お届けに参りました。
虫を連れて出掛けます。
次の日、少年と少女は、例の虫を連れて、散歩に出掛けた。
暖かい春の日の出来事だった。
二人が連れていた虫は、剥き出しになっていたので、町行く人の視線がだいぶ気になったが、あまり関係なかった。
少女は、この虫を自分一人で飼い続ける事はできないと言った。
それならば、飼うことのできる里親を見つけなくてはならない。
少年の知り合いに、一人虫の好きな女の子がいた。彼女は物好きな人だった。
幸い、少年はその人の連絡先を知っていた。そうして今から、その女の子の家に向かうのである。
「わざわざ、ありがとうございます。私のために」
「いや、良いんですよ。僕もちょうど暇をもて余していたところでしたし」
と少年は言う。
二人はしばらく歩いた。
人通りが多い道を歩いていると、たまに犬の散歩をしていたお婆さんが、驚愕の表情をしながら、こちらを見た。
犬は、すぐに、二人が連れていた虫に気がついて、尻尾を振りながら近づいた後、
「ワンっ!」
と吠えると、虫は
「キキーッ!」
と威嚇の声を張り上げるのである。
そうしたら少年は、お婆さんに向かって、
「すみません」
と謝るのだが、お婆さんは、仰天しながら、走ってどこかへ逃げてしまうのだ‼️
「ねえ、もしかして私たち、すごいイビツな事をしていませんか?」
少女の問いかけに、
「たぶん、ものすごい異端児なんでしょう。こんな変な虫を白昼堂々と散歩に連れていくなんて、むしろ反社会的行為かもしれませんね」
と少年は答えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます