□
青子が自分のマグカップを片そうと立ち上がると、父は待ってましたとばかりに振り向き、自分のカップを差し出して、悪びれずに「おかわり」と言う。
「自分でやれば」
「分かんないかなあ。親父っていうのは娘が淹れたコーヒーを飲みながらテレビを見て、ああ、今日も頑張ったなあ、って自分を慰めるわけ」
手をひらひらさせて、台所に追い立てる仕草までする。
嫌々カップを受け取り、コーヒーを淹れながら、青子は思う。今度、もし父や千尋が名前をからかってくることがあれば、一度くらいは広い心で受け止めてあげても良いかもしれない。
そして、今度は誰が言うよりも先に、自分で、言ってやるのだ。
「そうね、青子だけにね」と。
君に、青 ちこやま @chikoyama
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます