番外編 お正月とは……
ざぱーんと波が押し寄せる。いや、打ち付けるような環境音が響く。同時に葛飾北斎ばりなタッチの波をかき分けて、真っ赤な太陽が水平線よりその姿を覗かせる。
太陽を中心とした、赤と白に色分けされた集中線が空一面を覆う。
そして色五月蠅いネオンの様な、点滅する効果も付属していた。
「これが、ということですね母上殿!」
「違……、うような違わないような。根本的に激しく間違っているような気もしないでもないわね……」
上記の風景が何かと問われれば、スカルゴの背景を占める【
リアデイルの世界には厳密的に正月というような催しものは存在しない。
ゲームだった頃にはハッピーニューイヤーイベントだの、正月ボーナス百連ガチャだのの真っ当なイベントの他、ギルドが主催となって様々な催し物が発生していた。
例を上げるならば、
高速餅つき&NPCに配布した際に発生する
その年の干支にちなんだ魔物を捕獲して、高さ十メートルにも及ぶ
一部のプレイヤーの懇願により、ギルド対ギルドという極狭範囲での戦争行為が発生。これにより全地域で何かしらの戦争行為へと発展し、想定外の負荷によりゲームが七日まで落ちるということがあった。その間
まあそれはそれでバカ騒ぎ過ぎてケーナにも印象深い思い出ではあるのだが。
ゲームが現実となった今となっては、フェルスケイロの王都であっても国旗があちこちに下げてあるくらいで、日常の延長が少し華やぐ程度のようだ。
カータツ曰く、この日は親しい友人や家族で集まり、賑やかな食卓を囲んだりするのだそうな。
なので普段は辺境に籍を置くケーナもこの日ばかりは王都まで足を運び、一家団欒を企画してみた。
参加するのはケーナとルカとクー。スカルゴとマイマイとカータツである。
オプスもどうかと誘ってはみたのだが、「隠れ鬼と二百年越しの決着をつけねばならん」と呟き、悲壮な覚悟で出かけて行った。
きっと雰囲気だけは尤もらしいことを匂わせておいて、中身はしょーもないことだろうとケーナは思っている。
一家団欒を企画したのはケーナだが、王都のお店には詳しくないのでカータツやマイマイに任せたところ、子供たちが定期的に集まるという黒兎の白尾亭。そのVIPルームに通された。
もう内装からしても立派で、お高い格式ばった料理が出てくるのかと思いきや。以外にも出されたのは、辺境の宿屋などでもお馴染みの家庭料理の数々であった。
ただ使っている材料や調味料などがそれ相応で、味に関しては文句の付け所がなく、ルカなどは始終目を見開いて驚いていた。
「いや~、お袋がいるだけで場が華やかになる気がするぜ~」
「その中にルカちゃんも居れるようにしなさいよね~。ほら、こっちも食べてみる? また違った味わいがして美味しいわよ」
最初っからハイペースでお酒を飲み始めたカータツから漂うアルコールの匂いをマイマイは魔法で遮って、かいがいしくルカの世話を始める。
見た目は姉妹というより親子のそれであるが、最近はルカもマイマイに慣れてきて少しは甘える姿勢を見せてるようになってた。
必然的にスカルゴの矢面に立たされるのはケーナとクーであった。
「パクリ疑惑満載。オリジナリティがない。評価マイナス」
「そ、そんな……、クー殿!?」
「ゔ……」
真っ向から厳しくばっさり切り捨てたクーに、対するスカルゴは悔しそうに顔を歪めてガクリと膝を付く。
パクリ疑惑と言われるのも仕方がない。
エフェクトの半分くらいの絵柄は、ケーナがネット内から収集したコラ画像と言うべきものばかりだからだ。必然的にクーの言葉の刃はケーナをも傷付ける。
しかし不屈の闘志を無駄に燃やしたスカルゴは、キッと鋭い眼差しをクーに向ける。背後に輝くエフェクト在り! としてフェルスケイロに君臨してきた大司祭として、そのプライドを屈するわけにはいかないからだ。
ケーナも内心では呆れながら、気丈に立ち向かうスカルゴのあんまり意味のない気概に暑苦しいものを感じていた。
「これならどうですか!」と片手を上げ、裂帛の気合と共にスカルゴより放たれたのは、見事なタッチの水墨画の滝を、でんでん太鼓を持って口を一文字に結んだ子供が乗っていた柔らかいアニメ調の龍が昇りゆく光景である。
「パクリ疑惑その二。評価更にマイナス」
「ぐふう……っ」
胸を押さえて膝を付くスカルゴ。
ケーナはもう勝敗は意識の外に追いやっていいかな。と決断していた。
くだらない主張より、皆で食卓を囲む方が何倍もいいに決まっている。
こうして部屋の隅で目を三白眼にして腕を組んだクーの前で、果敢に【
どっとはらい。
リアデイルの大地より Ceez @Ceez
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