第12話
氷に乗って湖面をたゆたっていたナタは、爆炎を目撃した歩兵のトラックに拾われて物資の集積地へと連れ帰られた。
木々の間に白い布やネットが張り巡らされ、大量のドラム缶や弾薬箱が最前線へ振り分けられるために隠されていた。
後で聞き取りに来ると言われ、1人立ち尽くしていた。
しばらくはボンヤリと歩き回っていたが、ふと笑いがこみ上げてきた。
「君は、本当にバカだ。君がシューラの方を見たから勘づいたんだ、うふふ、これで2人殺したのか、ふふふ……」
テントを離れて歩いているうちに、ぼろぼろと涙が溢れた。そのまま、雪の上に座り込んだ。
ふと、上空から聞き覚えのあるエンジン音が聞こえてきた。
あの黒い機影が、まっすぐこちらに降りてくるのが見えた。
ここには滑走路も無いのに。
「敵襲!」
背後で誰かの声がした。ナタはそこで、やっと気づいた。
広大な雪原で“エサ”までの水先案内を見つけ、横取りを危惧して“虎”を足止めした。そしてトラックに乗り換えた案内人は、ついに辿り着いた。
《完》
氷の轍 @Olbricht
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