第25話日常と覚悟



東の都の大天導師である総葉から天導士の、そして天草家の歴史を聞かされた翌朝、紫苑は桜華と共に訓練場にて鍛錬を行なっていた。



「はぁ!」



「はっ!」



紫苑が勁矢を射て桜華がそれに対応する。


早い攻撃、遠くからの攻撃にもしっかりと対応出来る様にと、桜華の武の向上を促す鍛錬。


それをある程度行ない、次に紫苑の武の向上に努める。


弓を用いての接近戦での対応、更には一撃一撃の力の向上。


既に朝の鍛錬とは言えない程の長い時間それらを行ない、気が付けば二人ともボロボロになっていた。



「桜華ちゃん、大丈夫ですか?」



「大丈夫よ。 と言うか紫苑もでしょう? ちょっと集中し過ぎたわね。

汗を流して機関へ向かわないと」



「朝ご飯、食べそびれましたね」



ぐぅーっとお腹が丁度良いタイミングで鳴り響くのだが、そのお腹を満たすには汗を流す時間を削るしかない。


しかし、女子である以上その選択は皆無なのだ。



「が、我慢します……」



「後で軽食ならあげるわよ」



二人は急いで汗を流し、制服に着替えると屋敷を後にしたのだった。











「おはよう」



「おはようです」



クラスでは真那と猫磨が朝の挨拶を交わしつつ集まって来る。



「おはよう」



「おはようございます、真那ちゃん、猫磨ちゃん」



「二人とも、この前の討祓戦に参加してたって聞いたけど?」



真那が不思議そうな表情で桜華と紫苑に尋ねて来る。



「そうね。 まあそこまで力になる事は出来なかったけど」



「うん。 主とか全然刃が立たなかったですし……」



二人がそう返すと、当然の事ながら二人が驚きの声を同時に上げた。



「「主!?」」



「あっ、言わない方が良かったですかね……」



「もう遅いんじゃないかしら? まあ二人とも、詳しくはお昼にでも」



桜華がそう宥めると、とりあえずその場は治まった。


そして水鏡が入って来たのだが、その姿にクラスの皆が驚いていた。


頭部は包帯で覆われ、右目が隠れている。


また、手も包帯が巻かれていて最早講義をしている場合ではないだろうと言える状態だったのだ。



「水鏡導師、大丈夫なんですか?」



その姿に第一皇女の彪音や、伍家の御華楓が訪ねた。



「大丈夫よ。 先日の討祓戦が思いの外激しいものだったものでね。

けど心配はしなくていい」



水鏡の言葉にクラス全体が安心したように声を漏らした。


しかし――



「桜華ちゃん……戦いが激化すれば怪我人、運が悪ければ死人も出ますよね……」



「そうね。 でも、感傷に浸ってる場合じゃない。 だから私達は精神もしっかりと鍛えないといけないわ。

例え家族が死んだとしても……」












昼休み、ようやく食事にありつけた紫苑と桜華は大盛りにしたカレーを食べながら真那、猫磨に討祓戦の詳細を話していた。



「そんな事があったんだ……よく生きてたね……」



「二人が死んじゃったら私悲しすぎて立ち直れないですから!!」



真那はあまり表情には出ないが、心配と安堵が感じられた。


また、猫磨も真那と同じように安心したのか、少し涙目になりながら二人の手を握っていた。



「ありがとうございます、二人とも。 今後は気を付けますね」



「そうね。 と言うよりも、主に太刀打ち出来るくらい強くならなきゃ」



実際に主には傷を負わせる事こそ出来たが、それは相手が無抵抗の状態だったからだ。


普通に相手も攻撃をしてくる様な戦闘であれば即座に殺されていただろう。


未だ、「良かったですぅ~」っと猫磨が涙目になってる。



「ありがとう、猫磨ちゃん! 心配かけてごめんなさい」



「うぅ……はい」



そして午後は実技講習の時間。


未だ都全体が警戒レベルを上げている事で、見習いだろうが武を引き上げる方針は変わっていない。



「これから実技に入るけど、生憎私はこんな状態だから今日は別の導師に来てもらってるわ。

入って下さい」



水鏡導師の言葉で地下の訓練場へ入って来たのは二人。



「あっ、あれって! 桜華ちゃん!」



「そうね」



一人は討祓戦時に全石と共に戦っていた御華家当主の妹、御華流花。


そしてもう一人は帝の長男であり天導師でも高い実力を誇る皇冬牙だ。



「伯母様!?」



「お兄様!?」



流花の親族でもある楓、そして冬牙と第二皇子の妹である彪音が声を揃えて驚いた。



「あら楓ちゃん! 久しぶりね。 今日はよろしく」



流花が軽く挨拶を済ませる。



「それと、もぉ!!」



流花が水鏡へと勢いよく抱き付き、再会を大いに喜んでいる。



「おい流花、怪我人に勢いよく抱き付くな」



「痛いわよ流花。 後今は白ちゃんは止めてちょうだい」



二人からお叱りを受けると、流花が唇を尖らせてぶーぶー言い始めた。



「御華家ってあんな感じなの……?」



「いえ、でもあれが伯母様の本性でもあるわね……」



楓は流花の様子に恥ずかしさが込み上げ、顔を俯きながら友人からの質問に答えた。



「とりあえずお前等、武器持って集合。 彪音、お前は流花の方な?」



「分かりました」



クラスの導士達が流花組と冬牙組を分かれ、それぞれ訓練を始める。



「お前等あの時主と戦ってた天草家か」



「「はい」」



「導士が基本的に戦闘に参加する事はない。 それは実力が足りないからだ。

それは実感してんだろ?」



「「はい……」」



「なら次は戦える実感をしろ。 腕を磨け。 それが全てだ」



紫苑と桜華は冬牙の言葉をしっかりと受け止めると、武器を構えて訓練を開始する。


やがて、流花、冬牙がそれぞれ武器の特性、浄勁力の上昇と維持、戦闘時の欠点などを各導士達にアドバイスをしていく。


そして、後半は実戦を模した訓練だ。


実際に流花、冬牙を敵として認識し、攻撃を仕掛けていく。



「はぁ!」



「はっ!」



「とりゃあ!」



流花組では導士達が次々に流花へと武器を振るっていく。


しかし、流花の武器は拳であり、武器を持たない分身軽で、その動きを捉えられる者は現時点では一人もいない。


そして――



「行きますわよ、伯母様」



「楓ちゃん、伯母は止めてって言ったでしょ? まだ若いんだからせめてお姉様にして」



「ではお姉様、参ります!」



「キュ~ン!」



流花は楓の言葉に恍惚とした表情を浮かべると、その余韻に浸っていて隙が生まれていた。



「隙あり! はっ!」



楓の勁鞭がビシっと音を立てて流花を襲う。


しかし、それが流花に当たる事はなかった。



「甘いわよ、楓ちゃん」



「くっ」



即座に流花が接近してくる。


楓がそれに対応し、鞭を戻しながら流花へ追撃を行なった。



「うん、良い判断ね。 でもやっぱり甘いかな?」



楓はクラスの中でも優秀な方で、最初の実技講習の際には手加減をしていたが水鏡を倒した一人。


だが、流花はその楓の四方八方からの攻撃も全てを躱しながらその間にトンっと楓の身体に何度か手を当てて行く。



「今ので10回目。 私が楓ちゃんに攻撃出来た数ね?」



「はぁ……はぁ……参りましたわ」



「ふふふっ!」



当然と言えば当然なのだが、流花はピースをしながら喜びを全面に押し出していた。



「おいおい、御華の鞭全然目で追えなかったのに一発もくらってないぞ……」



二人の様子を見ていた他の導士達は改めて、天導師の実力を知り、驚愕していた。



「楓ちゃんは目で敵を追いすぎね。 もう少し感覚を養う事。

それと、鞭の場合はいくら早い動きでも攻撃力自体が低いと意味がない。

蚯蚓腫れと抉りなら、抉りの方が断然強い訳で」



「感覚と攻撃力の向上、って事ですね……分かりました」



「よろしい!」



次に皇女である彪音が流花との戦闘を行なう。


勁力を流した鉄扇を振るい、かまいたちを起こしながら無数の風の刃を流花へと放っていく。


しかし、それも流花に当たる事はなく、徐々に距離を縮められてしまった。



「う~ん、彪音様はもう少し接近戦を覚えた方がいいですね。

近寄らせない事を主にして来たと思うけど、詰められたらその時点で終わってしまう。

なら、そこから切り替えられるようにした方が幅が広がりますよ」



こうして流花がそれぞれの導士に的確なアドバイスを与えつつ、訓練をしていた頃、冬牙組の方でドゴォォンっと轟音が響いた。



「ほぉ、流石は隊長のせがれって事か!」



「父は関係ない! 俺は俺だ」



物凄い早さで烏丸迅が忍者刀を振るい、冬牙がそれを受け止める攻防が繰り広げられていた。



「うっひゃ~、活きのいいのが居るんだね~。 あれは烏丸隊長の息子さんか……恐そうな顔してるし、そっくりだなぁ」



遠くでそれを見ていた流花が二人の様子を見ながらも、やがて自分の持ち場に戻る。



「ふんっ! はっ! 火球炎刃かきゅうえんじん! 雷走らいそう!」



忍者刀で攻撃をしながらも隙を見て火の刃、地面からは稲妻が冬牙を襲う。



「おいおい、もう天導士レベルじゃねぇか」



冬牙が刀で火の刃を斬り、そのまま地面に突き刺すと、避雷針となって稲妻が全て刀へと集まった。



「おっ、ちょうどいい! 雷閃刃らいせんじん!」



すると、冬牙が刀に集束した雷を刃として勢いよく放った。



「ぐわっ」



それは一閃の如く速さで次の攻撃準備をしていた迅に直撃し、地面に倒れる。



「お前は強いな。 だが、少々過信してる部分がある。

まあ俺もそうだから人の事を言えた義理じゃねぇが、意表を突かれたりすると脆い。

もっと色んな戦いをシュミレーションするこったな」



「あ、ありがとうございました」



すると、周りからパチパチと拍手が鳴り響いた。


それだけ迅の実力は高く、周囲の導士達からは尊敬の眼差しが送られる。



「大丈夫?」



「あ、ああ。 問題ない」



真那が倒れていた迅に近寄り、手を差し出すと迅は素直にそれを取り、立ち上がった。



「そういえば……初めて手を取ったね」



「うっ……たったまたまだ」



「ふふっ」



そのまま真那はタタっと紫苑等のところへと戻る。



「チームは重要だ。 一人で出来る事には限界があるからな。

まあ、お前の親父さん……烏丸隊長みたいな暗殺的な方法なら一人がいいけどな。

お前はどっちで戦いたいんだ? 掟じゃなくて自分の心に素直になれ」



「……」



烏丸家は基本単独行動。


暗殺稼業もそうだが、仲間が居れば邪魔になり、枷になる。


何より、一人が失敗した時に巻き込まれてしまう。


だからこそ、一人行動を主としての戦闘が代々受け継がれて来ているのだ。


それは迅もそうで、これまでずっと一人で鍛錬をして来た。


それ故に友人と言うものも居ない。


そんな中で、昔から真那が近くに居たのだ。


烏丸と凩はライバルであり、陰と陽。


とは言え、元を正せば同じ血筋でもある。


それがやがて当主問題、後継ぎ問題が起こり、枝分かれしたのだ。



「考えてみます」



迅も導士達が集まる場所へと戻り、次の導士が冬牙へと向かって行った。



そして数組が終わると、次は紫苑達。



「冬牙さん、チームで挑んでも大丈夫ですか?」



紫苑は冬牙に確認を取ると、「一人で十人でも変わらん」と答えた。


そして、冬牙の前に並んだのは紫苑、桜華、真那、猫磨の四人だ。



「どっからでもいいぞ」



冬牙が開始の合図とも取れる言葉を投げ掛けると、一番に桜華と真那が飛び出した。



「「はっ!」」



正面からは桜華の鋭い突き、後方から真那が勁手裏剣を飛ばし、弧を描くように左右から襲う。



「ほお、最初にしては上出来だな」



しかし、冬牙はあえて前に踏み出し、手裏剣を躱して桜華の突きを受け止めた。



「掛かりましたね」



「あぁ?」



瞬勁突しゅんけいづき!」



桜華は受け止めると確信していたのか、キンっと突きが止められた瞬間に強く踏み出し、八勁の如くゼロ距離で勁を放った。



「チッ」



流石にマズいと思ったのか、冬牙は力を後方へと流して対応する。


ザザっと後退すると今度は猫磨が勁力を流した鉤爪で桜華を飛び越え、振り下ろした。


ギン!



「良いコンビネーションじゃねぇか」



刀を上に振り抜いて鉤爪ごと猫磨を押し戻す。


しかし、いつの間に真那の二投目の手裏剣が冬牙に迫っていた。



「相手に攻撃の隙を与えないか。 まあ俺じゃなかったらOUTだっただろうな」



冬牙が勢いよく跳躍して、先ずはと桜華へ刀を振り下ろす。


しかし、その攻撃が当たる前に違和感を感じた。



「そういやぁ……ってそういう事かよっ!!」



ヒュンっと突然勁矢が飛んで来て冬牙を襲った。



キン、キンっと矢を防ぎながらも桜華への攻撃は中断してその対応へと切り替える。


しかし、矢が止むと透かさず先程の様に桜華が突きを放ち、真那と猫磨が今度は二人が狩りで忍者刀、鉤爪を振るった。



「面倒臭えな……お前等! 躱すか防げよ?」



「「「っ――!?」」」



すると、冬牙の周囲が凍てつき、シュっと鋭い氷の刃が形成された。



「わっ!?」



「くっ!?」



桜華はどうにか突剣でそれを防いだが、真那と猫磨は氷りの衝撃で後方へと吹き飛ばされてしまった。



「湯楽!」



「だ、大丈夫です!」



真那と猫磨が声を掛け合い、お互いの無事を確認する。


そして、再度武器を構えて連携を取る。



「チロ、業炎!」



真那の言葉でポンっと肩に火のエレメントが現れ、辺りの氷に向かって火を放つと急激に溶け始めた。



「タケヒコ!」



「キュル!」



次に紫苑が風のエレメントを出現させると、「桜華ちゃん!」っと叫ぶ。



氷霧こおりぎり!」



桜華のエレメントによって冬牙の周囲に微細な氷の結晶が生み出される。



「タケヒコ! 剛風ごうふう!」



フゥ~っと桜華が生み出した氷に向けてまるで竜巻の如く力強い風を巻き起こすと、それらが融合して吹雪の竜巻が発生した。



「チッ、流石にこれは面倒だな」



冬牙のエレメントは桜華と同じく氷。


当然、エレメントの質も全てが桜華以上だ。


だからこそ、桜華達はエレメントも含めた連携で冬牙を追い詰めていく。



「今よ! 湯楽!」



猫磨は水のエレメント。


鉤爪から水の刃を発生させて吹雪く竜巻の下部へと何度も撃ち放っていった。


やがて風が収まると、中では吹雪きによって猫磨の水刃が急激に凍結し、冬牙の足を固めていた。



「はっはっは! 良いチームじゃねぇか! そういう後輩が出来るのは嬉しいぜ? じゃあ褒美に俺の技を一つ見せてやろう。

まあ、の話しだけどな」



「「「えっ――!?」」」



冬牙の足は氷り漬けになっていてその場から動く事は容易ではない。


そのはずだった。


しかし、天導士と天導師であれば実力派かなりの差がある。


故に、道士と天導師ではそれ以上なのは必至だ。



氷閃ひょうせん銀世廻ぎんせかい!」



紫苑、桜華、真那、猫磨は冬牙を囲うような位置に立っている。


また、紫苑は弓を扱う為に三人に比べれば距離がある。


だが、冬牙にそれは関係なかった。



パリン!



冬牙の足元の氷が砕ける音が響くと、気付けば冬牙の姿はそこにはなかった。


そして、ヒューっと突然頬に氷を当てられたかのような感覚になると、桜華、真那、猫磨の身体が氷り付いていた。



「「「なっ!?」」」



そして――



「そこっ!」



紫苑はどうにか冬牙の姿を捉えられているらしく、迫るその姿に向けて勁矢を射る。



「見えんのか、俺もまだまだ足りねぇな……」



「タケヒコ、防風!」



「キュル!」



タケヒコが再び風を起こし、紫苑を囲う様に竜巻が発生する。


しかし、気付けばその風事紫苑は氷漬けになってしまっていた。



「あれ!?」



「見えてたのは褒めてやるけどな。 その場に居たら関係なく氷らせられるぞ?」



遂に四人が氷漬けとなってしまい、訓練が終わりを迎えたのだった。



「うわぁ~びちゃびちゃですね……」



猫磨がチロに頼み、火を起こして氷を溶かしたのだが、当然身体や服もびしょびしょになってしまっていた。



「おお……」



「おい、あれはあれで……ありだよ、な……」



すると、男子導士達が顔を赤らめて四人を見ていた。



「お前等シャワー浴びて服乾かせよ? 下着が透けてんぞ」



「「「きゃー!?」」」



桜華、真那、猫磨はその事に気が付き、胸元を隠しながら屈みこんだ。


しかし、紫苑は平然としていた。



「し、紫苑!? 下着透けてるんだからもう少し恥ずかしがりなさい!」



「あっ、私そういうの疎くて……触られない限りは気にならないと言いますか……」



「山奥育ちがここで発揮されるとは……」



真那も桜華も、下着位でっと平然としている紫苑に対してはもはや呆れて何も言えなくなってしまった。


講義を終えると訓練場に設置されているシャワー室へと向かい、それぞれ汗を流す。


その間、タケヒコの風とチロの火で服を乾かしている。


何とも便利なエレメントだ。




「それにしてもぶっつけ本番であそこまで出来たのは良かったわね」



桜華がシャワーを浴びながら、四人でのコンビネーションを振り返っていた。



「何となくですけど、皆の思考が伝わったと言いますか、ね?」



紫苑も感覚でだが、皆の動きを読み、その上で立ち回っていた。



「もっと鍛えれば無敵かもしれない……」



「そうです! 私達は無敵ですよ!」



真那も猫磨もまんざらではなさそうに喜んでいた。



「あっ……」



突然、真那がそんな声を上げる。



「真那、どうしたのですか?」



猫磨が真那を見ると、その視線はシャワーを浴びている桜華と紫苑。



「あっ……」



「湯楽、伝わった?」



「うん、しっかりと……」



そして、二人の目がキラーンと光った様な幻覚が見え、紫苑と桜華は感覚的にそれを読み取った。



「なっ……今のは……ってどうしたの二人とも?」



「あれ、もう終わったんですか? って何か穏やかじゃない気がしますけど……」



「二人とも、ずるい」



「はい、ずるいです」



「「えっ?」」



紫苑と桜華が向き合い、二人の言ってる事に疑問を浮かべた。


すると――



「これは何? 何で? ずるい」



「そうですよ。 不公平です!」



ガシっと真那が桜華の、猫磨が紫苑の胸を鷲掴みにして不満を爆発させていた。



そして、モニュモニュっと大きさ、柔らかさなどをしっかりと調べ上げていく。



「ち、ちょっと真那!? や、ずるいって何よ!?」



「わわわっ、猫磨ちゃんまで!? そんな揉まないで下さいよぉ!」



「これは報復です。 どうしたらこんなに成長するんですか?」



「わ、わからないです~」



「桜華は? 何したの?」



「な、何ってなにもしてないわよ!」



「何もしてないのにこれ?」



「押し問答じゃないのっ!」



数分間、恨み辛みを聞かされた二人はようやく解放され、物凄く疲れた表情を浮かべていた。



「そういえば紫苑、貴女前より大きくなったんじゃない?」



桜華は紫苑の胸を見ると、自分の胸と比べてみた。



「そういえば最近ちょっと下着がキツいです。 あっ……桜華ちゃ~ん」



桜華に聞かれた質問に答えていただけなのだが、内容が真那と猫磨の禁忌に触れてしまったのだった。



こうして実のある一日が終わり、それぞれが岐路に立った。


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天導の巫女 @R-tani

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