春の季節
外は、ぽかぽか陽気に包まれている。この調子だと、桜の開花も近そうだ。
あの桜並木も、人で賑わっていた。桜の開花を今か今かと楽しみにしている人たちだ。
病室からそんな風景を眺めながら、私は彼からメッセージを待っている。
二年生と一年生である私と幼なじみの彼とで、今年卒業する三年生たちのために、卒業公演というものをするための連絡を待っているのだ。
私は、大会に参加出来なかったけど。その分の気持ちも込めて、盛大にやりたいという気持ちが込み上げてきた。
幼なじみの彼は、部活帰りに毎日のように私の病室に現れるけど。先輩たちも彼についてきてお見舞いにやってくることが多かった。
私を楽しませようと、彼と先輩が病室で演劇の場面をやってみせり、コントを見せたりと私を笑わせてくれたが。彼と先輩は、その度に病院の看護師の人に怒られてた。
なら、静かにしようって言葉なしの演技をしてくれたが、みんな面白可笑しくて笑ってしまったから最後にはみんなが看護師の人に怒られてしまった。
あぁ、なんていい人たちだ。と、私は思った。
「わるい、わるい! メッセージ送るの遅れた!」
「できたの?」
「ああ、やっとできたよ! 台本が!」
「どんな内容?」
「フフフ、それはあとで持ってくるから、それまでお楽しみさ!」
「なんで、勿体振ってるの? あなたが考えた台本でしょ?」
「まぁ、それも含めてまだ内緒だよ。先輩たちにも、楽しんで貰えるようには考えているよ」
「それなら、いいけど……」
「大丈夫大丈夫! それより、お前の方は大丈夫か? 今月中には退院できそうか?」
「うん、大丈夫だよ! 病院の先生も、そうちゃんと言ってし大丈夫だよ!」
「そうか! なら、卒業公演に向けて練習しないとな!」
「うん!」
夏の最後ぐらいに体調崩してから、私はかれこれ半年近く病院にいてしまった。気づけば、もう春先。
演劇部の県大会は突破できず残念だったけど、私は先輩には、感謝の気持ちしかない。
この気持ちを伝えるためにも、卒業公演は役をやって頑張らなきゃいけない!
今日も、いつも通り私の病室にきた彼は、彼自身が書き上げた台本を置いてそそくさと急いで帰ってしまった。
何か用事でもあるにかな、と思って気にしてなかったけど、台本を見て私はあることに気づいた。
『落ち込み少女と七人の精霊』
落ち込み少女役、私。
と、書いてあって私は察した。彼はこれを秘密にしたかったんだなと。
その台本を見てから、私は顔が真っ赤である。あの彼のせいだ、本当に彼のせい。
この台本は、私が入院してる間はずっと、落ち込んでいることが多いから、この台本を書いたと、彼は帰ったあとにメッセージで送ってきた。
なんてやつだ!
私は、嬉しいような恥ずかしいような想いで、いっぱいでだった。
しかも、はじめて役者でまさかの主役。私は彼に、どんな気持ちをぶつけたらいいのかわからなくなる。
主人公のセリフの欄になるべく、ぶりっ子ぽくって書いてあるし……てか私は、そんなにぶりっ子じゃないよ!
私は、あんなに退院するのが楽しみだったはずが、今では少し複雑な気持ちになった。
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