると思って探していたものね。女性でしたから男性のマイステリー様は、目に入っていなかったわ。

 だから池で出会って驚いたのよね。


 「しかも、姉さんを知らなかったからって知った時は驚いたよ。リゾール殿下と婚約するのは、姉さんじゃないかと言われていたからね。でもリゾール殿下は、姉さんを選ばなかった。姉さんも愛する人がいたみたいだしね」


 そうでした。無事男の子が生まれて、カーリア様が後をお継になった。ですので、マイステリー様は、婿に来ることになっている。


 「運命だったと思うんだ。ここでの出会い」

 「はい。私もそう思ってます」

 「………」


 うん? え? マイステリー様のお顔が赤い。たまに、マイステリー様の照れるツボがわかりませんわ。


 「僕を選んでくれて、ありがとう」

 「え?」

 「だって君は、僕に全く興味がなかっただろう?」

 「そ、それは……」


 あの時は、それどころじゃなかったけど、いつのまにか好きになっていた。

 そう思うと……


 「誰でもヒロインなのかもしれないわね」

 「うん? ひろ……なんだって?」

 「なんでもないわ」

 「君ってやっぱり不思議」


 不思議ちゃん扱いされていたのね!

 でもそこがいいのでしょうか? と、いいように受け取っておきましょう。


                  END

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ヒロインが現れないので婚約破棄できません!~国を救うためヒロイン役をやります! すみ 小桜 @sumitan

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