第2話 『謝意表示』私たちは謝る意思があるという事を、ここに表し示しますっ‼︎—— その1 ティクスの『祭壇』

トントン、カンカン。


絶海の孤島の空に響く。


木槌で釘を打ちつける音——



僧:「ふぅ…。できたよ、完成だっ!」



額に浮かぶ汗を手で拭い。


朝からずっと作り続けていた。


簡素な木製の『祭壇』の完成を、笑顔を浮かべて喜ぶティクス。


その輝きは、太陽にも負けず劣らず。


キラッキラで、小柄で線の細い中性的な容姿も相まって。


ハッキリ言って—— 〝女の子〟にしか見えないっ‼︎


さて、それはさて置き。


何故、朝も早よから陽が中天に昇るまでの間。


ティクスがトントン、カンカン。


木槌をふるって『祭壇』なんぞをこしらえていたのか…。


それは、『女神』に——〝私たちは女神さまに、ちゃんと謝る意思を持っています〟という事を表し、示すためだ。


発案は勿論、ティクス。


材料はティクスがバカ三人のケツを叩いて、集めさせた。


工具類はティクスの魔法鞄マジックバックに、しまってあったモノを使用した。


ティクスの魔法鞄マジックバックには、工具類だけではなく。


調理道具、裁縫道具、生活雑貨などなど。


色んなモノがつめこまれている。


これらのモノは、すべてバカ三人の世話を焼くためのモノである。


ティクスはバカ三人の嫁か…。


さて、そんな嫁(?)、ティクスの『完成〜!』の声を聞きつけ。


ワラワラ集まってくるは、我らが愛すべきバカ野郎どもな『勇者』『戦士』『魔法使い』の三人組み。



勇:「おぉっ!どれどれっ‼︎」



騒がしい。


アホ丸出しな姿で、ティクスが朝から頑張って作った、簡素な木製の『祭壇』に駆け寄り、のぞき込む。


拘束衣こうそくい』で、両手を後ろ手にふん縛られた格好の『勇者エリック』。


彼が両手を自由に使えるのは、トイレの時のみだ。


いの一番、『祭壇』へと真先に駆け寄ったエリックアホの子は、その名が示す通り。


『すげぇ、すげぇっ!そんで、えっと、その…なんだ、めっちゃすげぇなっ‼︎』—— と、そのアホっぷりを遺憾なく発揮。


戦闘力ばかりが高く。


知力と語彙力が壊滅的というところを、改めて見せつけてくれた。


しょうがない。


彼は『賢者かしこき者』ではなく『勇者アホの子』なのだから…。



さて、そんなアホの子エリックの左足・・の親指には、プックリと痛々しい。


大きな血マメ・・・ができている。



勇:「SUGEeNAすげぇな、ティクスっ!」


僧:「あははは、ありがとうエリック。でも、さっきからそればっかりだね」



残念ながら…。


アホの子は『祭壇』を作る作業では、何の役にもたたなかった。


右足で握った最初の木槌の一振りで、見事に釘ではなく。


自分の左足の親指を打ち抜いたのだ。



戦:「うむ、上手いものであるな〜‼︎」



勇者エリック』に続いて。


ピョンコピョンコと、パンツが丸見えになるのも構わず。


飛び跳ね、しゃがみ込み。


右に左に、カラダを揺らし、ゆらゆら。


元 髭禿げでバッキバキの筋肉ダルマ—— 現在は、か弱い〝金髪の美幼女〟の姿へと変貌したTSした


戦士マルコ』が、ティクスが朝から頑張って作った。


簡素な木製の『祭壇』を、キラキラと目を輝かせながら眺めていた。


そして…。


最早、ただの美幼女マルコの左手の親指にも、プックリと痛々しい。


大きな血マメ・・・が…。



戦:「さすが、ティクスであるな…。くっ!余にもっと筋肉ちからがあれば、ィクスの役にたてたものを…無念だっ‼︎筋肉ちからが、筋肉ちからが…欲しいっ‼︎」


僧:「マルコ、あんまり無茶しちゃいけないよ?」



残念…。


髭禿げでバッキバキの筋肉ダルマだった頃ならいざ知らず。


ただの美幼女な今の姿では、『祭壇』作りの作業で活躍する事はできやしなかった。


右手に握った木槌の最初のへろへろな一振りで、見事に釘ではなく。


自分の左手の親指を打ち抜いていた。



魔:「ふごふご…」『ふむふむ、ほほぅ〜…』



そして、最後に指をワキワキ。


手首をグネングネンさせながら、やって来たのはヘンタイ野郎。


『魔法使い』—— 否、セクハラ職人ペドロ。



魔:「ふごふごっ」『ふむ…ティクス。できれば、さっきの『できたよ』ってセリフ。アレを頬を染めながら、言っては貰えないだろうか?』


僧:「…………」



魔法使いペドロ』は、ティクスが朝から頑張って作った。


簡素な木製の『祭壇』をジィ…と、いやらしい目で見つめながら。


『〝麦わら帽子に白いワンピース〟—— 町娘の衣装を身につけたティクスが、毛先を指でくるり、くるりんと弄りながら『祭壇』をひと撫でし。恥ずかしげに上目遣いで『妊娠、したよ…できたよ』と、自分ペドロに告げる』—— という。


ゲスな想像をし、実に気持ちが悪い顔で、ニヤニヤ…本当に、気持ちが悪いっ‼︎


さて、このヘンタイ。


魔法使いペドロ』の左手の親指には、他二人と違い。


プックリと痛々しい、大きな血マメはできて無い。



僧:「ヘンタイ、少し黙りなよ」


魔:「ふごっ⁉︎」『⁉︎』



ずしゃ〜っ!


膝からくず折れる、ヘンタイペドロ


がっぷり、四つん這いになってプルプルと震えながら、はらはらと涙を流すヘンタイペドロ


ティクスの冷えきった目と、ナイフのような言葉に、心が〝折れた〟—— なんて事はない。


〝満たされた〟のだ—— ヘンタイペドロ故に。



残念—— と言うか、当然と言うべきか…。


このドの付くヘンタイは、『祭壇』作りの作業で何の役にもたたなかった。


それどころか、邪魔でしかなかった。


セクハラ発言(筆談)が酷すぎた。


しかもその癖に、今こうして〝ご褒美〟だけはシッカリと貰っていくという、悪辣ぶり…。


なるほど。


これが『魔王』討伐を成し遂げた、勇者パーティの『魔法使い』の手腕か…。


まさに、ゲスの極みっ‼︎


死ねばいいのに。



魔:「ふごふごっ!」『なんなら、視線は下げたまま。お腹をさすりながら、言ってくれても構わないっ‼︎』


僧:「よし、殺そう♪」


勇:「ティクス、落ち着けっ‼︎」


戦:「はやまるでないっ!こんなのでも、我ら勇者パーティの頭脳なのだぞっ‼︎」


僧:「こんな頭脳ならいらないよっ‼︎」



死ねばいいのに。



魔:「ふごふごっ‼︎」『マルコとふたり。手を取り合って、ひとみを潤ませながら言ってくれるのも〝アリ〟だっ‼︎』


勇.魔:「「お前はチョット、黙っていろっ‼︎」」


僧:「ふふふっ…ねぇ、二人とも。放してくれないかな?じゃないと、ペドロそいつ殺せないよ…。ふふ、ふふふふっ‼︎」


勇.魔:「「ティクスは落ち着けぇーーっ‼︎」」



ホント、死ねばいいのにっ‼︎

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REPENT - 反省記 ~ 世界を救った勇者パーティ——『悔い改めよっ‼︎』と女神に怒られ、流刑に処される…。 ~ 咆哮音痴 @tanakanokanata

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