始まりの世界に終止符を。

喰み。

プロローグ

見たことのない景色だった。

真っ白で何もない小さな部屋。

明るすぎる電光が眩しい。


「どこだろう、ここ」


気が付くと少し固くて冷たい場所に横になっていて、起き上がると服の裾は少し皺になっていた。

自分が眠っていたのかどうかすら分からないが、どうやら長い時間横になっていたらしく、体が凝り固まっているのを感じる。


この場所を目にする以前の記憶が一切ない。

――――なぜ自分はここにいて、ここは一体何なんだろう。

不思議に思いつつ、辺りを見渡す。

向かい、数メートル先に、真っ白な部屋に同化して静かに存在する真っ白なドアを見つけた。

――――あのドアから部屋を出れば、何か分かるだろうか。

横になっていた場所は床から少し高さがあるようで、恐る恐る足を下ろす。

足の裏にひんやりとした感覚が伝わる。

数歩あるいたところで振り返る。

電光に照らされて、ぽつんと佇むのは、例えるなら診療台のような、革の硬そうなベッドで、自分はそこで寝ていたのだと理解した。


「…どうしよう」


正面へと向き直り、目の前のドアと対峙する。

果たして、この部屋から出てもいいのか。

小さく首を傾げながら考える。

何しろ、ここがどこかも、自分が誰かも分からないのだ。


「でも、…ずっとここにいても仕方ない」


取り敢えずこの部屋から出ようと、






――――――――彼女はドアノブに手をかけた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

始まりの世界に終止符を。 喰み。 @0202akira0202

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ