〝宝〟以外なにひとつろくなことがなかった日のお話

中学生の男子ふたりが、学校の床をツルハシで破壊するお話(正確にはその思い出話)。
お話の持っていき方が最高でした。幼い日の宝探しの思い出、という、字面だけなら間違いなくワクワク感に満ちているその題材を、でもこんな風に仕上げてしまう。
他人の傘は盗むわ学校の床に穴は開けるわ、本当にひどいおバカふたりの、金銭欲丸出しの冒険譚。その筋道の間に少しずつ、詳らかにされていくどん詰まりのような現状。手を擦りむいたり傘に穴を開けたり、本当に本当についていない一日。
差し挟まれる情報の取捨選択と、そのタイミングによる読み手の感情のコントロールが完璧でした。加えて、主人公の内心をそのまま表したかのような文体も。
積み重なっていく小さな苛立ちに、どうしようもない閉塞感。読んでいてしっかりお腹に溜まる、この重たい感覚がたまらないお話でした。