このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(180文字)
何かに強く惹かれたわけじゃない。何かを知っていたわけじゃない。特別なことが起きた訳じゃなくて、ただ、一緒にいた。僕の目の前には、朋桐さんがいた。ただその時間だけが、朋桐さんのいない昼休みにあった。読み終わった時、なんてことばにすればいいかわからない。けれど、確かに強く残る物語です。
ふっと立ち止まって「あの時のこと」を思い出す。受け止めることのできなかった気持ち。そのときは伝わることのなかった誰かの気持ち。そんな「あの時のこと」を描いた作品です。仮に真に分かり合うことが出来なかったとしても、「あの時のあの時間」は確かにそこにあった。 その尊い「あの時間」は確かにそこにあったんだ お薦めの作品です。ぜひ読んで下さい。
僕は文庫本を読んで、朋桐さんは絵を描く。それが、昼休みの教室で過ごす僕達の距離感だった。友達でもなく、恋人でもない。不思議だけど、二人にとっては当たり前な日々。儚くも切ない物語です。
読んでいるうにち、朋桐さんのことを考えている『僕』の存在が、自分と重ねて見えました。切っ掛けや背景は違くても、男子が女の子を初めて意識した瞬間は、この物語に出てくる『僕』のような気持ちだった気がします。読んだ後、自分にとっての朋桐さんが誰だったかを思い出すような作品です。