第3話
見た目から伝わる異様さもそうなのだが、何よりもそれに対し絶対の自信を持っているであろうことに恐怖した。家電を武器に使うくらいなら銃を使う。それは、家電のが強いなんてことはあり得ないからだ。しかしながら、時としてそのあり得ない事があり得る事例がある。私の過去にもそれはあった。家と家の隙間の異空間に建つ魔法研究所で半生を過ごし、その間ずっと実母に銃の腕を磨かされいていた、なんてあり得ないで出来た城のようなものだ。そもそも相手は、キャンピングカーを崖下に落としている。鉛筆よりも持ちなれた拳銃が、汗で滑る。あり得ないを超越したものから、お母さんを守らなくてはならない。私は、左手につけている時計に目をやった。
カチカチと動いているこれの中には、爆薬が仕込まれている。爆発物に傾倒しているお母さんの友人が作ったらしい。発熱装置とセットになっており、作動させるか火に投げ込めば爆発する算段だった。問題は、破片が少ないから爆発をもろにあてるか炎上させるかしないとそんなに危険ではない点。
鼓動が、辛くなるほど加速する。
「悪いが追われている身なんだ。二人ともきっちり殺すからな」
加速してぐんぐんと詰め寄ってきた。残念なことに油断はしていないらしい。12。時計を腕ごと腹に押し付けたら倒れるだろうか。8。銃床で殴れば死ぬだろうか。覚悟を決めて待ち構えた。残り五メートルといったところで、ガラスでもあるかのようにピタリと止まった。バレたのか?違う。相手と私との間に、なにかがある。ぼんやりと金の光を纏った、か細い糸だった。それは崖の上の暗闇からスッと流れて来ていて、よく見ると何本かまとまっているみたいだった。糸と糸とが互いに別の糸で繋がりあっている、まるで蜘蛛の巣のような構造で垂れていた。相手は、それを見つけて止まったのだ。月光が木に遮られても尚爛々と輝く相手の目が、ひとつあった。猫みたいだ。
相手はそのまま真横に走りだし、森に駆け込んで消えた。しばらく静かになったと思えば、女の人がもんどりをうちながら転げ落ちてきた。
日燃ゆる様、沈むは暁光 双葉使用 @FutabaUSE
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。日燃ゆる様、沈むは暁光の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます