第4話 「それはそれとして」


 綿貫わたぬきの解説は正しい。そこは確かに大学の私の研究室だ。

 しかし幾つか確認しておく必要がある。

 推論過程と答えは正しかった。では選ばなかった道筋についてはどうか?

 だから、

「ところで、」と私はそちらに向かいながら言った。


「お前は鍵としてツタヤのクーポン券を使ったが、あれは宝箱に入っていたものだったな。そしてその宝箱はハズレではない方に入っていて、ハズレである宝箱を開いたがために私たちはここに飛ばされた。」


「うん。」


「となると、もしお前が最初に外れの方の宝箱を開いていた時は鍵が手に入らず、結果としてここから出られなかったことになる。あれがなければ扉の鍵を開けることができなかったからな。つまり、お前は運良く鍵を手に入れられたから出られた。なら逆に運悪く鍵を手に入れられなかったら閉じ込められたままだった。そういうことか?」


 綿貫ローズは一瞬間を置いたが、すぐに返答した。


「、、、多分だけど、その場合は先生がロックを外してたんじゃない? というか最初は鍵がかかってなかったけど、ハズレじゃない方の宝箱を開けると鍵がかかるようになっていた、とか。」


 綿貫の主張は勘にもとづくものなのだろうが事実として正しい。

 確かにその通りで、宝箱から鍵を手に入れることによって転移先の扉に鍵がかかるようにしていた。逆に言えば、鍵を手に入れられなかった場合は扉に鍵はかからない。

 綿貫は辿たどった道筋だけではなく、辿たどらなかった道筋もちゃんと理解している。

 ため息を一つ。それは呆れたのではなく、安堵あんどからくるため息だった。


「ハズレの宝箱まで開けた時はリタイアさせようと思っていたのだがね。そこまで辿たどり着けたのなら合格としないわけにはいかないな。」


 そう伝えると、「やった!」と綿貫は嬉しそうにガッツポーズをした。

 しかし、


「それはそれとして、」


 一つだけ理解できないことがある。

 それは毎回起こることで、毎回訊いているのだが毎回まともな答えが得られない。

 だから訊いても無駄だとは思いつつも訊かずにはいられない。


「お前が描いたあのBLイラスト、意味があったのか?」

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ポンコツ女子大生の日常 @m__a

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