虫の収束 最終話




 閑静な住宅街を抜けた先に、赤レンガ造りの家があったので、少年は足を止めた。



 彼は、その家をまじまじと見つめていた。


 虫は、なぜだか、来るべき場所に来たとでも言うかのような表情を浮かべていた 。




 少年と少女は、虫の表情を読み取る事ができるようになっていた。



「着きました」

 と少年が言う。



「本当に、ありがとうございます」

 少女が言った。


「これで、虫ともお別れですね」


「まだ、その友達が虫を引き取ってくれると決まった訳ではありませんから」



 少女は、そう言われて「うん」とうなずく。


 少年は、赤レンガの家の、チャイムを鳴らした。しばらくして、家の中から白いワンピースを着た少女が現れた。



「久しぶり」


 家の中から出てきた女の子は、少年をみて少し驚いたような表情をした。



「実は、今日は君に頼みごとがあって来たんだ。見てもらえれば分かると思うけど、この子、虫を飼っているんだけど、どうやら手に負えないらしくて」





 少年が、そこまで言ったときに、白いワンピースの女の子の表情はパッと明るくなって、すぐに虫の方へ駆け寄った。





「うわぁー。綺麗!」



 その子は楽しそうだった。




「頼みごとって、これのこと? 本当に引き取っていいの?」



 白いワンピースの女の子は、やや興奮しているようだった。




「初対面で、申し訳ないのですが、もしよろしければ、引き取っていただけると嬉しいです」




 と、少女は言う。




 白いワンピースの女の子は、少女から虫を受けとると、いつまでも、いつまでも、嬉しそうな表情を浮かべていた。





 (完全完結)

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快楽の虫 あきたけ @Akitake

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