冬の季節
数ヶ月も過ぎると、外の風景は落ち葉の道が出来ている桜並木ではなくなっていた。
昨夜に、しんしんと雪が降っていた。今日、起きたときに病室から窓の外を見ると外の風景は一面の雪に覆われていた。
雪に埋もれた桜の木は、どこか寂しそうに私には見える。
そんな雪一面の桜並木には、人はいない。
今日は、私にとってつまらない1日になりそうだ。雪が降ったことで、多少受かれる気持ちにはなったが、私は外には行けない。もちろん、雪に触ることなんて到底できない。
私が病院に入院するほど、体が弱っていなかったら、私は喜んで外の雪に触りに行っていただろう。だけど、今の私にはそれはできない。
あぁ早く、雪が溶けてくれないかな……そしたら、こんな気持ちなくなるのに。
私の頭の中で、ネガティブな考えだけが渦巻く。幼なじみの彼に、気持ちで負けるなと言われるが、孤独に一人でこんな牢獄みたいな所にいたら、気持ちもおかしくなるって私は思った。
……早く、退院したい。
切に願うが、物事はそう簡単に上手くはいかない。お医者さんの話だと、私の体の回復は順調らしい。だか、今年中の退院は無理だと言われた。
同時に、今年の私の部活動は終わった。
「雪が降って、外は寒くなったが……お前の体調はどうだ? 悪くなってないか?」
「私は、ずっと、病院の中にいるから平気」
「なんかトゲのある言い方だな……どうしたんだ?」
「……なんでもない」
「なんでもなくないだろ。お前が、そんな言い方をするときは何か悩みがあるんだろう?」
「……ほっといて」
「だから、ほっとけるわけないだろう? はぁ……とりあえず、俺たち演劇部は県大会に進出したぞ。お前も早く元気になって、参加してくれ」
「それは無理」
「なんで?」
「病院の先生に、今年中の退院は無理って言われたから」
「そうか。ならお前は、安静して体をちゃんと元気にしなきゃな」
「もぅ間に合わないよ……」
「わかってる。こっちは、なんとか俺たちでするから大丈夫だ。俺とお前は、また来年がある。また来年、部活頑張るぞ」
「でも、先輩たちに合わせる顔がない……」
「そんなこと、気にするような人たちに見えるか? 大会前に、みんなで円陣組んでお前のためにも頑張るぞーって叫ぶ人たちだぞ?」
「……」
「だから、大丈夫だって。また来年、俺と2年の先輩たちとで頑張るぞ」
「……うん」
私は、スマートフォンの画面がよく見えなくなって画面を閉じた。体のどこも痛くもないのに、涙が出てきたからだ。
私は、恵まれているのかも知れない。こんな病弱な体だけど、誰かの力をかりないどうしようもない私だけど……みんなは優しいんだ。
きっとそれは、私だけに優しいじゃなくてみんなに優しいと私は思った。だって、部活の仲間ってそういうことなんだろうなと私は思ったからだ。
そういうことが、私には具体的に説明はできないが、さっきまであった私の中のもやもやは、涙と共に流されていってしまった。
外の世界が、寒い雪の風景だけど今の私には、どこか暖かく見える風景へと変わっていた。
単純だな、私って。
先まで雪を見るのが、嫌だったはずなのに、今では雪を触りに行きたい、という私の気持ちを抑えるので私は精一杯だ。
なんて、単純なんだろう。
私は、自分のことばかり考えてたことにバカらしくなった。みんなは、今も頑張っている。なのに、私が落ち込んでたら駄目だ。
みんな、大会頑張れ……!
気持ちを込めて私は持っていた。スマートフォンを握りしめた。
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