お届けに参りました。

虫を連れて出掛けます。




 次の日、少年と少女は、例の虫を連れて、散歩に出掛けた。



 暖かい春の日の出来事だった。



 二人が連れていた虫は、剥き出しになっていたので、町行く人の視線がだいぶ気になったが、あまり関係なかった。



 少女は、この虫を自分一人で飼い続ける事はできないと言った。



 それならば、飼うことのできる里親を見つけなくてはならない。



 少年の知り合いに、一人虫の好きな女の子がいた。彼女は物好きな人だった。




 幸い、少年はその人の連絡先を知っていた。そうして今から、その女の子の家に向かうのである。



「わざわざ、ありがとうございます。私のために」



「いや、良いんですよ。僕もちょうど暇をもて余していたところでしたし」



 と少年は言う。



 二人はしばらく歩いた。

 人通りが多い道を歩いていると、たまに犬の散歩をしていたお婆さんが、驚愕の表情をしながら、こちらを見た。



 犬は、すぐに、二人が連れていた虫に気がついて、尻尾を振りながら近づいた後、


「ワンっ!」


 と吠えると、虫は


「キキーッ!」


 と威嚇の声を張り上げるのである。


 そうしたら少年は、お婆さんに向かって、



「すみません」


 と謝るのだが、お婆さんは、仰天しながら、走ってどこかへ逃げてしまうのだ‼️


「ねえ、もしかして私たち、すごいイビツな事をしていませんか?」


 少女の問いかけに、



「たぶん、ものすごい異端児なんでしょう。こんな変な虫を白昼堂々と散歩に連れていくなんて、むしろ反社会的行為かもしれませんね」


 と少年は答えるのだった。



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