また、夏の季節がやってきた

 新たな新入部員も入った、私たちの演劇部は今年の演劇部の大会に向けて、日々練習に明け暮れていた。私も、もう先輩だ


 去年は、夏休みの間での練習の無理が祟って、私は病室に入院してしまったけど。今年は、絶対にそうならないように気をつけたい。いや、気をつける。


 ちなみに、春の卒業公演は、成功をおさめた。終始、三年生たちの笑いが絶えなかった。


 彼の書いた台本は、私の役に対して無茶なことを書いてあった。しゃべり方がぶりっ子だとか、急に早口になれとか、長文を覚えてこいなど、とかだ。

 なんて無茶な要求をするんだ、彼は。私は最初そう思ったが、元々彼は私に全部それをやりきるとは思っていなかったらしい。


 ただ、必死にやってる姿を先輩たちに見せて、私も次は頑張りますってところを見せたかったらしい。

 それはそうと、先に言ってくれればいいのに、彼は卒業公演が終わった後に、その理由を言った。


 おかげさまで、公演中はずっと顔は真っ赤だった。はじめての役者で、セリフは間違えたり、噛んだり、飛んだりしてめちゃくちゃ。

 同じ役者の二年生の先輩や彼がいなかったら、劇としてなりたっていなかっただろう。三年生の先輩たちから、私一人でもずっと見たかったって言ってくれたけど、さすがにもう一回は無理だった。次は、きっと顔から火が出るはずだから。







「はぁ、今日の部活も大変だったな。新入部員も未だに緊張してるみたいだし」


「それは、あなたがずっと話しかけるからでしょ? 一年生、困らせてどうするの?」


「だって早く、仲良くなりたいじゃん。これから一緒に、読み合わせとかするんだぜ? これが、楽しくなくてどうするよ?」


「楽しみなのはわかるけど、駄目。本当に、あなたはデリカシーがないんだから」


「デリカシー? なにそれ? おいしいの?」


「ばか」


「バカでけっこう! さぁお嬢さん! 私と一緒に参りましょう!」


「……急に、卒業公演でやった役にならないで! まだ私、思い出すと恥ずかしいだから!」


「そんなこと言わずに! さぁ!」


「さぁって、どこに行く気なの? 部活終わって、もう外は暗いよ?」


「窓の外を見て!」







 私は、メッセージを見ていたスマートフォンをベットに置く。私は、彼の言うとおりに窓のカーテンを開けて、窓の外を見たときだった。


 暗い空の奥で、一輪の花が咲いた。花火だ。


 それは、去年は私は入院していたため病室からは見ることのできないものだった。それを今、やっと見れたのだ。


「迎えに参りましたよ、お嬢さん!」


 2階の部屋の窓に向かって彼の声がした。夏らしく甚平を着ていた。その姿を見たとき、セリフと姿があってなくて私は笑った。


「セリフと格好が似合ってませんよ? お兄さん」

「セリフは心から来るもので、見た目の格好は何の関係もありませんよ」

「なんだそりゃ」


 二人は、笑った。去年だったら、想像もつかないことだ。


 そして、彼は言った。


「お嬢さん! 僕と一緒に花を見に行きませんか! 花は、大きすぎて僕一人じゃに勿体ないので!」


 卒業公演での、彼がやった精霊の役のセリフだ。登場の最初は、とてもカッコつけな性格だが後半へいくにつれて、その精霊は必死に少女にアプローチをかけていくって彼のストーリーだった。


 元から、私と彼は幼なじみだったから仲がいいので、先輩たちからは彼からアプローチを受けるたびに、ヒューヒューと囃し立てられていたこと思い出す。全くもって、恥ずかしい想い出だ。

 

「あぁ! 早く来てくれないと花は枯れてしまう! どうか、お嬢さん! 早くきて!」


 ……繰り返す。全くもって、恥ずかしい。


 



 ……でも、嫌いじゃない。


 私は、下で待っている彼に向かう前にスマートフォンを取って、メッセージを残した。




『ばか』と、もう一度。


 

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私と彼との365日メッセージ 猫のまんま @kuroinoraneko

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